補習の出来事
 夏休みの補習も今日でようやく終わり。
 長かった一週間の他の人よりも短い夏休みがようやく始まる。


「よう、。今日で終わりだなぁ」
「長かったぜ…。やっと、遊べる…」
「は?なにいっちゃってるのかなぁ?冗談は好雄君だぜ?俺たちには受験勉強というものが
のこっているではないかっ!」
「そう力いっぱい言われてもなぁ…」
 好雄は、朝からハイテンションだ。こいつには低血圧なんて言葉はないんだろう…。
「そうよ、そうよ〜。あなたたち二人は受験勉強があるから、がんばってねー」
 …そういって、おき楽な声で俺たちを応援?するのが1人。
「朝日奈、おまえなぁ…」
 あっちゃー、という感じで好雄は突っ込みをいれる。
「まぁ、せいぜいがんばんなさいよ! あたしはフリーターになるつもりだからー」
「朝日奈さん、気楽かもしれないけど、フリーターも大変じゃないの?」
「…あたし、ほら勉強嫌いだし…」
 …たじろぐ朝日奈さん。
「まぁ、なんにしても補習は今日で終わりだ。最終試験だ。がんばろうぜ」
「おう」

 きーんこーんかーんこーん

「あ、チャイムが鳴った」


 がらがら
「よし、それじゃぁはじめるぞー」
 先生が来てテスト用紙を配る。
 まぁ、がんばろう。

 3年生最後の夏。目の前には受験の二文字が。
 詩織というと、…。幼馴染以外の何ものでもない関係が続いている。




 今朝は補習の俺とクラブへ行く詩織と一緒になったのだが…。
「おはよう。補習、がんばってね。卒業できるといいね」
「う、うん」
、夏すぐ終わっちゃうよね…」
「そ、そうだね…」
「ねぇ。早いよね。私たち、もう3年生だよ」
「そ、そうだね…」
「もう、高校ともお別れなのね…」
「う、うん…」
「私たちも…」
「え?」
「ううん。なんでもない」
「そ、そう…」

「なに?」
「ううん。なんでもない」
「そ、そう…」
 それから二人は無言で一緒に午前中だというのに暑い路を二人で歩いた。
 詩織は、少しうつむいて。
 あまり一緒に登下校することのない路を二人で歩いた。





 俺はそんなにもひどいのか…。そんなにも『俺たち』は遊びほうけていたのか…。
 そんなに俺たち3人組はだめだめなのか…。
 朝日奈さんたちとも遊んだけど、詩織とも色々遊んだつもりだ。
 あちこち一緒に遊びに行った。

 詩織…。
 …あちこち遊びにいったばかりで思えばろくに勉強はしてなかったような気がしてきたなぁ…。
 …いつごろからだろう。3人組で毎回補習を受けるようになったのは…。
 しかし、こんなんで、俺大学なんか受かるのかなぁ…。心配になってきたけど、しょうがないな。自業自得かもしれないな。夏を制するものが受験を制するとかって言うしな。それに引き換え俺は…。卒業自体も危ない危険ゾーンにいるしな。

「はぁ…」
 そんなことを考えてたらため息が。
「どうした、?具合でも悪いのか?」
 …先生から突っ込まれてしまった。
「大丈夫です」
「しっかりやれよー。お前たちが落第するかどうかの瀬戸際なんだからなー」
 …そりゃ大げさだよ…。
 
 あー。色々考えてたら問題が進んでないな…。
 …さいんこさいんたんじぇんと…三角関数…
 ……わかんないよー!
 社会ならどうにかなるんだけど…。
 数学は絶望的だな…
 もうだめだー!

 きーんこーんかーんこーん

「…お、終わった…」
 こんな調子でテストは終了した。
「よーし、終了だー。回収。採点はすぐだから、すこしまってろー」

 6人しかいないんだ。採点はすぐなはず…。
 思えば学年全体で6人というのがすさまじく、その中に俺が入るというのも…。
 そう思うと情けなくなってきた。
「はぁ…」
「どうしたよ、?」
「はぁ?」
「…稀に見る、私は不幸です、って顔してるな…」
「…」
「もう、ドンマイ、ドンマイ!大丈夫よ。テストだけが社会じゃないって!」
 …朝日奈さんはほめてくれてるのか、追い詰めてくれてるのか。
「はぁ…」
「もう、過ぎたことはしょうがないから、どんっと胸張っていりゃいいのよ」

