馬  名 斤量 騎 手 単勝 1976年11月14日
1 5 11 グリーングラス 57 安田富 52.5 5回京都4日目 第9競走
2 6 13 テンポイント 57 鹿戸明 9.9 第37回 菊花賞
3 3 7 トウショウボーイ 57 福永洋 1.8 芝3000m重 21頭
4 8 18 コーヨーチカラ 57 高橋成 81.7 R3.07.7 3.09.9(-2馬身1/2差)
5 1 1 タニノレオ 57 小谷内 58.0 単勝 5,250円 12番人気
6 4 8 クライムカイザー 57 加賀 4.2 枠連 8,030円 22番人気
7 7 15 サンダイモン 57 稲部 58.2 複勝 520円
8 7 17 フジノタイカン 57 清水出 172.4 300円
9 7 16 パッシングベンチャ 57 小野 25.9 130円
10 5 10 ケイシュウフォード 57 柴田人 46.1
11 2 6 ライバフット 57 中島啓 16.6
12 6 12 ハマノクラウド 57 小島貞 143.4
13 2 4 ニッポーキング 57 郷原 14.0
14 5 9 トウカンタケシバ 57 清水英 42.6
15 8 19 バンブーホマレ 57 佐藤正 115.3
16 8 20 ミヤジマレンゴ 57 武田 39.1
17 1 3 ホクトボーイ 57 久保敏 28.6
18 1 2 キングラナーク 57 岩元 283.7
19 2 5 フェアスポート 57 武 邦 17.3
20 6 14 タニノルーラー 57 鶴留 242.9
21 8 21 センターグッド 57 西浦 176.2


緑の覆面、伏兵グリーングラス
 一叩きして乗り込んだ菊花賞。クラシック獲得の最後のチャンスとなる。 京都競馬場での3000mの長丁場。 地元関西のレースだけにここはどうしても負けられない。 皐月賞馬トウショウボーイ・ダービー馬クライムカイザーが単枠指定でそれぞれ1.8倍と4.2倍人気。 テンポイントは両馬にぶっちぎられての3番人気(9.9倍)だった。
 各陣営も必勝の体制を築く。ライバルは当然2頭のGIホースだった。 福永洋一騎手の手綱で神戸新聞杯において当時としては驚異的だった芝2000mを1分58秒9という 時計で勝ったトウショウボーイ、加賀武見騎手の執念がここでも実るかクライムカイザー。 この2頭とテンポイントの夢の3強対決となるであろうというのが大方の予想だった。

 ゲートが開いて一番のスタートはテンポイント。無理せず好位に下げるとトウショウボーイが並びかける。 トウショウボーイとテンポイントが前方で差しつ差されつの競馬をし、加賀クライムカイザーはいつものように後方待機だ。 淡々とレースは進む。京都名物の坂を下って3コーナに入るとトウショウボーイが先頭をうかがう。 しかしいつもの切れがない。元々スピードの勝るトウショウボーイはスタミナに不安がある。 2周目3コーナーで、トウショウボーイはもがき苦しみ始める。 直線に入って末脚を伸ばそうとするが、あっという間にテンポイントが並びかける。 クライムカイザーは、馬群をさばくのに手間取ったのか突き抜ける位置ではない。 4コーナーを曲がって、直線。テンポイントはトウショウボーイを抑えて外を先頭で駈け抜ける。 トウショウボーイを抜き去った瞬間誰もが勝利を信じた。 「それ行けテンポイント、鞭など要らぬ、押せテンポイント」
 次の瞬間、最内をすくって突如伸びてきた緑色のメンコを着けた1頭の馬が、 見る見るうちにテンポイントに迫ってくるではないか。 その馬は、あっという間にテンポイントの夢を粉々に粉砕した。 テンポイントにこの馬をもう一度差し返すだけの余力は、もう残っていなかった。 突如現れたのは伏兵グリーングラスである。テンポイントは2着だった。 伏兵馬グリーングラスは関西の希望と期待を瞬く間に打ち破る存在としてクローズアップされたのである。

 このときの杉本氏の実況「鞭などいらぬ」はテンポイントの勝利を確信してのものではない。 外へよれたテンポイントに鹿戸騎手が内から鞭を入れたので、思わず出た言葉だったらしい。

 宿敵トウショウボーイには先着したものの、テンポイントはついにクラシック無冠に終わる。 この瞬間、世紀のTTG対決の幕は切って落とされたのである。
一介の条件馬だったグリーングラスは、新興の中野隆良厩舎に属していた。 当時は厩舎を引き継いだばかりの新米調教師だった。 この菊花賞にも実際のところは出走がかなり危ない状況だったが、どうにか抽選で滑り込んできた。
 テンポイントの高田オーナーは、レース後、誰もいなくなった淀の芝を歩い て一周し、勝負の冷酷さを噛みしめたということである。