春の風の中で…
 きらめき高校3年生の俺はこんな大切な時期に風邪を引いてしまったのだった。
 卒業を控え、大学入試、そしてきらめき高校生としては気になる伝説がある。
 ああ…。俺はどうなるんだ?
 放課後、帰り際に好雄が話し掛けてきた…。
 
「おう、、風邪大丈夫か?」
 ぐずっ…。
「鼻で返事するなよ。きったねぇなぁ…。鼻かめ、ほら」
「お、わりぃ、わりぃ…」
 好雄から手渡されたちり紙で鼻をちーんとかむ。
 ……ぐしゅぐしゅ。
 それをまるめて。
「まったく、こんな大切な時期になんで風邪なんか引くかねぇ…」
「しょうがねぇだろ…」
 ぐしゅ。
「そういや、おまえんとこの両親昨日から留守なんだろ?」
「ああ。んでも、2、3日したら帰ってくるから…」
 
「大丈夫か?お前一人で。なんだったら俺が泊まりに行ってやろうか?」
「いや、お前が来てもうるさくなるだけだからゆっくり出来ない…」
「あ、そうか。って、こら!ま、冗談いえるくらいなら大丈夫だろ。早く帰ってさっさと寝ろよ」
「ああ、サンキュ。好雄」
君、大丈夫?」
「あ、詩織……」
「詩織ちゃん、どうせただの風邪だよ。うつるといけないから早く帰ったほうがいいよ」
「こら。ぐしゅっ」
「まったく、きたねぇやつだなぁ、せっかく詩織ちゃんが来てくれたっていうのに」
「しょうがないだろ。不可抗力だよ。不可抗力」
「今日は早く帰ってゆっくりしたほうがいいわね。大学受験ももうすぐだし」
「だね」
 俺を差し置いて好雄がうなずく。
「…ってお前が言うなよ、好雄」
「ほら、詩織ちゃんもああいっていることだし、クラブなんかに行かないでさっさと帰れよ」
「ああ。さすがにクラブには行かないよ」
 そういや、俺は柄にもなく演劇部なんかに入っていたりするのだった。
 …詩織が入っていたからというのがあるのだが。
「それじゃ帰りましょう?」
「うんうん、帰ろうね、詩織ちゃん。こんな風邪なんか引いてるやつなんか置いてさっさと帰ろ」
「だから、なんでお前が!」
「くすっ」
「さ、帰りましょ。君」
「かぁー。こうなるのはわかっているから言ってみただけだ」
 がっくりとうなだれる好雄の姿は哀れにしか見えなかった。
「さ、俺も如月さんを誘って帰るか…」
「立ち直りに早いやつ…。てか、如月さんがいるのになんで詩織に…」
「あ、それはなぁ、お前がいて断られるのわかりきっているからに決まっているだろ?全てこの
好雄様の計算の上だ」
 とか言っていると教室の入り口にちょっと恥ずかしそうな好雄のヒロインがやってきたようだ。
「あ、未緒ちゃんきたわよ?」
 それに気がついた俺だが好雄に告げたのは詩織の方が早かった。
 如月さんは俺たちに軽く会釈して挨拶をした。
「え?どこどこ?あ、如月さーん。それじゃぁな、詩織ちゃんまたあしたね。お前も風邪早く治せよ」
 そういうと好雄は足早に如月さんの元へ行き、二人帰っていった。
「すばやいやつめ…」
「ねぇ、大丈夫?」
「うん」
「顔真っ赤よ?」
「…それは詩織がいるから…。ぐじゅ、ぐじゅ」
 とまた鼻をかむ。
「もう、たら」
 ちょっと赤らむ詩織の顔。高校入った当時では見られない詩織の顔。
「帰ろう…」
 ……そういや体がだるい。
「うん、帰りましょう」
「って、詩織も?」
「病人の人放っておけないし…、ね」
「ありがとう」
 そして俺と詩織は帰宅した。

家の前にて。
「本当に大丈夫?熱あるようだけど…」
「大丈夫だよ。ただの風邪だよ。美味いもん食って寝てればなおるって」
「そう?それじゃお大事にね」
「ありがとう」
 そして二人分かれた。
 ……とは言っても詩織とは窓とちょっとの空間で離れているだけなのだが。
  どさっ。部屋に入って制服のままベッドに倒れこんだ。
「ふぅ……」



