寄り道エッセイ
大森居酒屋ストリート 第拾四巻
その40 ついつい…。
季節外れの牡蠣料理。
年に二度は貝に当たる私だが、ついつい注文してしまう‥、海のミルクに魅了された男の性である。
牡蠣と茄子のチリソース、牡蠣殻焼きが出てきたが、ちーーっとも美味しくない。
プリプリ感も、磯の香りも無く、ただ貝の屍(しかばね)が皿に転がっている感じだ。
折角の純米大神力が泣いている。
食材には必ず旬があり、昨今ではそれも無くなりつつあるものの、
牡蠣は冬場に食べるものだと自分に厳しく言い聞かせた。
最後に出てきた牡蠣フライは意外にも美味しく、おかわりしそうになってしまった。
居酒屋の中の懲りない面々ってところか。
その41 寿司 SUSI その1
真新しい寿司ダイニングがオープンしていた。
威勢のいい職人たちが、手早く海苔巻きやら創作料理やらを完成させていく。
最初は気合いの入った掛け声に畏縮してしまうものだが、
地酒を舐める頃にはそれも心地よく感じる様になる。
大きな蚫の殻にどっさり魚介が乗った海鮮グラタンは、下から火が当ててあり
グツグツと高温を保っている。
ソースが耳に跳ね、ムカッとするが、群馬の水芭蕉があまりに可愛いので許してしまった。
久しぶりに満点の鰺のなめろうをつっつき、大満足で店を出た。
寿司を食わずして寿司屋を語れない‥いやいや、もうそんな時代じゃないんだねぇ
その42 寿司 SUSI その2
恐るべし寿司ダイニング。
昨日来店したばかりなのに、今日も自然にこの店に吸い寄せられてしまった。
゛勝手寿司゛なる盛り合わせは軍艦一本、にぎり15種、いなり、玉子焼、
シジミが40コ入った至高スープと小ビール付で税込1000円と度胆を抜く安さである。
カウンターの中央で握る青年は今が旬の吉田秀彦似で、見惚れてしまう程キュート。
それでいてしっかり職人オーラが出ていて格好イイ。
帰りぎわ、ごちそう様で目が合い、会計時も、さらに出口の扉を閉める時も
キラキラした目と合い、深々とお辞儀をしてくれた。
寿司も旨いが、彼の瞳が最高に新鮮なネタだったなぁ。
まいった、まいった。