最悪な正月?
 正月だというのに、なんでこうもつらいのだろう。
 いっそのこと今すぐ地球が滅んでしまえばいいのに。
 俺はそんなことを考えて、回りのことはあまり見えていなかった。
 先日のこと。


「ねぇねぇ。ヤン。冬休みって暇ー?」
 そういってきたのは他でもない。
 なぜか知らないけど入学当初からつるんでいる朝日奈夕子だ。好雄に紹介されていらい、何かと俺にくっついている。
「暇だけど、どうかした?」
「じゃぁ、休みの日曜日に一緒にスケート行こう?」
 いつも何気なくしている会話だが、それが甘かったらしい。詩織にもスケートに誘われていたのをすっかり忘れて俺はOKしてしまった。

 当然、両方からOKしたのだから、スケート場に来るのは詩織と朝日奈さん。
 詩織のほうが先に来ていて、そのときになって俺は大慌て。詩織とは俺から誘ったのに。
 そこへ相変わらずヘンな言い訳をして遅れて来る朝日奈さん。おたおたしている俺と、詩織がでくわしちゃったからさあ大変。詩織は黙って帰ってしまうわ、朝日奈さんは朝日奈さんで怖い目で俺をにらんで「超サイテー」と言い放ち持っていたかばんで俺をたたいてその場を去っていった。
 冷たい冬の風が俺をもっと惨めにさせていたのだった。



「あーあー。あれは参ったよなぁ…」
 とはいっても自業自得。ちゃんと思い出さなかった俺が悪いんだが。
 そういやきらめき高校には伝説があって卒業式の日に告白されると幸せになるとか言うのだけど。
俺はずっと詩織から告白されよう、詩織のこと好きだからって、そうおもってがんばってきたけど…。
「もう無理だろうなぁ…」
「おい、誠?何ボーっとしているんだ?」
「ああ、悪いな…」
「そんな間抜け面してると、女の子からもてないぜ?」
「あー」
 いつでも元気な好雄が俺に声をかけてくる。隣には優美ちゃん。
「どうしたんですか?先輩?」
「ほら、優美だって心配してるだろう?」
「ああ…」
「ほら、俺に言ってみろよ?楽になるぜぇ?」
 
 正月はじめにこいつと一緒っていうのも悲しいけど…。 正月早々呼び出されこうして好雄の家にいる。本当なら詩織か朝日奈さんと初詣にでも行っているところなのだろう。去年は詩織といったっけなぁ…。
 そんなことを考えながら優美ちゃんのいるとこで話すもの考えもんだと思ったけど、しょうがないので
ありのままを話した。

「それは致命傷だなぁ。もう、手遅れなんじゃないのかぁ?」
「先輩サイテー」
 …やさしい言葉をもらおうとした俺が馬鹿だった。優美ちゃんからは冷たい視線を送られている。
「俺はもうおわりなんだろうか…」
 もうこの世の終わりが来てもいい、そう真剣に考えていたくらいだ。
「そんな気落とすなって。どうにかなるだろう?」
「もう、お兄ちゃんすぐそうやって簡単に言う…」
 口の軽い優美ちゃんは呆れ顔だ。…俺にはもっと呆れ顔だけど。
「え?なにかいい考えがあるのか?」
「ない」
 …。
「もう。ほらね、お兄ちゃんいつもこうなんだから。大体自分の彼女もできないくせに他人の恋路の世話しようっていうのが間違いなんだからね!!」
 優美ちゃんはたまに痛いところをついてくる。それをいわれた好雄は完全ノックアウトされたようだった。俺も完全にノックアウトだ…。

