七夕のメール
「え?七夕?」
「そう。伊集院の家でパーティーやるんだけど…」
「知ってるわよ」
「だったら一緒に行かない?」
「なに寝言いってるのあなた?」
「だから一緒に伊集院のパーティに行こうって……」
「くだらないわ」
「……」
「え」
「その日が七夕だかなんだか知らないけど、私には関係ないのよ。さ、研究の邪魔よ。自分の
用が終ったらさっさと帰りなさい」
「紐緒さんは?」
「私はちょっと手が離せないのよ」
「じゃぁ、俺も……」
「いいわよ。あなたはさっさと帰ってそのパーティに備えてはどう?」
 ……まったく。なによ。
 あと少しでこの研究も終わりというのに。
 七夕なんてくだらない……。

 自分の机のパソコンに向かって昼間のことを考えていた。
 そして、そんなことは無駄よ、と一人強く考えを打ち消す。
 彼と別れてから少し経ってから学校を出て家に帰るなりパソコンに向かっていた。
「あと少しなのよ……。この処理が完成すれば、私の野望にまた一歩近づくわ」
 目を輝かせて野望に燃える。
 ……
「あと少しね…」
 ……90%
 ……98%
「!!」
 パソコンのHDDが止まりかける。
「あと少しよ。ほら、さっさと終了させなさい。この世界征服プログラムが完成するかどうかの瀬戸際なんだから」

 帰ってきてからずっと処理をしていた膨大の量のデータが最後の最後で止まってしまったのだ。
「いままで順調だったのに…」
 結奈の顔色も悪くなるのは当然。
「……」
 ERROR!の文字がパソコンに映し出された。
「なんてこと。なんでエラーになるのよ!!私のデータは完璧なはずよ」
 そして、そのままその処理を終了させた。
「しょうがないわね……。またはじめからやりなおしじゃない」
 そしてそのデータをはじめからやり始めようとしたときちらりとパソコンにある時計を見る。
「…もうこんな時間なの」
 午前3時を表示していた。
「いいかげん寝ないと朝まずいわね…」

 朝一番に顔を合わせるのが彼だった。
 彼は結奈の変化に一番に気がつくようになっていた。
 結奈が学校へ行って一番にする事は部室(いまじゃ結奈の研究室と化している)に行き実験用植物の
様子をうかがう事だった。
 そして、それのことをいつのまにか知った彼も朝ちょっと遅れてやってくるようになっていたのだった。
 毎日朝に放課後に会うのでいつのまにか仲良くなってしまっていた。
 とはいっても、結奈は下僕としか思っていないようだが。

 あしたの朝いろいろ顔色をうかがわれるのも面倒だし、このまま寝ましょう…。
 そう思いパソコンを切ろうとしたけど、メールチェックをしてない事に気がつく。
 最近やたらとSPAMメールしかなく、そういう不貞の輩には結奈特製のウイルスを送りつけていたりするのが日課だった。
「さて、今日の私の下僕になる人は誰かしらね……」
 ………
「5件。いつもよりはましね」
 そう肩を落とし、送信先を断定してウイルスを送信しようと、メールをチェックする。
 いつもは全てに送信してしまうのだが見知った差出人が目に付く。
 そう。彼からだった。
 危うく結奈ウイルスを送るとだったのをキャンセルして、メールを読む。

件名:七夕

一緒に伊集院の七夕パーティへいきたかったけど、紐緒さんがこなかったから俺も行かなかったよ。
さぞかし豪華なパーティだったんだろうね。
今日は一緒にいたかったけど紐緒さんが忙しかったみたいで残念です。

お誕生日おめでとう。

またあした学校で
「まったく……。それならそうと早く言いなさいよね」
 少し照れて。
件名RE:七夕

そういうことはさっさといいなさい。
せっかくの忠実な下僕の言う事を聞き逃しちゃったじゃない。
いずれ伊集院家のパーティなんかより豪華なパーティをするからそのときはあなたもいらっしゃい。
楽しみは取っておくものよ。

ありがとう。一応礼は言っておくわ。

また学校でね。

それと一つだけ間違っているわ。
誕生日じゃなくて生誕記念日だから。
いずれ世界中が私にひざまづく日だから、ちゃんと覚えておきなさい

紐緒結奈

 いまから送って明日朝までに彼が見てくれるかどうかという疑問はあったがそのまま送信した。
 そして、眠りについた…。

 朝。
 遅くまで起きていたので辛い。
 パソコンが付けっぱなしになっていて、ネットにも繋がっている状態だった。
 結奈は少しの期待をもってメールをチェックした。

件名:おはようかな?

どうもありがとう。
ちゃんと覚えておくよ。生誕記念日。
これを読んでいるのは朝か、それとも読まないで俺に会う可能性もあるだろうね。
それじゃ学校で。
「ふふ……。やられたわね。私が送ってから10分くらいあとじゃない…」
RE:読んだわよ

ちゃんと学校へ行く前に受け取ったわよ
 とだけ書いてメールで送った。
 ちょっとばかり彼に勝ったと思った瞬間だった。
「さぁ、今日も一日が始まるわよ」

 結奈の一日が始まる。
 世界征服に向けてそして、伝説に向けて……。
END

 HAPPY Birthday 紐緒結奈!
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ってことで。紐緒閣下生誕記念SSです。
久々にあとがきなど。
まぁ、相変わらず即興なもんだけど。
とりあえず紐緒閣下マンセーってことで。
あと1年でときめもも10周年。
よくもまぁ、こんなに長く萌えているなと自分でも関心ですね。
ときめきメモリアルがこれからもずっとずっと語り継がれていきますように。

注:ウイルスメール送るつーのは、紐緒閣下なんで……。実際にやったらまずいんで一応書いときまふ。