参加している合唱団の定期演奏会まで残すところあと3日。
…だというのにちょっぴり練習不足を感じる今日この頃。
なんだか、音楽の読み込みも足りてないなあ…

ということで、自分自身のお勉強のためにいろいろ書いてみました。
カッコつけだから、誰かに見られてるって意識がないとマジメにお勉強しないのよね(^^;)


Gabriel Urbain Faure(1845〜1924)は20世紀を代表するフランスの音楽家。
この「Requiem」は、相次いだ両親の死をきっかけに作曲されたと言われており、きわめて個人的な動機によるものだともいえます。

ちなみにブラームスや、近いところではJ.ラッターも肉親の死を契機に、またヴェルディも音楽の大家であるロッシーニの死を悼んで、レクイエムを作曲したそうです。
逆に「個人的でない」−委嘱を受けて作曲されたレクイエムといえばまず、モーツァルトのレクイエムが思い起こされます。
まああれも半ば個人的な感情に基づいて作曲されたといえるかもしれませんが。


あ、そうそう。
「Requiem」とは何ぞや?という方もいらっしゃると思います。

「Requiem」とは日本語では「死者のためのミサ」と言い表されます。
その名のとおり、亡くなった人物を追悼し、その魂が煉獄の責苦から救われ、安らかに天国に行くことができるようにと祈るものです。

だから。
「鎮魂歌」や「鎮魂ミサ」と訳すのは誤りです。
「鎮魂」というのは死者の荒ぶる魂を鎮める、ということ。
「Requiem」は死者の安息を願い、その死を契機として生の意味を再確認するためのものなのです。

どうして「Requiem」というのか。
それは、歌いだしが「Requiem aeterna(永遠の安息)〜」で始まるからです。
なんて安直な。

ミサやレクイエムの文章(典礼文)は決まっており、毎回毎回唱えられる「通常文」と、そのミサの性格によって変化する「固有文」があります。
仏教でいうところのお経みたいなものですね。え、そのたとえ、よくわかんない?
管理人は中学高校時代にしこたま仏教を叩き込まれましたからね(笑)

普通のミサ曲は、通常文の中で聖歌隊が歌うところが抜粋され、それに歌詞がつけられたもの。
一方「Requiem」ではそれに併せて固有文にも作曲されるほか、葬儀に関連して歌われるほかの聖歌も作曲されることもあります(例えばフォーレのレクイエムでは「Libera me」や「In Paradisum」がそう)。
だから「Requiem」は作曲者によって歌詞が微妙に違ってるのです。

フォーレのレクイエムには、「最後の審判」の恐ろしさを描いた部分(Sequenta)が取り入れられていません。
死後の裁きへの恐怖よりも、楽園での安息を願う想いが強調されており、全体を通して静謐さの漂う曲となっています。

それから、オーケストラのパート編成も特徴的です。
私も最初、あれ?と思ったのですが、通常のオーケストラでは、ヴァイオリンは2部編成なのに、この曲にはSecond ヴァイオリンがありません。
その代わりにヴィオラが2部編成となっています。
落ち着いた深みのある音色のヴィオラの層が厚くなっていることからも、この曲の包みこむような穏やかな雰囲気が生まれるのでしょうね。


■□■曲紹介■□■

1.Introit&Kyrie(入祭唱とキリエ)

管弦楽の力強いD音に続き、合唱がひそやかに「Requiem aeternam」と歌いだします。
パイプオルガンと弦楽器の深みのある旋律に続き、テノールのパートソロ。
静かに、ですが長いフレージングで神に対する祈りを歌います。
その後、明るい表情のソプラノパートソロに移ったのちffでTuttiへ。強い意志をもって「私の願いを聞き入れてください」と歌い上げます。
最後は甘く、表情豊かに「Kyrie eleison, Christe eleison(主よ、あわれんでください。キリストよ、あわれんでください)」と歌われ、静かな祈りをこめて曲が閉じられます。

