夕暮れのWhite X'mas
 12月、街はクリスマス一色。
「あーあ、クリスマスだってのに」
 と、外を眺め
となりには、憧れの詩織の家の窓がある。もう高校三年だと言うのに、全然詩織に告白できずにいる。
「詩織」
 明日はクリスマスイブ、伊集院の例のクリスマスパーティーがある。は、詩織に何とか渡そうとしているプレゼントをみる。
 あしたこそ!といつも思うのだが何か引っかかる。
 そう、一年のとき知り合った朝日奈夕子だった。
 いつも彼女は明るく、陽気にはしゃいでいる。そんな彼女だんだん引かれて行ったのだった。
 とはいうもの詩織も諦められない…片思いだが。
 今年の夏に行った遊園地のナイトパレードのときはもしかして?など思ったりしていたかともあったが、彼女はいつもどおり、好雄とかに気軽に話していた。
 もちろん、にも例外ではなかった。

「もう、遅い。寝よう」

 そのときだ。いきなり電話が俺の睡眠を妨げるように怒り出した。
 
 プルルルル、
 プルルルルル

「ハイハイ、でます、でます。はいです。」
「あ、?あたし、あたし、朝日奈だよ〜。ねえ、ねえ、あした、あいてるでしょ?」
「あした?…まあ、伊集院のところへ行く以外は予定はないけど?」
「じゃさ、明日二人で遊園地に行かない?」
「遊園地?おいおい、もう冬だぞ、なんで、また、このくそっ寒いのに…」
「ねえ、いいじゃん、いいじゃん。ねえ、一緒にいこうよ?」
 と、いつもの甘えた声を出す。これで最初に会ったときもやられた。
 朝日奈がこの声わ出すときには、必ず何かある。でも、断れない。
「しゃーねなー。わかったよ、で、時間は?」
「時間はね、夕方の5時、近所の公園で待ってるからね。絶対来てよ。こなかったら、あたし、あたし」
 がちゃ、とそれだけをいうといきなり切れた。
「なんだ、いったい?なんか、最後のほう、泣いていたような……」
 あっけに取られるがまあ、いつものうそ泣きだろうとけりをつけ、寝ることにした。
「おやすみなさい。いよいよだな、明日こそ。」
 と意気込むのだった。
「きようは一日中鏡に向かっていたから、身だしなみはばっちりだ」
 意気揚揚と出かける、そう朝日奈に会う時間だ。詩織に渡すプレゼントを持ってここへ来た。
 家に帰る暇など無いとおもったからだ。
 長くはいないつもりだ、はやく朝日奈とわかれて、詩織に今日こそは告白するぞ!
「相変わらず、遅刻か」
 時計を見ると10分過ぎ。そろそろいつもならくるころだ。
 には、いつものことだからよくわかっていた。
「ごっめ〜ん、電車がもろごみで…」
 と、いつものお決まりのイイワケをする。
 だが、には朝日奈のこの顔にはよわかった。
「じゃあ、早いとこ遊園地にいって、伊集院の所に行かないとな」
「え〜。伊集院君のところなんか、いいじゃん。それよりもさ、あたしと一緒にすごそうよ!!」
 一瞬、ドキッとなる。朝日奈から出た言葉がこんなものだなんて。
「なあ、朝日奈?今日はどんなようなんだ?」
「いいから、一緒に来ればわかるって!!」
 相変わらず、強引につれてこられてしまった。遊園地、クリスマス、周りを見れば恋人だらけ。いやでもそういう気分になるのは、しかたのないことか?
 と、自分にいいきかせ朝日奈と観覧車にのっている。
「ねえ、ほらみてよ〜
「なんだよ、いつもなら、ジェットコースターあたりで騒いでるやつが、なんできょうにかぎって観覧車なんだ」
 日も落ちかけ、あたりは暗くなってくる。散々つれまわされたのだ。
 高いところにいるので、街の明かりが最高にきれいに見える。そして、曇り空。
「雪降りそうだな」
! あたしね」
「なんだよ」
