ふたり
「お待たせ」
「遅いじゃない。私を待たせるなんていい度胸してるわね」
 ごめんといって彼女の横に座る。放課後の部室に彼女と2人きり。2人だけしかいないのにこれだけ広い部屋はちょっと落ち着かない。
 ただ、彼女はやりたいようにやれるからいいようだ。『科学部』とは名ばかりでもはや『世界征服部』に内容は変わっていた。

「少し困っているのよ」
 今度は何を困っているのだろうか…。この前はモルモットが全滅したといって騒いでいたし、その前は植物の実験で失敗したと言っていたっけ。

「もうすぐ卒業でしょ。その来るべき日に備えて着々と準備は整いつつあるのよ」
 世界征服ってやつだろうか。

「でも、少し不安材料があるのよ」
 はぁ…。そうなのですか…。

「真世界征服ロボももうすぐ完成するわ。そうすれば私の邪魔するものはいなくなるはず」
 はぁ…。

「この真世界征服ロボが完成すれば、貴方が使う世界征服ロボの数倍の威力は発揮するのよ」
 科学部奥義、か。これも確か結局は大体彼女が作ったんだよなぁ。まぁ、俺も少しは手伝ったりもしてるけど。ただ、そっちの、真世界征服ロボってのは、彼女1人で作っているようだ。俺が手出ししてない分、かなり容赦ない物になっているには違いないと思う。

「それでも、不安なのよ…」
 なんだろう、不安って言うのは。

「ほら、貴方の使うそっちのロボは貴方もいろいろ手伝ってくれたじゃない?結構いい感じにいってると思うんだけど、リミッターがあるのよね」
 そらそうでしょ。これでリミッターなかったらとんでもないことになってしまうだろう。

「リミッター単に解除したバージョンを試してみたのよ」
 い、いつの間にそんな恐ろしいことを…。

「やっぱり、すごいわね。リミッターつけておかないと暴発するわ」
 それは彼女がすごいからだと思う。彼女が設計とかしたわけだし。

「それで、私は、リミッターなしでもそのロボ以上の威力を発揮するように改良中よ」
 そ、そうですか…。
 俺にまた手伝えって言うことなのだろうか?

「これで私の邪魔するものは消し去るのよ」
 ふふふふっと笑う。

「それで、俺に手伝えということなのかな?まぁ、ここまで来たわけだしー」
「いや、手出し無用よ。これは私の戦いなのよ。私がやらないと意味がないのよ」
 そ、そうですか…。
 そう、自分に言い聞かせるように、俺に言った。
 俺には手伝ってほしくないようだ。
 いつもなら、「ほら、早くしなさい」とかっていうんだけど、どうしたんだろうか。よほど俺に秘密にしたいのだろうか。

「あと、卒業まで1年もないのね…」
 そうだ。もう高校3年なのだ。1年のときに彼女に出会ってずっといろいろ実験とかにつき合わされてきたっけ。
 
「感傷に浸ってる暇はないわね」
 世界征服の準備で忙しいということか。彼女は優秀だから、大学でも就職でも出来るんだろうけど、俺は大学へ行きたいから勉強に忙しいんだよな。ただ、まぁ、彼女がいろいろ教えてくれるから、かなり助かっている。
 そういえば、呼び出したのは何だったんだろう?わざわざ呼び出さなくても俺はここに来るのに…。

「そういえば、俺をわざわざ呼び出したのって何?」
 しばらく間があく。
「べ、別になんでもないわよ」
 くるりと俺から顔を背けていう。夕焼けのせいなのか、彼女の顔が赤く染まる。
 変なの。呼ばなくても来るのに。
「それより、勉強のほうはいいのかしら?」
 そうだった。俺は図書館なんかへ行くよりここで勉強するという変な日課になっていたのだった。
 今日も2人でいや、俺は勉強で彼女は自分のことをやりながら時間をすごすのだった。
 こんな時間がいつまでも続けばいいって、そう俺は思った。
*********
 そして、そんな日が続き、卒業間近に彼女から戦いを挑まれるとは思っても見なかった…
END
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あとがき
超久しぶりなSS。もうね、すべて忘れ去ってる気がする…。
さらに、こんなネタどこかで書いたことあるような気がする…。

2010/5/25〜26

日にちまたいだ…