Requiem aeternam dona eis, Domine,永遠の安息を彼らに与えてください、主よ。
et lux perpetua luceat eis.そして絶えざる光が彼らの上を照らしますように。
Te decet hymnus, Deus, in Sion,あなたに、神よ、シオンで賛美を捧げます。
et tibi reddetur votum in Jerusalem.エルサレムでは、あなたに献げ物を捧げます。
Exaudi orationem meam,どうか聞き入れてください、私の祈りを。
ad te omnis caro veniet.あなたのもとへ、全ての肉は至るでしょう。
Kyrie eleison.主よ、憐れんでください。
Christe eleison.キリストよ、憐れんでください。



2.Offertoire(奉献歌)

弦楽器とオルガンによる流れるような前奏。
ひと時の無音ののち、最初はアルトとテノールによる三度のカノンが歌われます。
のちにベースとヴァイオリンも加わって、神への祈りが歌われます。
そして、バリトンソロ。
柔らかいい旋律の中にも、真摯な祈りが込められているようです。最後は合唱が低声からだんだんと重なるように加わっていきます。
最後はソプラノを加えた四部合唱で最初の部分が再現され、静かな「Amen」で締めくくられます。

O Domine Jesu Christe, Rex gloriae,主イエス・キリスト、栄光の王よ
libera animas defunctorum死者の魂を
de poenis inferni,地獄の罰より救い出し、
et de profundo lacu.深い淵から救って下さい。
O Domine Jesu Christe, Rex gloriae,主イエス・キリスト、栄光の王よ
libera eas de pre leonis,彼らの魂を獅子の口から解き放ち、
ne absorbeat eas tartarus,冥府がその魂を飲み込むことなく
ne cadant in obscrum.その魂が闇に陥ることのないようにしてください。
Hostias et preces tibi, Domine,いけにえと祈りとを、主よ。
laudis offerimus.賛美のうちに、私たちは捧げます。
Tu suscipe pro animabus illis,彼らの魂のために、それを受け入れてください。
quarum hodie memoriam facimus 今日私たちの記念する、その魂のために。
Fac eas Domine,彼らの魂を、主よ。
de morte transire ad vitam,死から生へと移してください。
quam olom Abrahae promisisti,主がかつてアブラハムに約束し、
et semini ejus.そして彼の子孫にも約束した、その生へと。
Amen.アーメン。



3.Sanctus(聖なるかな)

オルガンの持続音にのって、ヴィオラとハープの分散和音が響きを作り上げ、まるで天上の雲の上を思わせるかのような前奏。
そしてソプラノと男声合唱が、互いに確かめ合うように歌い上げていきます。
曲は徐々に高揚していき、「Hosanna」で最高潮に
。これはイエス・キリストをエルサレムに迎えれたときの、人々の歓喜の声です。
しかしすぐにピアニッシモに落ち着き、静かに収束して終わります。
まさに、天国の世界がまぶたの裏に浮かぶような、美しい曲です。

Sanctus, Sanctus, Sanctus聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな
Dominus Deus Sabaoth.万軍の神である主。
Pleni sunt coeli et terra gloria tua.天と地は、主の栄光に満ち溢れる。
Hosanna in sxcelsis.いと高きところにはホザンナ。



4.Pie Jesus(憐れみ深いイエスよ)

ソプラノのよる独唱。
Adagioで、甘く慎ましやかに歌いあげられます。
決して声を荒げることのない、静かな、静かな祈りの曲です。
一筋の光が差し込む誰もいない教会の中で、敬虔な修道女が心穏やかに祈っているような、そんな曲。

Pie Jesu, Domine,いつくしみ深き主、イエスよ、
dona eis requiem,彼らに安息を与えてください。
sempiternam requiem.永遠の安息を与えてください。



5.Agnus Dei(神の子羊)

