10年後の君へ
〜紐緒結奈〜
「あ、ほら、また違う…」
「あ、ごめん…」
 隣にいる結奈がそう指示を出す。
「もう、最近どうしちゃったのかしら?あなた変よ?」
「そう、かな?」
「何かに悩んでいるというか…」
 …なんか、心を見透かされているような気がしないでもない。
「そう?」
 きらめき高校をして一流企業に一緒に入社したのだった。
「ちょっと休みましょ?」
「うん」
 なかなか、結奈と二人っきりにはなれずに……。
「コーヒーでも入れるわ」
「あ、俺がやるよ」
「いいわよ。二人っきりだしね」
 いつもは部下たちがいるのだが、今は残業中…。しかも夜中だし。
「あ、うん…」
 そういうと結奈はコーヒーを入れてすぐ戻ってきた……。
「あなた、本当にどうしたの?」
 俺にはいと差し出すと、俺の前に立つなりそういった。
「いや、別になんでもないんだけど…」
「その割には悩んでいるようだけど?」
 まぁ、その、なんだぁ……。実際そーなんだけど。
「同じ職場の上司には相談でも出来ない事?」
 ……。そう。同じ職場の上司だったりするんだ。結奈が。
「……」
「もう、恋人にも話せない悩みなの?」
 いや、それが悩みだったりするんだけど……。
「……」
「もう、だんまりになるのはいつものことね。しっかりしなさいよ」
「うん…」
 と背中を押してくれるいつもの結奈。
 高校の時からあまり変わっていない。
 ……。俺はどうなんだろ?
「あ、そうそう、今度の日曜日、付き合ってくれるわよね?」
「え?」
「予定空けときなさいって言ったでしょ?」
「うん。あいてるよ?」
「じゃぁ、決まりね。ドレスを早速見にいきたいのよ」

 きらめき高校の伝説をしっかりものにした俺は先日、結奈の誕生日の日
改めて結婚しようと、言ったのだった。
 すごく勇気がいったけど、この関係からまた一歩踏み出そうとしての事だった。
 結奈もものすごく喜んでくれた。

「ど、ドレス…」
「ええ。だから、あなたもしっかりしてよね?私が上司だからって、気にすること無いでしょ?
高校の時もずっとそうだったじゃない」
 ……。
「だから、しっかりしなさいよ?私たちは…………」
 …最後の方が小さくてよく聞き取れなかったぞ?
「私たちは、何?」
 …赤くなった。
「あ、ほら。もう…。コーヒー飲んだら、さっきの続きよ。
これが終らないと帰れないんだからね」
 ……また会社にお泊りですか?
「こーいう作業は私よりあなたのほうが昔から得意だったでしょ?ほら、続きよ、続き!」
 そして、俺はPCに向かって単純なデータ入力を開始した。


「頑張ってね。あなた」

 俺の耳元で結奈言った。
 
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