気がつかない話 その2
校長の話が長すぎるんだよなー。
卒業式も終わり。
3年間あっという間だったようなきがするな。
好雄は「それじゃぁな。俺たちはいつまでも親友だぜ」なんていって、ちょっと照れくさそうに出て行った。
…そういえば少し前「未緒と付き合うことになったんだ」なんて俺に言ってきたっけ。
ちゃっかりしてるよ。
今頃伝説の樹の下か。
そういう俺はどうなんだろう。
入学式の日その好雄から「伝説があるんだぜ」なんて聞いてから、…いや。
入学する前から詩織が好きだったんだ。
今までそのためにがんばってきたつもりだ。
詩織を探そう。
たとえ詩織から嫌われていたとしても。
俺の気持ちは変わらないのだから。
そう最後の最後に決心をする。
忘れ物は…。
ん。なんか、机に入ってる。
手紙だ。『伝説の樹の下で待っています』
だれからだろう。名前は書いていない。
誰かが俺に告白しようということか。
思い出してみる。
虹野さん、紐緒さん、清川さん、片桐さん、優美ちゃん、美樹原さん…。思えば女の子友達って結構多かったんだなと実感する。思えば詩織以外ともあちこち行っていたっけ。
少し後悔する。なんで、他の女子とも仲良くしちゃってたんだろう。なんで、もっと詩織と一緒にいなかったんだろう。
「そう思ってももう遅いんだな」
この手紙が誰か知らないけど、ごめん。俺はやっぱり詩織を忘れられないんだ。
そして、俺は詩織を探しに出た。
早くしないと。詩織が帰ってしまう前に。
この気持ちを伝えないと。
どこだろう。
クラブかな。
詩織はバスケ部だから、もしかしたら体育館で。
とおもって体育館にきてみたけど、部活などやっておらず卒業式の後片付けをしていた。
ここじゃぁないか。
みたことあるポニーテールの髪が見えた。優美ちゃんか。
ということは手紙の主は優美ちゃんじゃないってことか。
じゃぁ、生徒会室?
あそこは関係者以外立ち入り禁止っていう感じで部外者の俺はちょっと入りにくい。まぁ、でも廊下からでも中に誰かいるか位はわかるだろう。
生徒会室には中に生徒のいる気配はなかった。
ここにもいないか。
その途中で虹野さんに出会った。
なんでも、卒業最後ということで一応クラブにだけ顔をだしていくんだそうだ。
虹野さんでもないということか。
どこだろう。
教室にはいなかったし。もう帰っちゃったのかな。
!下駄箱。そうだ。靴があるかどうか見れば詩織が帰ったかどうかすぐわかる。
下駄箱にきて詩織のところを見てみると…。
「!?」
ない。詩織の靴がない!
ということは、帰っちゃったんだ。
詩織…。
俺の3年間はなんだったんだ…。
「どうしたんだ、そんなところでがっくりうなだれて!」
その聞きなれた声は。
「Hi! もしかして卒業できなかった?
清川さんと、片桐さん。
「そんなわけないじゃん。卒業できましたよ」
「そうよねー。望でも卒業できたんだもんねー」
「おい、望でも、とはなんだよ、でも、とは。いくら親友だからって言っていいことと悪いことがあるだろ」
「Oh sorry. そんなに悪く思わないでねー。親しいからいえることだってあるのよー」
そんなやり取りをよそに、
「ごめん。急いでるんだ」
でも、何を急ぐんだ。
そういって、その場を後にした。
でも、詩織は帰っちゃったんだ。
さて、どうしようか。
時間はどんどん過ぎていく。
「あら、卒業の日まで何かのくだらない相談でもしに来たのかしら?」
…そんなことを考えていたら科学部の部室前に来ていたようだ。
そういえば、よく紐緒さんに色々相談してたっけ…。
んで、いろんな実験に付き合わされてたよな。
「いや、そういうわけじゃ…」
「そう。最後の最後にくだらないこと言われても私も困るから助かるわ」
「そ、そう…」
「でも、あなたのその様子じゃこの世の終わりって顔してるわね」
「そ、そう…かも…」
それはそうだ。詩織は帰ってしまったみたいだし、俺の決心ーいやあえて野望とでもいおうかーは崩れ去ってしまったのだから。
「記念にどう?」
「え?」
「だから、卒業記念に人体改造よ」
相変わらず怖いことをいう。
でも、もう、それでもいいのかもしれない。
「超能力とか使えたらすごいでしょ。そんな体、あなたもほしくない?そして、私のために…。ふふふふふ…」
「い、いや、遠慮しておきます」
やっぱり遠慮しておこう。
「遠慮しなくていいのよ、今なら卒業大サービスで無料よ」
「…今までは有料だったんだ」
「当然でしょ。研究にはお金がかかるんだから」
「やっぱり遠慮しておくよ」
「そう?それは残念ね」
そういうと。かばんを持って。
「それじゃ、私は帰るわよ。ほら、あなたも帰る!」
「俺は…」
と、ポツリというと紐緒さんは振り返って。
「俺は?」
紐緒さんに言ってもいいものだろうか?