「神の子羊」とは、人々の罪を一身に引き受け犠牲となったイエス・キリストを、いけにえの子羊になぞらえています。
弦楽器が流れるような旋律を歌い、テノールの歌と弦楽器が対位して絡み合うように音楽が進行していきます。
どこか牧歌的な、素朴な印象を受けます。
しかし四部合唱になると曲の雰囲気は一転し、重く切実さをこめて、犠牲となったイエスへの祈りが捧げられます。
再びテノールによる歌声が起こり、不安定な和音が生じたそのとき、ソプラノによる「Lux(光)」の声。
そして四部合唱で「Lux aeterna luceat eis(永遠の光が彼らの上を照らしますように)」と歌われていくようすは、まさに暗闇の中に一筋の光が差し込み、そこから徐々にあたりが暖かい光に包み込まれていくようです。
そしてその光は強くなっていき合唱が最高潮に達すると、オーケストラによる力強いD音が鳴り響きます。
ここで第1曲目冒頭の「Requiem」の旋律が再現されます。
最後は弦楽器による素朴な演奏で、優しく静かに締めくくられます。

Agnus Dei, qui tollis peccata mundi,神の子羊、世の罪を除いて下さる主よ、
dona eis requiem.彼らに安息を与えてください。
Agnus Dei, qui tollis peccata mundi,神の子羊、世の罪を除いて下さる主よ、
dona eis requiem, sempiternam requiem.彼らに永遠の安息を与えてください。
Lux aeterna luceat eis, Domine,永遠の光が、主よ、彼らの上を照らしますように。
cum sanctis tuis in aeternum,あなたの聖徒たちとともに永遠にあらしめてください。
quia pius es.主は慈しみ深い方でいらっしゃいますので。
Requiem aeternam dona eis, Domine.永遠の安息を彼らに与えてください、主よ。
et lux perpetua luceat eis.そして絶えざる光が彼らの上を照らしますように。



6.Libera me(我をゆるしたまえ)

オルガンと低弦が、心臓の鼓動のような特徴的なリズムを保持する中で、バリトンソロが「Libera me (我をゆるしたまえ)」と最後の審判において死者の罪が許されることを切々と祈ります。
それに続き合唱が最後の審判の日へのおののきを歌います。
突如ホルンにより、最後の審判の日に到来する使者のラッパの音が表現されると、合唱が「Dies irae(怒りの日)」つまり最後の審判の恐ろしさを歌いますが、その中でも死者の安息が祈られます。
最後はティンパニによるリズムにのって合唱4パートが斉唱で「Libera me」と歌い、敬虔な祈りをもって曲は閉じられます。

Libera me, Domine de morte aeterna私を解放してください、主よ、永遠の死から。
in die illa tremenda,その恐ろしい日、
quando coeli movendi sunt et terra,天と地が震え動くその時、
dum veneris judicare主が来られて
saeculum per ignem.この世を火をもって裁かれるとき。
Tremens factus sum ego, et timeo,私は恐れ、そしておののきます。
dum discunssio venerit, atque venetura irae.来るべき裁きの時、来るべき怒りの時。
Dies illa, dies irae,その日こそ、怒りの日。
calamitatis et miseriae,災いの日、不幸の日。
dies illa, sies magna et amara valde.大いなる嘆きの日。
Requiem aeternam dona eis, Domine,永遠の安息を彼らに与えてください、主よ。
t lux perpetua luceat eis.そして絶えざる光が彼らの上を照らしますように。



7.In paradisum(天国にて)

死者の棺が墓地に運ばれる際に歌われる曲ですが、オルガンが天国での安らぎをその分散和音で表現しています。
ソプラノは楽園の乙女たちのごとく透明で清らかな旋律を歌い上げます。
最後は、ハープと合唱のこの上なく美しい響きの中で「aeternam habeas requiem(永遠の安息が得られますように)」という言葉で全曲が終わります。

In paradisum deducant te Angeli;天国に、天使たちがあなたを導いてくださいますように。
in tuo adventuあなたがそこへ着くとき
suscipiant te martyres,あなたを殉教者たちが出迎えて
et perducant teそしてあなたを連れて
in civitatem sanctam Jerusalem.聖なる都エルサレムの中へと導いてくださいますように。
Chorus Angelorum te suscipiant,天使の群れがあなたを出迎え
et cum Lazaro quondam paupere,かつて貧しかったラザロとともに
aeternam habeas requiem.あなたも永遠の安息を得ることができますように。