「そうだぜ。。過ぎたことくよくよ女の腐ったみたいにいじけててもかっこ悪いぜ?」
 って、男っぽく話すのは俺の後ろにいた清川さんだった。
「あら。清川さん、後ろにいたのか…」
「もう、気配に気がつかないなんてらしくないぜ?」
「…」

 そういえば、6人だったよなぁ。
 俺、好雄、朝日奈さん、清川さん。あとは誰だろ?
 教室をぐるりと見渡す。
 40人くらいはいる教室には6人でいるのはあまりにも広すぎる部屋だった。
 鏡さんと…。いつもぶつかってくる女の子か…。

 鏡さんは俺たち出来ない組にいるのが恥ずかしいのかふんと外を向いてしまった。…もう一人の髪の毛の変ないつもぶつかってくる女の子はやっぱり恥ずかしそうにうつむいてしまった。思えば俺の斜め後ろにいたのか…。まったく気がつかなかったよ。
 そういえば、俺たち常連組みじゃないよなぁ…。
「ねぇ、いつもは補習とかしないよねぇ。今回はどうしちゃったの?」
 俺は気になってその子に声をかけてみた。
 …少しなれなれしかったかな?
「あ、あの、わ、私、ですか?」
 ものすごく緊張してる感じ。
「そうそう。きみ。ごめん。俺名前知らないでさぁ…」
「あ、いえ。ごめんなさい」
 …謝られてしまった。
「ああ、ごめんね。こいつ無神経でさぁ。何も考えないデリカシーの無いやつなんだよ」
「…お前に言われたくないよ」
 …好雄がフォローするけど、フォローになってなく、逆に突っ込む羽目になってしまった。

「よし、少し静かにしろー。答案返すぞー」
 採点が終わったようだ。
「早乙女ー、朝日奈ー、鏡ー、清川ー」
 名前が呼ばれていく。
 …俺ともう一人のこの名前が呼ばれてない。
「以上。4人は帰ってよし残り二人はのこってろー」
「え?」
 がーん…。終わった…。
「それじゃなー」
「がんばってねー」
「まぁ、がんばれよ」
「ま、こんなものね」

 …それぞれ挨拶らしきものをして教室を出て行った。
 そして、俺ともう一人の子と二人だけになってしまった…。
 やばいのか、俺。

「さて。残りの二人だが…」
 ごくっ。緊張の一瞬…。
「まずは館林ー。どうしたー?いつもは上位に食い込んでくるお前が今回は?何か理由でもあったのか?」
 へぇー、館林さんっていうのか。かれこれぶつかってばかりだけどやっと苗字を知ったよ。
「えっと…。あの…。その…」
「答案用紙真っ白じゃないか?まさか記憶なくしたとかいわないよなぁ?」
「い、いえ…」
 え?真っ白?名前だけ書いて何も書いてないって言うことか…。
は、…もうひとがんばりなんだが。問題は館林だ。どうしたんだ?こんな問題、いつものお前ならすらすらとけるはずだろう?」
「は、はい…。あの…」
 へぇ…。頭いいんだ。なのに、どうして、こんなとこに俺と一緒にいるんだろう?
 俺は黙って聞いているしかなく。
 ちらちらと彼女のほうをみるとうつむいて恥ずかしそうに顔を赤らめて…。
みたいなのと一緒になるはずがないだろう?館林?」
「センセー、それはちょっとまずいんじゃないですか?」
「ん?すまんな。言い過ぎか」
「ご、ごめんなさい!」
 
 そういって、館林さんは立ち上がって教室を出て行ってしまった。
「まいったなぁ…。すまんが君が館林を探してきてくれないかな。先生はどうも嫌われてしまったようだ…」
「俺が、ですか?」
「ほかにいないだろ?」
「…」
「俺は職員室にいるから、つれてきてくれ。いなかったらクラブのほうにいってるかだから、適当に他の先生に放送してもらうようにしてくれ」
「…」
「ほら、はやく、はやく」
「はい」


 といって、俺は行くあてもなく、教室をあとにした。
 とはいったものの…、どうしよう。
 彼女の行きそうなところへ行けばいいんだろうけど…。
 当てが無い…。
 
 とりあえず俺は詩織のいる吹奏楽部へ向かった。

 …
「あ、詩織ー」
「あ、。補習は終わったの?」
「まぁ、一応ね。んでも…」
「何か用事?」
 詩織に舘林さんを探していることを告げた。
「へぇー。でも、ここには来てないわよ」
「そ、そう…。ありがとう。ほかいってみるよ」
「うん。それじゃぁね」

