今日も俺はインターネットで心を癒している。
 会社が終って、ネットをする。ほんのひと時だが、俺はこの時間が最高に好きだ。
 大好きな二次元、いや、PCゲームのキャラに恋をして、萌えて、サイトを作る。
 そして、ネットを通して同じ属性の人たちと知り合う。そして、彼らと盛り上がる。
 なんて、すばらしいのだろう。

 俺はいわゆるオタク。
 現実の世界がいやなことばっかりだから、こうして現実逃避しているのだ。
 
 会社が終ってネットをしてチャットをする。
 何気ない時間が変わっていく、そんな人に俺は出会うことになろうとは思っても見なかった…。

偶然

「疲れた…。みんなただいま〜」
 俺は誰に言うでもなく真っ暗なアパートに帰ってきた。
 電気をつけてPCを起動させ、壁にかけてある紐緒さんのリトグラフ等グッツに挨拶をする。
 そして、震える体を抑え暖房をつけ、買ってきたおかずを万年床の枕の上におき、
そこらに置きっぱなしのお茶碗に台所に行って飯をよそってきた。
 優美ちゃんのシーツの上に座り、枕が机代わり。
 寂しいから見ていないTVをつけ、ネットにつなぎ、俺は飯をほうばった。
 今日は給料日だから、少しリッチに弁当屋のおかず。
 借金だらけで首が回らず火の車、いや、もうすでに燃えているのだ。…萌えているし(爆)

 ネットにつなげるとまず、メールのチェック、そして、自分のサイトとリーフナビをチェックする。
 そして、知り合いのサイトにあるCGIゲームにログインする。
 メールには、相変わらずプロバイダからのメール。
 掲示板は閑古鳥。
 リーフナビも、更新してあるサイトを一通りチェックして飯を平らげる。
 
「さみぃ…」

 飯を食い終し、布団の中に入る。
 そして、先ほどログインしていたCGIゲームを楽しんでいる。
 そうこうしているうちに、時間はテレホタイム。
 そう、ネットはこれからが本番だ。
 俺の命をかける時間だ。
 いつものようにくそ重たい自分のサイトのチャットに行く。
 誰もいないけど、とりあえず待機。
 そして、知り合いのチャットを数窓開く。
 さらにはビルダーを立ち上げてサイトの更新。
 とはいってもうちは文章系サイトだからそれほど苦でもない。
 チャット等やっていても更新作業、つまりはSS等を書くのは苦ではなくなっていた。
 いつのまにかブラインドタッチ(自己流だが…)も身についていた。

 俺はそんな中、いつもどおり自分のチャットで独り言を繰り返していた。

[待機〜]
[今日も疲れた…]
[お金がない…]

 そして、しばらくして、ゆっきーと名乗る人が入ってきた。

ゆっきー[こんばんは。]
俺[こんばんわ〜。はじめまして]

 俺は初めての人だったので、少し胸が踊った。
 同じ属性なのか。それとも、違うのか。どこからきたのか、すごく気になった。
ゆっきー[はじめまして。私も同じ県に住んでいるゆっきーです]
俺[え…。俺?自己紹介でも見たのかな?]
ゆっきー[はい。少し前からサイトを見ていたのですけど、なかなかチャットとかにでにくくて…]
俺[それはどうもです。えっと、というと、同じ属性なのですか?]
ゆっきー[え?同じ属性って言うと。。。]
俺[あ、属性って言うと、同じオタクなのかなって(笑)]
ゆっきー[オタクかどうかはわからないけど、プレィステーションのToHeartならやったことあります]
俺[あ、そうなんだ。俺はPS版はやったことないや…]
ゆっきー[そうなのですか…]

 まったりぎみながら、チャットは進んでいく。
 俺は、なかなか自分のサイトでチャットが成り立つ事は少ないのでものすごく嬉しかったのだ。

俺[そういえば、同じ県っていっていたですよね?]
ゆっきー[はい。同じ県北ですよ。北のほうって書いてあるし。。。]
俺[あ、そうなのですか。なんか、珍しいなぁ…]
ゆっきー[私の周りでも女性がこういうゲームやるのって珍しいって]
俺[いや、そんなことないでしょう。同人とか女性でやっている人相当多いし…]


