彼女のこと
 夏休みも終わり新学期が始まった。
 少しまだ夏休み気分が残っているがあまりそんなことは言ってはいられない。

 受験にはあと1年あるが、来年の夏休みはこんなに遊べないんだろうなと思うと
今から嫌になってしまう。
 詩織と一緒の大学へ行くために、来年の今頃は猛勉強かもしれない。

 ー詩織から告白されるー
 
 これができなければ、この高校の伝説は俺にとって無駄になってしまうのだから…。


 とは言うものの…。



「なぁ、どうした?そんな辛気臭い顔しちまってよう」
「あー?」
「そうそう、その顔、その顔」
「いつも辛気臭い顔してる機がするけど、そんな顔だってことか」
「おい、好雄!」

 と、大きな声を出したものだから、教室に残っている人たちが全員俺のほうを見た。
 …恥ずかしい。詩織まで…。
「よっ!人気者!」
「おまえほどじゃないさ」
「そうかい?んでも、教室の外見てみろよ」
 というので、窓の外を見た。相変わらず伝説の樹がさりげなくそして、存在感を出していた。
 青空の下で。

「どっちみてるんだよ。そっちみたっておまえのファンはいないだろ、あっちだよ、あっち」
 そういって、好雄は、廊下のほうをあごでさした。
 
 教室の入り口でこっちの様子をうかがっている小柄な見慣れた女生徒がひとりぽつんといた。
「あー」
 俺が顔をそっちに向けると、その彼女と目が合って、少しほっとしたような感じで見えないように影に隠れてしまった。
「ほら、おまえのことずっと待ってるみたいだぞ」
「なんだ、詩織もいるんだから、入ってくればいいのに…。それに、俺のファンとかってのはちょっと」
「ほらほら、早く行ってあげろよー。じゃーなー」

 そういうと、好雄は教室を出て行った。

 相変わらず内気な彼女は、教室に入って来れそうもない感じなので自ら声をかけようと席を立った。
 そして、入り口に行くと、彼女はぽつんと、少し寂しそうに待っていた。
「俺のこと待ってた?」
 …第一声がこれかよ。
 と、自分でも、情けなくなるほどだった。もっと気の利いた言葉をかけてあげられないのかと。
「あ。い、いえ…」
 そんなわけはない。ずっとここで待っていたのはわかる。
「詩織もいるんだし、はいってくればよかったのに…」
「い、いえ…。詩織ちゃんがいると余計に行きにくいですし…」
 そうだ。この子はそういう子だ。
 
 夏休みに好雄に無理やり誘われた遊園地でも、こんな感じだった。
 それに、一番初めに出会ったバレンタインでも、こんな感じだった。
 
 詩織とはまた違ったものを持っている。

「ごめんね、変なこと言っちゃって。待っててくれたんだろう。ありがとう」
 と、ちょっと照れくさそうにいう。
「い、いえ…。そ、そんな…。私のほうこそ…」
 
 はじめは少し苦手だな。とか思ったけどあっているうちにそれもかわいいな、なんて思えてきて。
 詩織の友達ということもあり、だんだん詩織と一緒よりも、詩織と彼女と3人、というのが多くなっていたことに
そのうち気がついていた。

「それじゃ、帰ろうかー」
「はい」
 そううれしそうに返事する彼女。
 そんな顔を見るのが何よりうれしかった。

 最近は、詩織より美樹原さんと一緒のことが多いよな…。
 

 ー詩織から告白されるー



 美樹原さんの笑顔がずっと見れるなら…
 …詩織からじゃなくてもいいかな。
 
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2011.9.15

相変わらずの思いつきで書く。

美樹原さん。
というよりダメ主人公のお話…。

きっと、美樹原さんと、詩織とこのまま3人で想い出作っていくといつか後悔するんでしょうね
「詩織…」って

初恋というものはずっと忘れられないものだから。

「そんなこともありがとうって、思えればきっと終わる」
終わらせることはできるのでしょうか…。