怪我ならぬ、風邪の巧妙!?
「大丈夫なんでしょうね、あしたのデート」
「もちろん、大丈夫…ゴホッゴホッ」
「本当かしら。まったく、こんな時期に風邪をひくなんて。
 せっかく明日、楽しみにしていたんだから、
 こなかったら承知しないわよ」
「分ってるから…。鏡さん」
 私は鏡魅羅。きらめき高校の二年生。
 この高校一の美貌の持ち主よ。
 彼の名前は
 同級生でサッカー部のエースなの。
 あした、久々に彼が時間が空いたっていうから一緒にデートする約束なのに。
 彼はクラブで忙しいのに、この私に何回も電話やら、デートやらしてくれるの。
―まったく、この美しさは罪ね。神様を恨むわ―
 実際、彼女はファンクラブもあるほどの人気者
 誰もが認める学校一の美女だった。

 しかし、周りの男達って…
 の方はというと先週くらいから風邪をひき、
 今が最高に体調が悪かった。
 熱が出そうで、咳が出てのどの痛みもかなりひどかった。
 は我慢をしているのだった。

「まったくついてないよな……」
 と、一人自分の部屋でつぶやく。
 となりに幼馴染の詩織の部屋がある。
―まだ帰っていないようだな―
 と、ベッドに横になる。こんなとき、詩織でもいてくれたらと思っていた。
 そんなことを考えていると眠くなりいつしか眠りに落ちていった。
 ―で、次の日、デート当日。
 「う、頭が…………(@@)」
 頭痛で目がさめる。
 からだがだるい。
 俺はなにもしたくなかったが、あいにくきょうは鏡さんとのデートの日。
 体温計をわきの下に挟んで、待つこと3分。デジタルは39度を表示している。
―あちゃー、ダメだよ・…―
 仕方がないので鏡さんに電話をしようと子機を取り電話をする。
 何回もかけているから、目をつぶっていてもかけられるぜ!!
 ピ、ポ、パ、ピピ…
 プルルルルル……
 プルルルルルルル……

「はい、鏡です。」
「あ、鏡さん、だけど…」
「あら、どうしたの?君、まさか、今日これないって言うんじゃないでしょうね?」
「う。ごめん。そうなんだ。熱が39度あって、何もしたくないんだ」
「そう、それじゃしかたが無いわね」
「ごめん…」
「ま、いいわ。その代わり、学校であったら覚えておきなさいね。」
「う!!」
「それじゃね」
 ガチャ!!
 と乱暴に切られる。
 俺はゾクッとするような鏡さんの声に何も言えなかった。
―しかたが無い、寝てよう―
「大丈夫かしら。たしか両親とも働いてるって聞いたから」
 いつか本人が言っていたわね。
 一人っ子のはずね。
「鏡、光、私ちょっと出てくるからね」
「あれ、ねーちゃんどこ行くの?」
「デート?」

 二人の弟にからかわれてしまったわ。
 まったく、この子たちったら。他の弟たちは外に出ているの、もっと、いつもは騒がしいんだけど。
「そうよ。あ、帰りが遅くなるかもしれないから、
火だけは注意するんですよ」
「え、ご飯は?」
 まったく、育ち盛りの子は。
「たしか、冷蔵庫とかになにかあるからそれでも温めて食べてなさい」
「はーい。ねーちゃんいってらっしゃい!!」
 学校では高飛車な彼女は家では6人の弟達の面倒を見る良きお姉さんなのだ。
 どれくらい寝たことだろうか…
 おれは、インターフォンの音で目がさめた。
 ピンポーン
 ピンポーン
 ピンポンピンポーン
―しゃあない、出るか―
 と、だるい体を動かす。
 両親とも働いているので今日は誰もいない。
 日曜日なのに。
「はーい、どちらさま?家には両親ともいないから
まったく分らないからかえってください!」
 と、がらがらの声で言うと、
「私よ!君」
 と聞きなれた声がした。
「あ、鏡さん」
―もしや、学校まで待ちきれなくて、今日復讐しにきたか?―

 ガチャリ
 と扉が開く。
 そこには見慣れた鏡さんがいた。
「あ、鏡さん。どうしたの?」
「どうしたのじゃないわよ。風邪で寝こんでるでしょうから、
来てあげたのよ」
「ありがとう」
「いいから、貴方は寝ていなさい」
「うん」
「お勝手使わせていただくわ」
「え、いいよ。でも」
「相変わらず鈍いわね…何か作ってあげるわよ」
「え!ありがとう」
「さ、私に任せて、風邪ひきさんはねていなさい」
「でも、あまりたべたくないんだけど……」
「いいから、任せなさいって」
「うん、分った。ありがとう」

 いつもの鏡さんじゃ無いような気がするなあ。
 いつもはもっと、こう。ごうまんというか、高飛車という感じ。
 だけど、なんかきょうは妙にやさしいな。

 自分の部屋に行きベッドで一人思う。
 いいな。鏡さんの手料理か。
 とおもうと、クヮーと熱が出てきたようで、
 熱くなるのが分る―風邪のせいじゃないような―
 そして、待つこと数分。

