バレンタインのときめき
 とうとう来たか…。
 毎年のことだが嫌になる。
 相変わらず詩織とは良いお友達以上にはならないし。
 いやむしろ印象悪くなってる様だし…。
 ふぅ。
 最悪。
 俺の名前は。きらめき高校の3年生。
 もう今年で卒業。
 なのに俺は幼馴染で初恋で片思いの藤崎詩織になにも出来ずにいる。
 いや、してはいるが、いつも裏目に出てしまう。
 この間は好雄が良い場所教えるからとか良いながら行ったはいいが最悪だった。
 遊園地のイベントで、有名なアーティストが来たが
 人は多いし、詩織にはどうも受けが悪くて……。
 あ〜あ。
「もう詩織は無理か…」
 一人は教室で考えていた。
 周りでは女子たちがバレンタインのことで騒いでいる。
 はそんな風景をみて、がっくり来ている。
 男子達は喜んでいるものと
 がっかりしているもの、落ちこんでいるもの・・・とに
 どうやら昼休みになるとはっきりしてくる様だった。
 勿論はもらえない組。
 は残りわずかな昼休みを寝てすごすことにしたが、どうもそうはいかなかった。
「ようよう!!!もらったか!!詩織ちゃんから?」
 …うるさいのが来たな。
「なんだ…好雄か…ふぅ……」
「『なんだ…好雄か…』じゃないって!!」
「あ〜。この状態でもらった様に見えるか?」
「……だめ、……だったのか?」
「……」
「あ〜もう。卒業間近だぞ。なにやってるんだ!」
「もう、いい」
「もういいってか?それじゃあなんだったんだ?いままでの苦労は?」
「すまん…」
「あ〜あ…」
「いいものはいい…帰ってまた伊集院のところにイタ電でもしよう…」
「おい!!それが原因なんじゃないのか?」
「あ…伊集院に電話か?だって、かまってると面白いから」
「もう、なんだよ。それは…あんなイヤミナ奴に電話なんて
お前って結構変わってるな」
「今ごろきがついたか?」
「く…」

 そう、俺は入学してからずっと伊集院に電話をしていた。
 理由は、面白いから!
 いろいろいやみを言ってくるが途中でそれを切るのが良い。
 そして、伊集院の悔しそうな顔を思うだけで最高になってくる。

 もう、最高だ。
 必ず休みになると電話をしている。
 勿論卒業間近のいまでもやっている。
 卒業しちゃうとそれもできなくなると思うと少し寂しい。

 などは考える。自分でもでもつくずく暗い奴とか思っているがどうせここまできちゃ詩織に
告白なんてされないし、告白するなんて出来ないから去年の終秋頃から
伊集院にいた電に専念していたのだった。

「おい、どこへいくんだ?」
「トイレ」
 は重たい腰をあげ、一人トイレへ行く
 一人残された好雄は、「暗いな」そう思い、今までの事を思い出していた。
 の為にいろいろしてきたな。
 しかしそれも無駄に終わるのかと思うと好雄は泣けてきた…。
 忘れていたが好雄ももらえない組。
 妹の優美には
「どうせお兄ちゃんはいつももらえないから。」
 とかいっていつも安物のチョコをくれる。
 それが今まで生きてきて唯一、もらえるチョコだった。
「しょうがないな」
 とつぶやく好雄。
 伝説なんて無意味なもになるのだった。
「まったく」 
 と一人歩く
 のたのた廊下をあるいていると、
「やあ、庶民A、毎年のことだがまいったものだよ」
 とバレンタイン恒例の嫌な奴が現れた。
「なんだよ、伊集院。」
「今年は卒業とあってかいつにも増して多すぎるようだ」
「相変わらず」
「なにか言ったかね?」
「いや別に」
「ま、そういうことで処分に困っているんだ。
遠慮しないで好きなだけ持って行ってくれないか?
なに、遠慮は入らんよ。ぼくも困っているからね。捨てるのももったいないから」
「いらねーよ!!!そんなもの!」
 俺はありったけの声を出して怒鳴った。
 伊集院はなにやら驚いていて目を丸くしている。
 俺はすたすたとそこから去ろうとしたが、伊集院は追っかけてくる。
「待ち給え。君」
 と、はじめて伊集院が俺の名前で呼んだ。
 それに反応した俺は立ち止まる。と、伊集院は追ってきて
「そう言わずに一つだけでももっていかないか?
遠慮なんかしなくていいから。貰ってくれたまえ」
 と一言。
 俺はなにかと思ったが、それを聞いて怒りが込み上げてきた。
 ギロッとにらみつけ、
「もう、その話はするなよ!!」
 とまた大声をだし、トイレへ向かった。

