ずっと
 ずっと後ろの席からあなたを眺めてた
 でも、それは今日で終わりにするの

 3年間、見つめていた背中

 やさしくて誰にでも親切にしているあなたの大きな背中

 私にはすごく近くて、でも、ものすごく遠い距離にいるあなた



 ほかのクラスの男子や、伊集院君には少し見劣りするかもしれないけれど
 でも、私にはあなたが一番話しやすい場所にいた


 ただそれだけ

 そして、あなたには藤崎さんがいることも知っている


 今日、勇気を出すことに決めました


 そっと机の中に入れた手紙、見てくれましたか?

 私は3年間ずっとあなたを見ていました

 あなたは時々しか見てくれなかったかもしれないけれど
 私はあなたをずっと見ていました
 そして、私は優しくて、男らしいあなたにひかれていきました

 今日、私は勇気を出します

 ずっと後ろの席であなたを見ていました
 
 あなたは私の視線に気がついていましたか?

 ずっと私はあなたを見続けていたんです

 あなたが藤崎さんのことを見る目が違うのは入学したときからわかっていました
 …女のカンでしょうか?

 でも、あなたはどじばっかり
 体育祭で彼女にいいところを見せたいと張り切っても空回りしていましたよね

 テスト中、藤崎さんと一緒に図書室で勉強していたりしていましたよね

 私はそんなあなたのことを見かけるたびに
 いつの間にか藤崎さんがうらやましい、そんな気持ちになっていきました


 でも、藤崎さんよりちょっとだけ勝っていることがあります
 それは、ずっとあなたを見ていられること
 授業中、それも一日中ずっと

 席が離れている藤崎さんにはこれはできませんよね

 そして、後ろの席であなたを見つめているたびに想いがつのっていきました
 あなたの背中に惚れてしまいました

 ずっと後ろの席で、あなたを見ているうちに…
 今日、卒業式だから…

 きてくれますか…?

 私はここで待っています
 伝説の樹の下で
 
 今日、勇気を出さないと、もうずっとただの後ろの席にいた子になってしまうから
 私はこの先ずっとただの後ろの席の子じゃ嫌だから

 お願い、来てください
 せめて、私の想いだけでも、聞いてください


 どのくらい時間が過ぎたのだろうか?
 何組かのカップルが成立したようで彼女たちは幸せそうに腕を組んだりして帰っていく。
 彼女はそんな成立カップルたちを見ながらため息をついたりして待っていた。

 −彼が来るのを。

 太陽も傾き始め、彼女と伝説の樹の陰を長く伸ばす。
「きてくれないのかな…」
 確かに伝説の樹の下に来てくれと手紙は机の中に入れたはずである。
 なにせ後ろの席なのだから間違うはずも無い。

 やっぱり、彼女には藤崎さんのことがすきというのが忘れられないのだろうか。
 そんなことを頭によぎる。
 ずっと後ろの席にいたし、字を見れば私が出したって、すぐわかるはず。
 −3年間ずっと後ろの席だったんだもん。藤崎さんに負けたくない。

 そんな気持ちで待っていた。
 だが、不安というものは膨らむもので、「もうこないのかもしれない」そう、半分あきらめかけていた。
「やっぱり、私じゃだめかな」
 そう、ぼそっとつぶやいたときだった。
「ごめん。遅くなっちゃった」
 と、聞きなれた声。
 そして、見慣れた姿。
 
 彼女はもう声にならなくなってたまらず涙を流していた。
「ごめん。ほんと、ごめん…」
 彼はただ、謝るばっかりだったが彼女はそれを怒ることなくただないていた。
 
「あ、あの。ずっとあなたを見ていました。
私と付き合ってください」
 なきながら彼女は言う。目に涙をいっぱいためて
 そして、彼にずっと見ていたということ、藤崎さんがうらやましいということ、
 最後に
「私は後ろの席の女の子じゃ嫌だから。これからはずっとあなたの隣にいさせてください」
 

 彼はそれを聞いたあと、こくっとうなずいた。

 3年間一番近い席で生まれた恋の誕生だった。

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2013/1/1
記念すべき2013年元旦かつ約1年ぶり、さらには政治色なしのSSです

かなーり久しぶりなSSなんで、語彙というものが…
あ、はじめからないですね。はい(´・ω・`)

今回のヒロインはずっと後ろの席にいた彼女です。
名前も無い彼女です。


もう、お分かりですよね?

え?わからない?
プロローグで自己紹介とかするとき、主人公の後ろの席にいるじゃないですか
彼女ですよ、彼女

もうおわかりですね。
そうです
後野席子さんと呼ばれているあの彼女です

途中犬神サアカス團がはいりかかっているようなかんじになっているのは気のせいでしょうか?