子供のころ。

母が園芸好きな人で、いつも家のどこかに緑があった。
マンションの狭いベランダの片隅にプランターを所狭しと並べ、いろんな花を育てていた記憶がある。

単なる観賞用の花を育ててただけじゃなくて

アサガオを植えて観察もしたし(観察日記はまさに三日坊主だったけど)
ヘチマを育ててタワシとかヘチマ水を作ったりもしたし
ワタの花からコットンをとったり

理科の実験的なこともたくさんやったなあ。
母が元・小学校教員だったことも影響しているのかもしれない。


ベランダだけではなく、台所にも植物はあふれていた。
「なんでも芽の出るものはとりあえず育ててみよう」という母の手にかかれば
たとえジャガイモのかけらやにんじんの切れ端であっても、立派なガーデニング(台所ニング?)の対象だったのだ。


子供のころの思い出は、いつも植物のある風景の中だ。



花も恥らう思春期のころ。

理科は1分野(物理化学系)よりも2分野(生物地学系)のほうが好きだった。

じかに手で触れることのできない現象を数式とかモデルで解明しようとする物理・化学よりも
実際に目で見て肌で感じることのできる生き物を扱う生物のほうが、はるかに私の興味をひいた。

「生きる」ということは当たり前のようでいて
でも実は結構複雑なメカニズムで成り立っているんだってことを学ぶのは、楽しかった。


そして決定打。
高校のとき、クラス編成で「物理」を選択するか「生物」を選択するかということになったのだが


物理教師がキライだった。


かといって生物教師が好きだったかと言われればとりたててそんなこともなかったのだが
ともかく「物理のセンセイが嫌いだから生物選択」というきわめて消極的な理由で、生物を選択することになたのだった。


環境問題とワタシ。

高校生物で、さまざまな環境問題について勉強した。
ちょうど私が中学にあがるころから高校時代にかけて、環境問題がいろいろ取り沙汰されていた時期だったのかもしれない。

ミーハーというか影響されやすいというか
まあそこで私はあっさりと

「環境問題を解決する学者になろう!」

と思ってしまったわけですよ。


当時の夢はとてつもなくでっかくて

「私が地球を救うんだー!」

なんてヒーローみたいなことを真剣に考えてました。


あの頃は砂漠の緑化や水質浄化とか、環境保全のことに興味があったな。


そして大学入学。

農学系のことがやりたくて
農学部のある大学を探してたら東大に行き着いてしまった。

駒場の頃の2年間は、ひたすら歌に夢中な毎日。
真剣に学問に励んだといえるのは、農学部に進学してからだったと思う。


いつの間にか、私の関心は「環境保全」から「食糧問題」にマイナーチェンジ。
「食」というのは生命活動の根幹であり、農学の真髄だものね。

ということで、2年生の進路振り分けのときには迷うことなく今の学科を選択しました。


私の今いる学科は、「生物学的な観点から農作物の収量向上を目指す」ということに重きをおいている(…んだったと思う)。

生物がわりと好き・植物が好き・食べることが大好きな私にしてみたら、もうここしかない!といった感じでした。
そんなわけで、これといって進路に悩むこともなく、無事に本郷弥生に進学したのです。


農学部にきてから。

頭と体を使って、本当の意味で「学んだ」といえるのがこの頃から。
カリキュラムは基本的に、講義・実験・実習の3本だてなんだけど
やはり実習で体を動かして学んだことが一番印象が強く、身についているんじゃないだろうか。

いや、講義もマジメに聴いてましたよ(コレは相当ホント)。
実験もマジメにやってましたよ(…まぁ、何回かサボったり、実験担当の某先生に思いっきり刃向かったりもしたけど…)


でもやっぱり、実習を通じて実地で学んだことが一番多くて、一番大事な気がする。


農場で田植えをしたり、野菜の世話をしたり、トラクターの運転したり。
果樹園で剪定をしたり。
そして農家で、農業の現場を体験したり。


あとオプション(?)として

昆虫採集
フラワーアレンジメント
ウシのお尻に腕をつっこむ
(ここまでは正規の実習内容だった。マジで)

それから
木登り
ハイジごっこ
脱走劇

…いろいろやったなあ…


そういえば



「プ○ダのバッグに米とイモとどんぐりを詰めて帰るようなやつはお前ぐらいだ」


と言われたのもこの頃でした。

まさか某ブランドバッグも、このような扱いをされることになるとは夢にも思うまい。


研究室配属

卒論の配属研究室を選ぶときも、さほど迷うことはなかったような気がする。
研究内容と研究室の雰囲気からして、「ここしかない!」と感じたから。

そして、そのインスピレーションを信じた選択は大正解だったと思う。


「食糧問題」に直結した研究テーマに取り組むことにとてもやりがいを感じるし
いつも身近に植物やら作物やらあるし。
かなり自由に、好きなことをやらせてもらっています。






こうやって振り返ってみると、今いる場所には来るべくして来たのかな、なんて思います。
子供の頃、植物に囲まれて暮らして
20年たった今もやっぱり植物に囲まれて暮らして。


「三つ子の魂百まで」、ってコトなんでしょうかね(笑)。