 俺は女性という事でなんだか嬉しかった。
 二次元ヲタクとはいっても、そこは男。いろんなことが頭に浮かんだりするものだ。

ゆっきー[私の周りではいないみたいです]
俺[ゆっきーさんは同人とかはやっていないのですか?]
ゆっきー[同人はたまに買うくらいで…]
俺[サークルとかはやっていないのですね]
ゆっきー[やってみたいとは思うけど、私一人じゃ無理そうなので]
俺[そうでもないですよ。俺もたまにサークルで出してるけど、会社でただでコピーしちゃっているから(爆死)]
ゆっきー[笑]
俺[結構便利なんですよ。会社でただコピーで本出せるから。まぁ、製本は大変だけどね]
ゆっきー[それは便利そうですねコンビニだと高いし]
俺[そうなんですよ。結構馬鹿にならないから]
ゆっきー[私のバイトしているコンビニにもたまにいっぱいコピーしている人いて、大変そうだなって]
俺[コンビニでバイトしているんですか?]
ゆっきー[夕方からバイトしてます]
俺[俺もバイトしたいよ…(泣)]
ゆっきー[そんなに泣かなくっても…]
俺[ああ、梓がいてくれたらなぁ…。それか、あの人とか…(誰?)]
ゆっきー[あの人?あずさ?]
俺[ああ、なんでもないです。二次元オタクだから、痕って言うゲームのキャラです<梓]
ゆっきー[理想の嫁さんってなっていた人ですね(苦笑)]
俺[そう…]
ゆっきー[そうそう、生まれた年も一緒みたいですよ?]
俺[まじっすか?もしかしたらあった事あるかもね…]
ゆっきー[もし、そうなら一度あってみたいよね…]
俺[え?まじ?]


 俺はその「会う」という一言に少し驚き、ココロが踊っていた。
 なにを期待しているんだ?俺は二次元ヲタクだぞ?俺は恋をしないって紐緒さんたちに誓ったんだ。
 梓がいる。おれには……。

ゆっき[どうしようかなぁ…]
俺[まぁ、あってみたいっていうのはあるけど…]
ゆっきー[じゃぁ、会ってみようか?私も少しきになるのですよ。私の好きなSSを書いている人がどんな人かって]
俺[ああ、そうですか。じゃぁ、会います?]
ゆっきー[はい。いつにしましょう?]
俺[そうだなぁ…。明日は?ちょうど休みだし。いきなりでアレかもしれないけど…]
ゆっきー[私も明日空いているから大丈夫ですよ。でも、ちょっと、どきどき…]
俺[俺もどきどき……]
ゆっきー[じゃぁ、時間とか場所はどうしましょう?]
俺[ゆっきーさんの空いている時間でいいですよ。車あるから場所指定してくれれば大丈夫だと思います]
ゆっきー[それじゃぁ、午後1時に○○○のスーパーの駐車場でいいですか?]
俺[あ、○○○スーパーですね。そこなら、わかるな。OKでし]
ゆっきー[じゃぁ、そこでまっていますね]
俺[あ、まって。それだけじゃあえないと思いますです。一応はじめて会うので顔とかわかりませんからどんな服装で来るのかとかおしえて欲しいのですけど…]
ゆっきー[あ、そうですね。どうしようかな…]
俺[あ、目印になるようなものなら何でもいいですよ。車の色とか、そういったものでも…]
ゆっきー[黒の系自動車なんですけど…]
俺[それだけじゃきついです…目印になるようにくまでも乗せておいてくれるとか…]
ゆっきー[クマなんか乗せたら私たべられちゃいます]
俺[あかりならじゃれているかも(笑)]
ゆっきー[私はクマとじゃれるんですね(笑)]
俺[なんでもいいので目印になるようなものをお願いします。俺は白いシャツを着ていくんで…]
ゆっきー[それでは、熊のぬいぐるみあるんで、それをもっていますね]
俺[わかりました。では、軽自動車の近くでクマのぬいぐるみをもっているかなんかしていてください]
ゆっきー[それでは、私は寝ます。おやすみなさい…]
チャットマスター[ゆっきーさん、ありがとうございました]
俺[それでは〜]


 俺はオタクにもかかわらず女性に会うという事で、なぜかどきどきしていた。
 チャットを落ちて、ネットを切断して、明日に備える事にした。

 寝付けない夜を紐緒さんの枕と一緒に一夜を過ごし夜が明けた。
 
 
 起きたのは12時。
 どこかで飯を食って、目的地まで行かないといけない。
 俺は目印になる白いシャツをきて、車で久々に隣の市にある目的地に向かった。
 時計は12時40分をさしていた。
 途中で食べた牛丼の味などしないも同然だった。