「先輩、二人に謝ったら?」
「そうだねぇ」
 確かに優美ちゃんのいうとおりだ。
「謝って許してもらえないかもしれないけど、きちんと謝らないと。優美もお兄ちゃんにひどいことしたら一応は謝るよ?」
 …一応って。
「こら、優美。一応だったのか!」
「お兄ちゃんいつも優美のうそ泣きにひっかかるんだもん。楽勝ー」
 そういってガッツポーズをする優美ちゃん。
 …なんという兄貴だ。それにまんまと引っかかるとは。
「優美のいうとおりかもだなぁ」
「いや、もうすでに謝ろうとはして電話もしたんだ。だけど、…」
「ダメだったのか…」
「もし私が先輩みたいに同じところに違う人と一緒にいたら絶対許さないよ!」
 優美ちゃんのきつい一言。そうだろうなぁ。好きな人が違う女の人と一緒にいたらやっぱりいやだよなぁ。
「なぁ、あと3ヶ月はあるんだ。爆弾ついちまっているけど、爆発はしない。今まで詩織ちゃんから告白されようって必死にがんばってきたんだろう?残り3ヶ月さらにがんばったらどうだ?」
 好雄はこれ以上俺に努力せいというのか。ところで、爆弾ってなんだろうと思った。
 勉強も必死にやって、テストじゃ上位5位以内には必ず入るようにしている。体育祭では、かなり目立っていると思う。文化祭でも詩織と同じところでがんばってきた。さらには、紐緒さんのわけの分からない機械をつけてサッカー部の助っ人としてがんばった。虹野さんも応援してくれた。清川さんとも一緒に走ったりもした。なのに…。
「もう、燃え尽きたぜ…」
「なに漫画みたいなこといってるんだよ。もう少しがんばってみろよ。出会ったばかりのお前、いい目していたぜ?」
 そうだなぁ…。あのころは詩織のことがただ好きだーっていうだけでがんばってこれたもんなぁ。入学したてのころを思い出した。
 詩織がきらめき高校へ行くっていうんで、俺は猛烈に勉強した。勉強しまくった。うかるとはおもっていなかったこのきらめき高校へ受かって、入学日のクラス発表で詩織と一緒だとわかったとき、すごくうれしかったなぁ。
「そうだなぁ」
 いい目かどうかはしらないけど。
「だろ?思い出せよ」
「そうだなぁ。入学日になれなれしくしてきたのがお前だったよなぁ」
「っく…。そんなとこは思い出さなくていいんだよ」
「へぇ。お兄ちゃんやっぱり何の考えもなく声かけていたんだぁ」
 …またきついパンチが好雄へヒットしたらしい。
「と、とにかく、もう少しがんばってみろよ。応援してるぜ」
「優美も、…応援してるね」
「ありがとう、好雄、優美ちゃん」

 そうこうしているうちに、夕方になったので俺は帰ることにした。
 家に帰り俺宛の年賀状を受け取る。俺宛は8通らしい。
「これが最後の年賀状かな…」
 そんなことを思いながら、窓の外の家を見ていた。
 電気がついている。詩織の部屋だ。昔は部屋越しに詩織と話したこともあったっけ。
「詩織…」
 そうつぶやきながら年賀状をじっくりとみる。
 

「今年は8通かぁ。まぁまぁかなぁ」
 虹野さん、清川さん、朝日奈さん、優美ちゃん、好雄、紐緒さん、そして詩織。と、もう1枚。…だれだろう?どこにも差出人の名前も何も書いていないじゃないか?これじゃぁ誰から来たのか分からないし送ることできないぞ?それにコアラ年ってあったっけ?年とコアラの絵とコアラッキー以外にないも書いていないのだ。
「こんなふざけた年賀状ってありなのかぁ?」
 
 もしかしたら好雄なら知っているかもしれない。そう思って好雄に電話してみたが分からなかった。
 謎のまま日はすぎていく。


 次の日。
 特にやることもないので自分の部屋でごろごろ。寝正月だ。久々に雪が積もっている。そういえば今日は雪が積もるなんていっていたっけ。
 ピンポーン
 誰か来たみたいだ。
「はーい」
 ドアを開けた瞬間、冷たい塊が俺に向かってきた。その塊は俺の頬を直撃した
「つめてっ!」
 何が起こったのかわからず頬をさする。
「わーい。あたったあたったー」
 そこにいたのは優美ちゃんだった。不意をつかれもろに食らった俺を笑っている。
「優美と雪合戦しよー」
「よーし、おかえしするぞー」
「優美、雪はつよいよー」

 雪合戦なんて小学校以来かもしれないな。優美ちゃんと思い切り遊んだ。

「それじゃぁ、先輩、元気出してくださいね?」
「え、ありがとう」
「それじゃあねー。ばいばーい」
 ああ見えても落ち込んでいる俺のこと心配してくれてるのかな。最低とかいわれたけど…。