「あたし、ちょっと気になる男子がいてさ〜」
「で?」
「それで、でね、好雄くんに聞いたんだけど、なんかそいつすごく鈍感なんだって。でね、あたしさ。他の男子とかにも気軽にはなしてるでしょ?だから、あたしは、そいつのこと……本当に好きで、色々やってるんだけど全然気がついてくれないんだ…ほかに好きな人がいるらしくて。」
「ふーん、そっか。……」
「でね、好雄くんが言うのには、やっぱ、直接言った方が良いって…」
「……」
 そうか…好きな人がいるんだ。そうだよな、かわいいもんな、朝日奈。一緒にいると楽しいし。
 誰なんだろうか。気になる。朝日奈さんのその言葉がどうも、引っかかっていた。
「その人って、どんな人?」
 俺は聞いてみる。少し気になったのだ。
「だから、すごく鈍感なの。あたしが、いろいろ、連れまわしても、そいつったら、他の人のこと考えてさ、こんなあたしかわいいのにね」
 うふふふと笑うけど、いつもの元気はない。
「朝日奈…。元気出せって…」
 俺には詩織がいる…。
「でね、あたし、はっきり言おうって、決めたんだ。今日、この日に…」
 今日?俺に相談してきただけか?俺は早く詩織の下へ行かないと。今日こそけりをつけるんだ。
「え?じゃあ、俺と一緒じゃダメじゃん。早いとこ、その人のところに行かないと」
「うん。そうなんだけど…、ここでいいの」
「?ここでいい?ここに来るんだ」
「まあ、そんな感じかな。もう、来てるかもしれないけど」
「なあ、朝日奈。今までその人に色々してきたんだろ?デートとか、一緒にいろんなとこ行ったり…」
「うん。でも、その人本当に鈍感なの、気が付かないって感じ?」
 俺なら、すぐ気が付くのにと思いながら朝日奈の話に耳を傾けていた。
「相当鈍感なんだね」
 相槌を打つ。
「ねえ、!」
 いきなり大声。
「なんだよ、いきなり…」
 少し潤んだ目で俺を見て、
「もう、その人はいるの。あたしの、あたしの目の前に!!」
「!!!!」
「ねえ、、あたしが好きなのは、だよ。
「朝日奈……」
「ねえ、あたしじゃ駄目?いいかげん気づいてよ!!あたし、もう、…」
 声になっていなかった。俺に寄りかかっておお泣きしている。
「朝日奈。そうか…。ゴメンな」
 俺は今までの高校生活を振り返ってみた。
 廊下でぶつかってきた朝日奈。いろんなところに一緒に行って、学校の帰りにいろいろ寄って、
体育祭のときも、修学旅行も、文化祭も、ずっと一緒だった。今まで気が付かなかったけど、
いつも朝日奈がいて、楽しく、過ごしてきた。…詩織の姿はない…………。
いつしか朝日奈に恋してるかもって思ったこともあった。

「朝日奈…。気が付かないでゴメンな。いままで、一緒に二人で過ごしてきたものな」
「うん。気が付いてくれた?」
「ああ、朝日奈。気が付くの遅かった分、今から取り戻そう」
「うん!」
 観覧車がちょうど下に来る頃、俺達の心は一緒だった。
 おれは、詩織に渡すはずだった物を、朝日奈に渡した。
「メリークリスマス。朝日奈。一番大切な人に渡すプレゼント。受け取ってくれるよな?」
「もちろんだよ、。あたしからも、メリークリスマス」
「あ!!」
 二人同時に声をあげるそう、二人のプレゼントとは、偶然にも同じペアウオッチだったのだ。
「伊集院ところへいくか?」
「いこ、いこ!!今からでもまだ間に合うよ、速攻いって、おいしいものいっぱい二人で食べようね」
 と、何事も無くいつものようにつれさられて行くのであった。


 そして、時が過ぎ卒業式には……伝説の樹の下でまた、ひとつの伝説が…
END
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