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マルキオーン,マルキオン
[G] Markion


[G] MarkionΜαρκιων, Maarkioon, ho), [L] Marcion
[D] Marcion, der (マルツィオン), [E] Marcion

  人名。 [100?−?160]。生没年不詳。アナトリア半島東北域のポントゥス 州の港湾都市シノペに生まれ、二世紀頃、独自の教えを説いて、原始キリスト 教会と対立する。原始キリスト教会に先立って、『パウロス書翰集』と『ルカ 福音書』をカノン(正典)と定めて、マルキオーン派教団を設立する。その神 学は、『旧約聖書』の神ヤハウェを、この世の創造者と認め、「悪の宇宙」の 支配者と見なす。キリスト教会と異なり、イエズスを、天主ヤハウェの「子な る神=独り子」(或いは三一の神の一位格)と認めず、異界より訪れた「救済 の主」であり、この世とは無関係な異邦の神であるとする。イエズスは、まこ とに、根拠なく人類を悪の宇宙より救済してくださる主であると、マルキオー ン神学では主張する。

  原始キリスト教団は、マルキオーン神学に驚愕し、対抗のため、キリスト 教のカノン制定を開始する。マルキオーン神学では、此の世を創造したのは 「神」であるに対し、イエズス・クリストスの救済は、その「父」によっても たらされるとして、「神」と「父」の二元の神論を説いた。この点において、 マルキオーンは、もっとも鮮明な「反宇宙的二元論」の主張者であるが、マル キオーンの神学には、他のグノーシス主義諸派に典型的に見られるシュンクレ ティズムや、世界創造神話がなく、またマルキオーンは、「智慧(グノーシス)」 ではなく、「信仰(ピスティス)」を教えの核心とした。それゆえ、マルキ オーン神学は、グノーシス主義ではないと云う見解もある。




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