 ここには来てないか…。
 当てもなくさまようのもなんだから、さっきまで一緒だった清川さんに聞いてみようとプールへ向かった。…清川さんはと…。泳いでいるのかな。
 プールの中から、清川さんっぽい人が見えるのがわかる。ちょうど泳いでいるのか。
 少しまとう…。

 …
 …
 ピピー
 
 あ、清川さんが上がってきたぞ。
「お疲れ様」
「ああ、ありがとう。どうしたんだい?私に何か用?」
「あのね…」
 俺は舘林さんを探してることを話した。
「へぇ。でも、残念だけどここには来てないと思うぜ。今日は水泳部貸切だし水着着てない人が
来ると、のように、すごく目立つからわかるよ」

 …そういや、違和感全快だよなぁ…。
「ありがとう。ほかあたるよ」
「まぁ、がんばれよ」
「清川さんもね」
「ありがとう」

 そういってまた飛び込み台へ向かっていき笛の音とともに飛び込んだ。
 水しぶきが清川さんの体をきらきらと光らせていた。

 ここにもいないか…。
 他の3人は帰宅部だから、いないだろうし。あとは、片桐さん、虹野さんと、紐緒さんと如月さんと、古式さんに優美ちゃんか。
 俺は彼女たちと会うべく、美術部、サッカー部、科学部、演劇部、テニス部、そしてバスケ部と回って彼女たちに聞いたけどいなかった。
「どこにもいないぜ…」
 …吹奏楽部の前だ。詩織いるかなぁ。
 そう思った俺はまたのぞいてみることにした。

 練習してるなー。今はみんなとあわせているから少し待つしかない。
 詩織が俺に気がついたようだ。
 手を振ってみるけど、詩織は両手がふさがっていて何も出来ないでいる。

 しばらくして、演奏が終わって休憩になったようだ。

 詩織からこっちに来てくれた。
「お疲れ様」
「ありがとう。館林さんはいたの?」
「いや…」
「そ、そう…」
「また探してみるよ」
「あのね…」
「なに?詩織?」
「…ううん。なんでもない」
 何かいいたかったのかな?
「…ん?」
「教室とかみた?」
「いや?彼女のクラス知らないし…」
「私の感だけど…。教室にいるような気がするの」
「そう?まぁ、詩織を信じていってみるよ」
「うん。がんばってね」
「詩織もがんばってね」
「ありがとう」

 そしてあとにした。少し詩織が悲しげに見えた…。

「教室かぁ…」
 クラスわからないから、手当たりしだいいってみよう。
 そう思って、B組から順にみていった。
 …いないじゃないか…。
 A組はっていうと、自分のクラスなんで見る必要もなく。彼女のクラスじゃない。

 詩織の感も当てにならない?
 俺はまた詩織のところへ行こうとさっき補習を受けた教室を途中のぞいてみるがいなかった。

「どこへいっちゃったのかなぁ…」

 あ、詩織だ。
「あ、。いたかしら?」
 いないよ、っていうまもなく、
「その顔はいないのね…」
「うん」
「教室は全部見た?」
「みたよ?」
「私たちのクラスは?」
「みてないよ?」
「…そう…」
 詩織の顔はやっぱり寂しそうだった。
「詩織?」
「なに?」
「なんか、寂しそう?」
「ううん。大丈夫よ?
「ならいいけど。まぁ、いってみるよ」
「私は、クラブ終わりだからもう、帰るね」
「お疲れ様」
 もう、午前中も終わりかぁ…。はらへったなぁ…。
「またね」
 詩織の顔は終始寂しそうな感じがした。