 用をたして出てくると…


君、このチョコもらってくれないか?
どうしても貰って欲しいんだ…」
「なんで男の伊集院がくれるんだ?」
「いや。なぜそんなことを聞くのかね?」
「答えろって、普通無いだろう」
「いや…それはだね…」
「なんだよ?」
「そうさ、これは他の女子に頼まれたんだ。君に渡す様にってね。」
「だれから?」
「それは言わないでくれって…」
「名前もわからないのに貰えるかよ…」
「なかに手紙が入ってるらしいんだ」
「そう言う事なら……」
 とは不思議そうにしぶしぶ受け取った。

 伊集院はなにやら不思議に安堵の表情を浮かべている様だ。

 は伊集院の腕に有る包帯に気がついた。
「おい、どうしたんだ?包帯なんかして」
「こ、これか?これは少々ぶつけてしまってね。
ま、たいしたことはないさ」
「そうか」
「じゃ、僕は失礼するよ。もう、授業が始まってしまうからね」
「はいはい、って、同じ教室だろうが」
「なにかいったかね?」
「いいや。なんでもね―よ」
 2人はなにもしゃべらず教室へ向かう。
 しかし、は誰からだろうかなんて、さっきのチョコを考えると
正直伊集院から貰ったことなんかどうでも良く思えてきた。
きっと、この俺に興味を持ってくれている女子生徒がいると思うと考えるだけで楽しくなってくる。
きっと、かわいい、内気な女の子なんだろうと、は思った。

ちょうど教室につくと同じに始業のチャイムが鳴る。
 で、先生が入ってくるがにはそんなのはもう、耳には入っていなかった。
 思っているのことはただひとつ。
「早く明けたい!」
 そして、その手紙とやらを見るぞ。
 これしかなかった。
 いつしか授業も終わり放課後
 速攻は帰宅した。
************
 は速攻で家に帰ると一目散に部屋に行き
着替えもしないでカバンに入っている例のチョコをあけることにした。
 きっと名前とクラスが書いてあって、「好きです」なんて書いてあるのだろうな
そう思い空けてみる。


 なかには1通の手紙とアルミホイルに包まれたチョコらしいものが出てくる。
 はその手紙を開いた。
『貰ってくれてありがとう。うれしいです』
 としかなかった。
 名前も何も書いてない。



 がっかりしたはチョコを食べようと空けると
手作りと思えるチョコが出てきた。
 …!!うまい。
 はほおばりながら
 伊集院が女だったらな。
 そう思っていた。


「伊集院にイタ電でもするか」
 いつもの様に電話をする。
 目を瞑っても伊集院には電話が出来るほどだった。
プルルルルルル・・・
プルルルルルルルルルルル・・・
ガチャ
「はい。伊集院だが」
「もしもし。だけど…」
「なんだ、また君か。いつもいつも暇なようだね」
「…」
「今日は何の話が聞きたいのかね?」
「そうだな、今日はチョコの話だ」
「えっと、それは…」
 慌ててる様だ。
「どうした?伊集院?」
「い、いや何でも無いんだ。チョコか
じゃ、今日貰ったチョコの話しを」
「そうじゃない。伊集院が俺にくれたチョコについてだが……」
「おっと・・・。すまない。とっくに10秒以上話してるようだね」
「おいおい・・・。その前に名前を教えて欲しいんだよ」
「名前かね?伊集院レイだが?君は僕の名前も忘れてしまったんかね?」
「おい!そんな馬鹿なやついるかよ…」
「それは失礼した。チョコをくれた人の名前だったね」
「そうだよ」
「それは」
「それは?」
「おっと…すまないね。もう、タイムオーバーだ。
僕も忙しいんでね、じゃ。また学校で!!
は〜っはははははははははははは」
がちゃ!!
一方的に切られた。

………
 次の日
 いつもより元気な伊集院に出会った。
「やあ、君!!おはよう。チョコはどうだったかね?」
「あ?チョコか。おう、食べたぞ。すっごくうまかった。
でも手紙に名前なんか書いてなかったぞ」
「おや?僕は名前が書いてあるなんていったかい?
ま、おいしく食べてくれたのなら、この僕もうれしいってもんだ」
「なんで伊集院、おまえが喜ぶんだ?」
「まあ、いいではないか。
小さいことを気にするのは庶民の悪いくせだな。は〜っはははははははは!!」
「まったく……」
「なにかい言ったかね?」
「べつに!!」
「ま、チョコがおいしかったのであれば良いではないか。
君に上げたチョコがだれからなのかきっとすぐわかるようになるだろう!!
は〜っははははははははははは!
では失礼するよ。君も遅れないようにしたまえ」

 と伊集院は教室に向かって行った。
「おい!どういうことだよ!」
 と、教室へ行くが伊集院は何も言わなかった。
「すぐにわかるさ」
の一点張り。

 
*******
 はその意味を卒業式に知ることとなった……。
END
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