 俺は周りを見回す。
「黒の軽で、クマのぬいぐるみっと……」
 車の中からでは、まだそのような車はいないようで、寒い車の外に出てみる。
 1月の風が俺の身に冷たくふいている。
「寒みぃ……」
 腕組をして、あたりを見渡す。
「いないみたいかな…」
 そして、早々と車の中に戻りお気にいりのCDを聞いていた。
 まっている時間はすごく長く感じるもので、きょろきょろあたりを見ているのだった。
 車の時計はもうすぐ1時になりそうだ。
「そろそろかな…」
 駐車場の入り口に注意をそらす。
 まだきていないのならこれから来るのだろう。
 俺は期待を抑えて車から出ることにした。
 寒さに震えながら俺は入ってくる車を見ていると、黒い軽自動車が一台入ってきたのがわかった。
「あれかな?」
 俺はとりあえずその車がどこに停まるかをみていた。
 …結構はなれて停まってしまった。
 駐車場もどの辺に停まるかって言うのも指定すればよかったなと少し後悔していた。
 ……黒い軽自動車から降りてきた人を遠巻きにみると、野郎だった…。
 まさか、ネカマなわけはないだろうから、俺は関係ないと認識し、
また駐車場の入り口に目を凝らした。
 少しして、また黒い軽自動車が入ってきた。
「あれか…?!」
 俺はどこか見たことあるような人だなと感じた。
 まさかそんなはずはないなと思うも少し期待してまたその車の行き先を見ていた。
 …駐車場で停まる。
 今度は店のほうに行くわけでもないのだろうか?結構いり口付近に停めた。
 そして、女性が降りてクマのぬいぐるみを手にもって、回りをきょろきょろしている。
 ……彼女だ………。

 俺の心は複雑だった。
 嬉しいやら悲しいやら恥ずかしいやら残念やら、それでいてどこか懐かしく、なんともいい表せる事の出来ない感じだった。
 どうやって出て行けばいいのだろう?
 俺が出て行ってどう反応するのだろう?
 もう、何年会っていないのだろう?
 向こうは俺が出て行ってなんて思うかな?
 HNで呼んだほうがいいかな。それとも……。
 すっぽかすわけに行かないしな…。
 相手も会いたがっているみたいだったし……。
 どうしよう…。
 とりあえず出て行くか……。
 うーん………。

 ゆっきーさんと思われる人はクマのぬいぐるみを持ちながら車の中に入っていった。
 寒いのだろう。
 エンジンをかけ、ダッシュボードにクマのぬいぐるみを見えるようにしていた。
「会いたいのか?この俺に?俺は……」
 ああ、でも、彼女には昔の俺ではなく今はネット上で知り会ったっていう人だし…。
 でも、彼女は知っているし……。

「とりあえず行くか」
 俺は固く決心して、ゆっきーさんのところへ向かった。
 白いシャツ。相手は黒い軽自動車。そしてクマのぬいぐるみ。
 ゆっきーさん以外に、いや彼女以外に他ならない。

 とりあえず車の運転席がわにって窓をたたく。
 こんこん…。
 彼女は気がついたようでこっちを向く。
 そして、驚いていた。
 そりゃそうさ。驚くよな普通……。
 彼女のドアが開き、忘れもしない人が今俺の目の前にいた。
「一応はじめましてのほうがいいかな?ゆっきーさん」
「え、でも、はじめましてじゃないよね…」
「覚えているの?俺の事」
「う、うん……」
「…」
 言葉にならない。
「…」
 彼女も言葉が出ないらしい。
 沈黙の時間が訪れる。
 お互いになんて言葉を出していいかわからないってとこだろう。
「久しぶり…だね?」
「う、うん……」
「偶然って言うかなんていうか……」
「うん…」
「えっと…」
「あ、ごめんなさい。私ったら…」
「昔の面影あるよね。俺の好きだった頃の時に…」
「え…」
「ゆっきーさん、いや、清水雪枝さん、俺はずっと好きだったんだ」
「えっと…」
「ごめんなさい。いきなりで」
「とりあえず聞きたいこととかあるから、その辺でどうかな?」
「あ、はい。いいですよ」


 そして、俺とゆっきーさん、いや、初恋の相手清水雪枝さんとの時間が偶然にも回りだした。
 その後のファミレスで話してみると彼女にはすでに彼氏がいるらしい。
 まだそんなに付き合って長くはないといっていたけど…。
 そして、昔話に話を咲かせ、俺たちは分かれた。


 そう色あせた淡い思いがかすかに色をつけ始め…。
 そして、彼女は俺のことを思ってかこう言い残していった。

「あなたの気持ちは嬉しいけど、あなたにそういう気持ちは私にはないから…」
 そして、さらに、
「またサイトのほうに行きますね」

 そういい残し車を走らせてさっていった。
 ほんのひと時の時間をありがとう。
 そして、この偶然をありがとう……。

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あとがき(珍しいな…)

えっと、ずばり妄想モードです。
それに清水雪枝っていうのは、実在しませんし、ゲームのキャラでもございません。

さらに言うなら、俺=ヤンっす(爆)
ですんで妄想モードです。
すみませんですね。
こんなんでオリジナルなんて…。
まぁ、いいか…。
おいらがもし、こういうシチュエーションならっていうことで書いてみました。

…こういうシチュエーションまじでないですかね…(死)
ないから妄想なのだよ……(号泣)


なんだかわかんないSSおよび後書きでした(爆死)