大森居酒屋ストリート 第二巻 第三巻へ
その4 徹してます
時代は変わろうとも店のスタンスを変えぬ居酒屋がある。
年季の入った狭い店内、接客はタメ口の中国人、お通しは柿ピー。
ただでさえ品数の多さに 圧倒されるのに、
隠れメニュー(お薦め)まで存在するから驚きだ。
豚足や手羽餃子の後に鰯の叩きがやって来た。
叩きのくせして切り身がデカイ。
こだわりなのか 怠慢なのか、ともかく鮮度がいいので文句は言えまい。
抜群の鰯には生姜醤油と日本酒に決まってる。たまらず古都桜を頼んだ。
大変バランスの良い旨い酒だ。
中国人の生意気な話っぷりも心地よく感じ出した頃眠くなってきた。また来よう。
その5 まだまだ健さんには・・・
大森一の焼鳥屋と謳われた名店に久しぶりに訪れた。
内装も外装もメニューも、恐らく従業員までも10年前とまるで変わらない。
頑固で一途な居酒屋業界の高倉健ってところか。
名物のつくねには軟骨が混ぜてあり当時はかなり衝撃的だった。
偉くなったらこの肉の塊を 死ぬ程食べる夢があったが、
一人二本限定は今も変わっていない。
親父を越えられぬ息子の心境になり歯痒い。
焼台の傍に陣取ってしまったのはボクが未熟な証だ。
常夏のカウンターで考え事なんてできる訳ない。東スポも読めない。
すると熱々の煮込みがやって来た。気絶しそうだ‥。
その6 〜なんだけどねぇ
大森には名店もあれば迷店もある。
外観は風情があり、美味い肴揃いの居酒屋と期待するが、大抵は裏切られる。
乱雑な店内、油汚れの凄まじい厨房、くわえ煙草のマスター。
違う意味で期待感が生まれてしまう店に吸い込まれてしまった。
まず、目の前で手洗いされた薄汚れた手ぬぐいを渡された。
まさかコレがおしぼりか?と失笑するとおばちゃんもニヤリとした。挑発的な店だ。
菊‥?という青森の酒を飲んだ。
辛口で飲みやすい良酒だ。
しかし良い肴が無い。
子は親を選べない‥酒も居酒屋を選べないって訳だ。
悲しみに暮れながら店を後にした。飲み直そう‥。