 ほぼ一方的にやられていたような気がする雪合戦のせいで俺はかなりぬれていた。
「さみぃー。風邪引いちまいそうだ」
 そうなる前にまず着替えないと。
 部屋に戻り着替えをする。すると留守番電話がはいっていた。
『1件の伝言です』
 ぴー
『あのね、私がんばって年賀状だしたんだ。だけど、私勇気がなくて自分の住所と名前書けなかったんだ。でもね、コアラはちゃんと描いたんだよ。私の思いつたわる…かな…』
 ぴー。
 はぁ。そうですか…。俺には関係ない。
「えっ?」
 俺はもう一度留守番電話を聞きなおした。
 つまりは自分の名前と住所書いてないってことだよなぁ。
 ……、そうだ。そんな変な年賀状、俺の手元にもあるじゃないか。
 そうおもって、その謎のコアラの年賀状をじっくり眺めてみた。
「これなのかなぁ。これだよなぁ。どうみても。コアラの年賀状とか他はないだろうなぁ」
 そんなことを考えて、その差出人のことを考えてみた。
 …けど、想像もつかなかった。
「勇気かぁ」
 そうつぶやいて、窓から見える景色を見る。…変わるはずもなく詩織の家が見える。詩織は何しているかな。初詣でも行ってるかな。
 思えば初詣とか1日に行くのが普通じゃないか。そういえば俺行ってないな。1人で行ってもむなしいけど行くだけ行こうか。本当なら詩織と…。 
 そして、むなしい初詣。神社にはやっぱり、人だらけ。 お賽銭をいれて、詩織たちと仲良くなれますようにと、お願いをした。どこからともなく『その願い叶えてしんぜよう』という声が聞こえたけど、空耳だったのだろうか?そのあと、むなしくおみくじを引くも、大凶。
「最悪だ…」
  おみくじを見ながら混雑しているところを歩いていたのがいけなかった。ドン!と何かにぶつかって、尻餅をついた。前を見るとその当たった何かがやはり尻餅をついている。せっかくの着物が台無しだ。
「ごめんなさい。急いでいたもので…」
「ああ、俺のほうこそごめんなさい。前見て歩いていなかった…」

 そして、顔を上げてみると…。
「あっ!」
 二人同時に声を上げた。
 学校でよくぶつかってくる子だ。
「ご、ご、ごめんなさい…」
「こちらこそ…」

 混雑している神社の参道でここだけ、空間が違うみたいだ。何かいわないと…。そんな気がした。
「大丈夫でした?怪我してない?…せっかくの着物が汚れちゃったんじゃないの?」
「いえ、いいんです。私が注意してないから」
「俺のほうこそ前見て歩いていなかったし」
「私が着慣れていないもの着てくるから」
「そうはいっても、俺がやっぱり前向いて歩いてないのがいけなかったんだよ。その着物どうしたらいいかなぁ。やっぱ高いんだろうなぁ」
 最悪だ。おみくじの大凶というのは当たっていた。
「いいんです。本当に大丈夫ですから。おみくじ、大吉ってでたんで…」
「おみくじとは関係ないと思うけど?」
「でも、本当に大丈夫ですから」
 そういうと、その女の子はその場を逃げるように走っていった。とはいっても、はやり着慣れていないのだろう、あまり早くはなかった。その場に残された俺は、申し訳ない気持ちでいっぱいになるも、その向ける場所が分からずにいた。
「しょうがない。帰ろう」
 大凶のおみくじが当たった、それだけで気分は重くなるもので、さらにはあんなことがおきては余計だ。
「正月だって言うのに今年はもう終わりかなぁ」
 詩織とも仲直りできそうにないし、朝日奈さんも怒ったままだし。背中を丸めて家に戻るとまた留守番電話が入っていた。
『2件の伝言です』
ピー
『今日ね、初詣へ行ったんだ。おみくじ引いたら大吉だったんだよ。でもね、大好きな彼とぶつかっちゃったんだ。彼優しくしてくれたんだ。着物は少し汚れちゃったけど…。でも彼の優しさが私をきれいにしてくれました』

ピー
『えっと、あの、着物は大丈夫だよ。えっと、あの、それでね、私決めたんです。勇気を出そうって。卒業式の日に告白しようって。彼好きな人とかいるのかな…』
 詩織たちと仲直りしようと思う気持ちは少なくなっていた。
[戻る]

 はい。あけましておめでとうございます。
 
 毎度毎度突発で書き上げる人です。そのおかげでなんともまぁ…なできですけど、どうしようもないへっぽこクオリティもやはり毎度のことですね。


 今年は初代15周年、2が10周年ということらしいです。

 思えば15年も詩織たちといっしょにいるんですな、俺…。
 人生の約半分が詩織たちと一緒じゃないかー!!

 そう考えるとすごすぎです、俺。

 1/1元旦2009年かな?
 …になるのかなぁ?
 現在午前4時。