「俺のクラスにいるのかなぁ…」

 俺は自分の行きなれた通路を進み、そして、ドアに手をかけた。
「いるのかなぁ…」
 がらがらがら……。

「あっ」
 いた。
 …しかも、偶然にも俺の席。ひじを立ててうつむいて…。泣いてる?
 ドアにも気がつかないって感じでそのままで。
「舘林さん。ここにいたんだね」
 近づいて、俺はそう声をかけた。
 でも、肩を振るわせるだけで、返事が無い。
「舘林さん。そこ、俺の席」
 こく、こくって、少し反応があった。
「知ってたのか…」
 またうなずく。
「先生が…」
「ご、ごめんなさい」
「え?」
「ごめんなさい…」
「謝らなくてもいいよ。舘林さん、何もしてないよ」
 こんなときどんなこといえばいいのかなぁ。
「ごめん。俺…」
さんは、謝らないで!」
 どんな声かけてあげればいいのかなぁ。
「あの…」
「ごめんなさい…」
「館林さん…」
 そういって、俺は持っていたハンカチを差し出した。
「大丈夫です」
「大丈夫なわけないじゃん。泣いてるんだし」
「大丈夫ですから…」
 どうしたらいいんだー。好雄助けて。そんなことが頭によぎるけどそんなことは届かず。今は俺と館林さん二人きり。
「どうして…」
「大丈夫だから…」
 彼女は俺の机にひじをついて、頬杖ついてすすり泣いていて。俺は好雄の席から彼女を覗き込むようにしている。
 夏の暑い教室で、二人きり。
 汗がじっとりと出てきている。
 彼女のために差し出したハンカチを、自分のために使いたい気分だけどそれはさすがになぁとためらい、汗を手でぬぐって耐えている。
 背中をとんとんって、たたいたりするのも少しためらうので俺はどうすることも出来ず、この状態のまま、時間が過ぎていった。
「舘林さん」
「…ひっく。ひっく…」
 …。困ったよなぁ…。

 ピンポンパンポーン
 あ、放送だ。
 …俺御指名だし。
 先生からだ。
「きいたと思うけど、御指名だから、ちょっといってくるよ」
 こくっとうなずくのを確認して俺は職員室へ向かった。




 そして、職員室の先生に話した。
「そうか。まぁ、お前に任そう」
「…」
「ああ、そうそう。この答案返しておくから」
 そういって、二枚の答案を返してもらった。
「一枚はお前のでもう一枚のは館林のだ。ちゃんと返しておいてくれよ」
「はい」
「それから、夏休み終わりに、もう一度テストするから」
「はい」
「館林もな」
「はい…」
「一緒に勉強するなりなんなりして、少しはがんばれー」
「…」
「館林がこんなことはないんだよ。お前よりはるかに勉強できるはずだから色々教えてもらえ」
「そうですか…」
「藤崎といい勝負なんだがなぁ…」
 え?藤崎って詩織だよなぁ…。そんなに頭のいい人がなんで…。
「お前も今思ったろう?頭いいのになんで補習なんだって?先生もそこが気になってなぁ」
 この先生は読心術でもできるんだろうか?
「気になりますね」
「まぁ、任せたぞ」
「は、はぁ…。」



 そして俺は教室に戻った。
 彼女はもう泣き止んだらしく、俺の机にちょこんと座っていた。
「あ…」
「ごめんなさい」
「はい」
 そういって、俺は後ろ向きにして白紙の答案用紙を渡した。
「ありがとう」
 そして、俺は休み明けにテストをするってことを告げた。
「んでね、先生、こんなこといってたんだけど…」
 と、本来詩織と同じくらいの学力なのにどうして今回は補習組みなのかということを。
「ごめんなさい。それは…」
「いいたくないならいいよ」
「ごめんなさい…」
 
 無言の時間が流れる…。
 もう、お昼はすっかり過ぎている。


「あのさぁ…」

 だめもとで、きいてみようか…。

「館林さんがよければ…」

 少し悲しそうな詩織の顔がよぎる。

「館林さんさえよければ…」

 詩織は、幼馴染だし。

「俺にさ」

 詩織は。

「面倒じゃなければ…」

 詩織は、幼馴染だよ。

「俺に勉強とか教えてもらってもいいかなぁ?」

 そういい終わると、彼女は机の上にあった俺のハンカチを手にして、俺のことをちょろちょろみて、うんって、縦に俺がうなずくとそれで涙を拭いた。

「私でよければ喜んで」
 そういって、微笑んで返してくれた。
「ありがとう」
「私、館林見晴っていいます」
 彼女からはじめて聞いた本名。見て晴れるか。

 そして、俺と館林さんは夏休みの間学校の図書館で二人で勉強をした。
 先生が言っていたとおり、詩織くらい勉強ができるようだ。
 おかげでどうにか夏の最後の補習の補習?のテストはばっちりだった。


 詩織とは相変わらず幼馴染の間柄だった。

 その名のとおり、見て晴れているのかもしれない…。
 俺がそれに気がつくのは、これから半年くらい先のことだった…。
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あとがき

 久しぶりです。
 久しぶりにSS書きます。
 館林さんです。舘林と変換されてるとこ、あるかなぁ…(^^;

 はじめは朝日奈さんのSSだったんだけど…。
 なんか知らないけど、みはりんが動いてくれました。

 久々のSSで感覚がもどってないかもだけど…。

 まぁ…。RO三昧だからってことで(ぁ