[G] Propater (Προπατηρ,
propateer, ho),Propator (Προπατωρ,
Propatoor, ho)
原父、先在の父。多くのグノーシス主義神学において、世界の始まる原初
にいたとされ、また、人間の霊の本来的故郷とされるプレーローマの創造流出
の源泉となった超神的存在。「知られざる父」「知られざる至高者・神」「上
なる神」、また「ビュトス(深淵), Bythos 」等と呼ばれる。プロパテール=
プロパトールについては、人間も含め、上天の高次アイオーンたちにとっても、
「認識・理解」を越えていると云う点で、多くのグノーシス主義諸派の見解は
一致している。
中期ヘレニク・グノーシス主義では、定型的「否定辞」を重ねてプロパテー
ルを表現したのであり、グノーシス主義の否定神学的アスペクトがここに存在
する。しかし、プロパテールが「完全な者」で、「善・光明」の超霊・至高神
であることは肯定されている。プレーローマの主であり、第一のアイオーンで、
伴侶シーゲー(静寂・沈黙)と共に両性具有を構成し、「宇宙=この世」と対
立する根元原理。
シリア=エジプト型グノーシス主義に見られる宇宙創生神話では、第三十
アイオーンであるソピアーが、その伴侶テレートスの同意なくして、「至高の
父」に「情欲的憧れ」と共に「知識慾」を持って、知られざる父の本質を知ろ
うとしたことが、アイオーン・ソピアーの落下をもたらした。また、それがプ
レーローマ世界に「混沌」の萌芽を生みだし、ここより、中間世界、低次地上
世界=この世が創造される原因となったとされる。
|