 …
 ……
 ………
 …………
 ……………



 ぷるるる、ぷるるるる、ぷるるるる……
 電話がやさしく鳴り響く。
「………」
「詩織です。、大丈夫?寝ているのかな…。電気はついているようだけど…。無理しないでね」
 詩織!
 留守電にメッセージを録音する虚しい詩織の声が無情に響く。
 とは思っても体が言う事をきいてくれそうにない。
「し、しおりぃ……」
 どうにか起きて詩織に電話をしようと頑張ってみる。
 時計が目に入りもうすっかり夜もふけていることに気がつく。
 どうにか電話にたどりつて電話をかける。
 こんなときでも詩織の番号は忘れないのだった。
「はい、藤崎です」
「し、しおりぃ……」
「!!大丈夫?」
「うん…」
「嘘。無理しているんでしょ?まってて……」
 そういうと電話が切れてしまった…。
「しおり…」
 そう呼ぶのが精一杯で。
 受話器を置いてベッドに倒れこんだ。
。入るわよ」
 そう声がして、詩織が入ってきた。
「詩織…」
「まだ制服のままなの?着替えなくちゃね…」
 顔を赤らめて言う詩織の顔が見えた。
「いい。自分でするから……」
「向こう行っているね…」
 そう言って詩織は出て行った。
 ふうふう言いながらどうにか着替えを済ませてベッドにまたまた倒れこんだ。
「あー。もう……」
 体はだるいは、頭は朦朧としているはで混沌とした意識の中ふわふわしたところにいるような気がした。

 そう言って詩織が入ってきたのに目だけで反応する。
「熱が相当あるようだから……」
 そういって持ってきたのはタオルと氷水。
「冷たいっ」
 詩織がそう漏らしても俺にはどうする事も出来ず。
 そしてそのタオルを俺のおでこに乗せてくれた。
「冷たくて気持ちいい……」
 詩織がそばにいるだけで嬉しくて。
 詩織がこうしてくれているのがもっと嬉しくて。
 詩織が俺のためにしてくれるのが最高に嬉しくて……。
……」
「詩織、ありがとう…」
 それだけ言って俺はそのまままどろみの中に入っていった…。


 …………………………………


 朝、目が醒める。
 まだ体はだるい。
 …詩織はいないようだ。
「帰ったのかな…」
 俺も学校へ行かなきゃと立ち上がる。
 ふらっ、どたっ。
「れ?」
 そこえ慌てた詩織がやってきて。
「大丈夫?。熱あるみたいだから寝ていたほうがいいわよ」
「学校…」
「大切な時期だから休んだほうがいいわよ」
「でも…」
「私が連絡しておくから」
「で、でもそういうわけには…」
「いいわよ。平気よ」
 こういうとき、男のほうがおろおろするのはどうなんだろう…。
「ね?今日はゆっくり休んでて、ね」
「うん。わかった」
「それじゃ私は行くわね。それとおかゆをつくってあるから良くなったら食べてね」
「え?」
 すっとんきょうな声を上げる。
「まだ火にかけているから…。帰るとき消していくから。それと薬もちゃんと飲んでね」
「うん…」
 なにやら恥ずかしくなってくる。
「それじゃ、早く良くなってね。

 詩織……。

「それじゃ、行ってくるね。帰ってきたらまた来るから。ね?」

 そして詩織は窓をあけて。
「ほら、春のやさしい風が入ってくるよ。もう、春だね」
 
 熱の体に春の暖かい、そして朝の冷たい風が部屋に入ってくる。
 
 春の風の中で二人。
 詩織は俺に近づいて。
 そして、
 意外な行動に俺は余計熱が出てきそうになった。
 おでこを俺のおでこにつけて。
「まだ熱があるわね」
 詩織の顔が目の前に……。
 一瞬だけど、すごく長い時間のようで。
 壊れそうで。

 そして、唇も……


 詩織はまたね、といって部屋から出て行った。


 あとには風邪で寝ている俺とそして春の風が残された…
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久々のあとがき。
どうでしょう?
連続での詩織ちゃん。
ネタは……。自主規制です。
知りたかったらメールでこっそりきいてくださいね(汗)

タイトルに悩んで。
そういや、イメージソングに春のついたのあったなぁなんて思い出しまして。
んで、ちょっとそのタイトルのイメージにあるように修正しやした。


おいら的にはいい感じになったと思います。
(自己満足)

鏡さんのSSのようにならないように注意しやした。
って、ああいうシチュエーションが書きやすいんで…。

詩織、やっぱ、幼馴染なんだし、こーいうシチュエーションもねぇ…。
(本編ではありえねぇですが…)