附 録
高昌国人骨の計測   清野謙次・金高勘次



管理人所見
京女の歴史(京都高等女学校)、「古谷三代吉建築図面」より端を発し、
続・京女の歴史(大谷光瑞の業績)、「古谷三代吉の曾孫のH・F氏」が奇しくも、
シルクロードにおける大谷光瑞の業績、と言う論文を大学の卒論に書いています。
一部は割愛しましたが、大部分を掲載することが出来ました。そして完結編として清野謙次氏の論文、
中央亜細亜発掘のミイラに就いて・関東廟博物館蔵・を掲載する運びとなりました。
長編になりましたが、今回が最終章です。  2004・5・19

 上記本文に於いて清野は素人諸氏に分かり易く高昌国人骨に就いて述べた。
これは勿論これ等人骨の計測を基本としたのである。玄に専門家のために計測結果を簡単に記述する事とした。
 清野が本文中に於いて述べた通り、関東廟博物館のミイラは10体あるが、一体は小児であるので9体を計測した。但しミイラの原形を保存する必要上、及び着衣を破損させないために全身の全部にわたって計測する事は出来なかった。朝鮮博物館収蔵ミイラはただ2体だけ頭部を計測したのに過ぎなかった。
 これ等合計11体の高昌国ミイラの計測は巻末に附する表の示す通りである。その中で主要なる数字に附して述べると次の如くである。
「注」附 録及び計測表はミリメートル表示とします。・・管理人
 平均身長は男性1606.6(5体)女性1531.0(2体)であって、人種として現在支那人と大差なく、中等大のものの低い部に属する。
 胸骨上縁高は男性1308.6(5)女性1227.0(2)である。臍高は男性1018(2)恥骨連合上縁高は男性811.4(4)女性425.5(2)である。又肩峯間距離は男性316.5(5)女性304.3(3)で、女性は男性よりも狭いけれども、腸骨前上棘間距離は男性217.6(5)女性234.3(3)で女性が男性よりも広い。
 頭地平周經は男性583.3(6)女性529.0(5)であり、頭最大長は男性184.5(6)女性180.6(5)で、頭最長幅は男性145.5(6)女性140.0(5)である。顔幅(顴骨弓幅)は男性143.5(6)女性132.4(5)で、男性の方が広い。然し全頭高男性228.2(6)女性224.5(4)に於いては両性大差が無い。但しこれは或る例では口を開き、他の例では口を閉鎖しているものがあるから、計測に際して多少の誤差を生じたのを免れない。この他形態的顔高男性132.6(5)女性119.3(4)及び骨相学的顔高男性200.2(5)女性179.8(4)も同様である。然し骨相学的上顔高男性151.2(5)女性138.2(5)、及び形態的顔高男性79.8(6)女性77.8(5)は正確なる数字であるが、矢張り男性は女性よりも骨相学的顔高に於いてかなり高い。
 頭長幅示数は平均男性78.9(6)女性78.5(6)男女両性78.7(11)で中頭である。座高(幹躯長)は男性79.44女性78.50男女両性49.5(7)である。この関係は世界諸人種の生体に於いて行った結果に比して小なる部である。
relafive Lange der vorderen Rumpfwand 男性31.0(5)女性31.4(2)男女両性31.1(7)であって、之は世界諸人種の生体計測の結果に比して中間に位する。肩幅は男性316.6(6)女性304.3(3)で之を身長との百分比で現すと男性19.3(5)女性20.3(2)男女両性19.9(7)であって身長に比して肩幅は比較的狭い。
 骨盤最大幅は当然性差がある。このミイラでは男性246.2(5)女性263.0(3)男女両性223.9(8)であって、身長に対するこの比は男性13.5(5)女性14.6(2)男女両性13.8(7)である。従って比較的肩幅の狭いほうである。骨盤幅は平均男性246.2(5)女性263.0(3)男女両性252.5(8)であって、身長に対する関係は男性15.4(5)女性16.1(2)男女両性15.6(7)である。一般に肩幅の狭いものは骨盤幅も狭いのであるが、このミイラに於いても同様の関係が現れている。四肢は少数例計測しただけである。即ち第一例女性であは前腕長右側650手を除きたるもの585。第九例女性であは前腕長646手を除いて503である。大轉子高は男性911.5。膝関節面高は男性460(3)女性425.5(2)である。
 一般にこの高昌国人ミイラの顔は楕円形で顴骨が概して高く、眉間隆起は眉上弓と共に発育弱く、鼻前面縫合部の陥没が弱くて支那式である。毛髪は Iissotrich であり、変色していて褐色となったものが多い。咬合は鋏状のものと鉗子状のものとがある。歯牙の色は白色で、その大さは中等であり、歯石を有するものがある。一例に齲歯(むしば)を見たが、他の例では唇頬に妨げられて奥のほうが充分見えなかった。女性は朝鮮の二例を除き、他の三例は肌に絹布を着けているが、男性は麻布を着けている。
(計測表を掲載します。読みにくい所が在ると思います、問い合わせて頂ければお答えします。)




今回にて、清野謙次博士の論文・中央亜細亜発掘のミイラに就いて・
は全巻掲載しました。尚計測表の数字が分かりにくい所もあるかと思います、
是非必要であれば質問をしてください。ご意見ご感想も合わせてお待ちしております。
 2004・5・19     管理人。
 
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