何の研究してるの?
カンタンに言ってしまえば、「ストレスに強い作物を作る!」ということです。
高温・低温・乾燥・塩分…
植物にとってストレスになるような環境が、世の中にはたくさんあります。
爆発的な人口増加に伴って、いまや世界では緊急に食糧の増産が課題となっています。
飽食の国・日本にいたら実感することはあまりありませんが…。
餓えで苦しんでいる人たちは本当にたくさんいるのです。
もしも
砂漠地帯や沿岸部といった、作物にとってストレスの大きな地域でも
ちゃんと育つことができる品種ができれば
それは食糧難を解決するための大きな手がかりになるはず。
このため、農学を研究する人たちの間では「ストレス耐性」が重要な課題となっているのです。
私の研究は、植物にしかない呼吸がストレス回避に働いてるのでは?という仮説を検証するというもの。
もしもコレが確かなら、あらゆるストレスに対して耐性をもつ「スーパークロップ」の誕生も夢ではないのです!
「マイナークロップチーム」結成!
ウチの研究室では、基本的にイネを扱った研究をしてるのですが、その中でも私は異端児。
卒論生の頃からイネはほとんどやってません…
ちなみに今まで扱った植物を列挙するとキリがないのですがおおまかに挙げると
・牧草のたぐい
・ベンケイソウ
・パイナップル
・アイスプラント
そして、おまけのようにイネ…
こんなにバラエティ豊かな植物を育ててるのって、ウチの研究室の中ではおそらく私がダントツでしょう。
まあ、どれもこれも説明がめんどくさいので
「何の研究してるの?」って聞かれたら
「おコメの研究してます!」って答えちゃうんだけどね!
他のみんなは揃いも揃ってイネの研究してる中、ひたすらアウトロー路線をゆく私。
サトウキビで研究やってる先輩とふたりで「マイナークロップチーム」を結成(?)してしまいました(笑)。
実験植物紹介〜☆
☆★☆ベンケイソウ☆★☆

この葉っぱ、
「土の上に置いておくだけで芽が出る!」
という「ミラクルリーフ」として、花屋さんで結構売られてます。
350円ぐらいで。
そのことを知ったときは
「これを大量に栽培してボロ儲けしてやろう」
と真剣に考えたものでした。
本当に土の上に置いておくだけで芽がでてどんどん育つし、かなりタフなヤツなので栽培がラク。
なので実験に使うにはもってこいなのです。
☆★☆パイナップル☆★☆

いわずと知れたパイナップル。
でも実際に生っているところを見たことのある人って、そうそういないんじゃないでしょうか?
写真のように、とがった葉っぱの間に実がつくのです。
それにしても、このとがった葉っぱは殺人的。
先が鋭く、当たっただけでもひっかき傷ができてしまう上に
植物そのものがけっこうでかいので、台の上に置いて育てていると
とがった葉っぱ(しかものこぎり状のギザギザ付き)が、ちょうど私の目の位置に来るのです。
まさに凶器。
お前ら手塩にかけて育ててやった恩を仇で返す気か。
☆★☆アイスプラント☆★☆

水耕(=水栽培)中…
この植物が、現在の私の主要な実験テーマなのですが
これを知ってる人がいたらそれは相当奇特な方だと思います。
噂では食品として高級スーパーなんかに出回ってるらしいけど、そんなもの見たことないし。
今んとこは、研究用の植物だと考えていいと思います。
この植物、面白いんですよ。
ストレスに遭うと、光合成のシステムを違うタイプのものに変えちゃうの。
そうすることによってストレスを回避して、生き延びようとするのです。
もともとは地中海沿岸部の植物だそうです。
なんで「アイスプラント」という名前で呼ばれるのかというと
塩分濃度の高いところで育つと、葉っぱの表面に塩分を蓄積する細胞が発達して
それがキラキラと光を反射してまるで氷のように輝くのです。
これがまた本当にキレイなんですよ。
まるでガラス細工のよう…。
これを見たときは、神様って不思議な植物を作るもんだなと感動しました。
ちなみに、この植物は土の中の余分な塩分を吸収してくれるので
塩分過多な土壌における「クリーニングクロップ」として注目されてるそうですよ♪
☆★☆イネ☆★☆

イネだって、ちゃんと愛情込めて育ててますよ〜。
実は私の育ててるこのイネは遺伝子組換えイネ。
なので扱いに注意を払わなければいけないのです。
というのも、遺伝子組換え生物は、バイオハザードを防ぐために、研究のうえでガイドラインが設けられているから。
といっても、このイネはほとんど危険性のないレベルなんだけどね。
このようにちゃんときまりを守って実験してるので、「遺伝子組換え」にあまり過剰反応を示さないでもらいたいというのが研究者としてのホンネ…。
まあこの話はまた後ほど。
そんなこんなで、こうしていろんな植物に囲まれて
水をあげたり肥料をあげたりしてご機嫌をとりつつ過ごす毎日なのです。