「お待たせ、おかゆなら、食べられるわよね。
少しでも何か食べておかないと治らないわよ」
 鏡はにおかゆを作ってもってきた。
 それと、玉子酒も一緒に。
「さあ、どうぞ」
「うわ〜。おいしそう。いただきます」
 といって、一口。
 あまり食欲のないだったが
 うまかったのか、勢い良く食べた。
「あら、何もたべたくないわりには、良く食べるじゃない」
「え、だって、おいしいから」
「それはそうよ。弟……」
といいかけて、慌て口を閉ざす。
「え?弟?」
「いいえ、なんでもないわ」

 弟達が風邪で寝こむと必ず鏡はこのおかゆを作って食べさせるのだった。
 風邪をひくとなにもたべたがらない弟達も、
 これだけは喜んで食べるのだった。

「あ〜、おいしかった。どうも、ごちそうさま」
「おそまつさまでした。」
 と鏡はうふふふ…と笑っていた。
「それじゃあ、片してくるわ」
「あ、うん、ありがとう」
 と食器をもって部屋から出ていった・…。

 しかし、おいしかったなあ。
 生きてて良かった。
 
 眠い…。寝ちゃいけないと思っても睡魔は襲ってくるのだった。
 と眠りについてしまったのだった。
 鏡さんがいることを忘れて。

君、どんな様子かしら?」
 返事がしない?
 あれ?
 ともう1度
君!」
「?」
 ガチャリ。とドアを開ける。
 ベッドに目をやると寝てしまっていた。

「良く寝てるようね」
 机の椅子に腰を下ろし、のようすを見る。
 熱があるのだろうかと、おでこに手を乗せると熱い。
 お勝手まで行くと、そこら辺にあるきれいそうなタオルと洗面器に水と氷を入れて部屋まで持っていき、
そのタオルをの額に置いた。
 時計を見ると午後2時。
 鏡は、ベッドの横に腰を下ろす。
「どうしょうかしら」
 と独り言。
 

 まだ早いが眠てしまっていてはしょうがないし。
 考えてもしょうがないと、起きるまで、そばにいることにした。
 時間がたつのが遅く感じる。
 まだ五分くらいしかたっていない。
 静かな時間が訪れる。
 鏡も、眠くなってきてしまい、
 そのまま眠りに落ちるのだった。

「……」
 俺は目がさめた。なんかすっきりしている。
―熱が下がったかな―
 顔を上げるとタオルが一枚落ちてきた
―あれ、コンなのしてたかな?―
 と、ベッドの横に目をやると、なんと、鏡さんがいるではないか!!
「ずっとそばに居てくれたんだ」
 ボソっと言うと
「あら?」
 と鏡さんが目を覚ましたらしい。
「おはよう、鏡さん。ずっと居てくれたの?」
「え、あら。私ったら寝ていたようね…」
 少し赤くなる。
「鏡さん…」
「あら、起きたようね、ぐっすり寝ていたようね。気分はどう?」
「もう、バッチリ!!」
 といって、ガッツポーズをする。
 鏡は笑って
「そう、それなら良かったわ、私がここにきたかいがあったようね」
「もう、バッチリだ。熱もなさそうだし」
「それなら私はもう、帰るわ」
「え、もう帰っちゃうの?もっとゆっくりして行けば良いのに。
まだ母さんも帰ってこないようだし」
「そうしたいのはやまやまだけど帰りを待ってるのが居るから」
 一瞬ドキッっとなる。
―もしや?―
「弟達よ。食べ物はあるけど。きっと、お腹をすかしていると思うから…」
「え、そうだったんだ・・・鏡さんってやさしいんだね。ありがとう」
 というと、鏡は照れたように、
「こんな事は学校では絶対秘密よ。分ってるわよね。君」
「ハイ。鏡さん!」
 と二人笑う。
「それじゃあ、私はお邪魔するわ」
「じゃあ、そこら辺まで送っていくよ」
「あ、だめよ。まだ寝てなきゃ。私は大丈夫だから」


 俺達は玄関に行った。
「それじゃあ、私は行くはね」
「うん、どうもありがとう」
「それじゃあ明日学校で会いましょう」
「本当にありがとう。また明日ね」
 と、鏡さんは飛びっきりの笑顔を見せてくれたんだ。
 風邪のおかげかな。
 こんな鏡さんをを見ることが出来たなんて。最高だ!!
 鏡は家に到着すると
「ねーちゃんお帰り!」
 といっせいににぎやかな声がした。
「ただいま、みんな」
「いま飯作ってる!」
 一番上の鏡がいう。
「それじゃあ、後は私にまかせなさい」
 と、いって、弟達に代わりご飯の用意をする。
「♪♪〜♪……」
 なにやら楽しそうに鼻歌まじりでやっていると、
「ねーちゃん、なにかいいことがあったの?」
「え、まあね!」
 と、笑顔で答える。
―デートは出来なかったけど一緒にいられたから―
 と、笑顔で弟達のご飯の準備をするのだった。
「さあ、もうすこしでできるから、みんなで食べましょう」
「もう、腹減ったよ。早く〜」
「はいはい」
―クスッ。彼も似たようなものね―
「あ、また笑ってる!」
「もう、良いから!」
 と、今日のことを思い、
 そして彼――のことを想っていた。
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