「ほら、そのあと気になるじゃない。さっさと言いなさいよ」
もう、じれったいんだから、とでもいう感じだ。
「俺は、詩織が好きなんだ。だから、詩織を探さないと…。今日この日に…」
あー、言っちゃった。でも、なんだか、紐緒さんには隠せない、そんな気がした。
「そう。くだらない伝説を信じているのね。だったら、そこに行けばいいじゃない」
「でも、詩織の靴があるかどうか見てみたら、もうなくて…」
「それじゃ、しょうがないわね。あきらめて帰るしかないでしょ。それとも帰ってしまった藤崎さんを無理やり連れてくるものでも今から作りましょうか?」
「いや、それはいくらなんでも…。それに…」
と、俺はその差出人のない手紙を差し出した。
紐緒さんは俺の方を向いて。
「こんなもの私に見せるとかいい度胸してるじゃない」
「ご、ごめん…」
「あら…?」
「なになに?」
「あなた、いつも藤崎さんのそばにいたんじゃないのかしら?家も隣同士で幼馴染で、よくくだらないデートとかしていたんでしょ?なのに、気がつかないわけ?」
そういって、俺を背にしてしまった。
「そ、そうだけど…」
「よく勉強とかも教えてもらっていたんでしょう?」
振り向かず俺に話しかけてくる。
「う、うん…」
「それなのに気がつかないわけ?本当に猿以下ね。…よくみてみなさいよ。こ…これ以上、…私に言わせるの…かしら?」
…少し声が震えてる?
「え……?」
「その字をよくみなさい。私にはそれ以上は…」
きらりと光るものが落ちるのが見えた。
「え…?」
「ほら、なにしてるのよ。それをよくみてみなさい。簡単でしょ。そんなことは。早く気がつきなさい」
「え…?」
何が言いたいんだろうか…。手紙を見ればわかる?
差出人のない手紙。
そこには『伝説の樹で待っています』とだけきれいな見慣れた字で書かれている。
−!
「わかった。なんで俺は気がつかなかったんだろう!」
「ほら、早くしなさい。…早くしないと、…本当に彼女、帰ってしまうわよ」
「ありがとう!」
そういって、俺は飛び出した。
…やっぱり紐緒さん泣いてた?
…?
少しきにはなったけど、今は詩織だ。
そうだ。なんで気がつかなかったんだろう。
3年間一緒にいたじゃないか。
ずっと、勉強とか教わっていたじゃないか。
幼馴染でずっと詩織の字は見ていたはずじゃないか。
なんで、これをみたとき詩織の文字だと、気がつかなかったんだ。
詩織の靴がなかったのは帰ったからじゃないんだ。
そして…
「し、詩織…」
「おそいぞ。…。ずっと待ってたんだから…」
「ご、ごめん。ずっと詩織を探してたんだ。これが詩織からって気がつかなくて、詩織からじゃなかったらどうしようって…。だから、待たせて、ごめん」
「もう、バカ。ずっと待ってたんだから。来なかったらどうしようって。すごく不安だったんだから」
伝説の樹で、ずっと俺を待っていたからなんだ。
「ごめん。詩織」
「あなたが……」
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2011/9/24
気がつかない話ぱーと2(笑)
最後の最後でも鈍感な主人公。
自分から告白できるのはSS版のみだけど、ちょっと加えてみました。
その途中で今まで出会ってきた女の子に出会ったら面白いなぁと。
あと、やっぱり、初恋である詩織のことは絶対に忘れることができないだろうということ。
色々女の子と遊んでも、やっぱり最後は幼馴染の詩織が好きということを貫き通す。
そして、一緒にいた女の子もそれに気がついている。
気がつかないのは主人公だけ。
他の子だと、また違うんだろうけど、俺がやっぱり紐緒さんスキーなので、紐緒閣下に。
ちょっと損な役回りだけど…。
他のキャラでもこの場面だけ、書いてみるというのも面白そうなきもする。
…書かないだろうけど
幼馴染で初恋の詩織もいいけど、やっぱり、紐緒さんが好きな俺でした