寄り道エッセイ
大森居酒屋ストリート 第弐五巻
その73 明日は?
ここ最近、金曜深夜に必ず訪れる居酒屋がある。
1リットルはあろう大生ビールを注文し、度胸があるところを周囲に見せ付け、
勢いよく半分まで飲むと、いつもの茄子ピリ炒めがやってくる。
ツナサラ、手羽先と順番どおり運ばれ、定石どおり二杯目に突入する。
テレビは決まって格闘番組が放映され、奥で店長が忙しそうにレジを打っている。
毎回同じツマミで、同じ風に酔っぱらう。
会計時、競馬予想を店長に聞くのが恒例で、コレがなかなか当たる。
ゆえに、ここでのやりとりが翌日の迷いにも繋がる。自分を信じるか、彼を信じるか。
その迷いおかげで、いつも馬券は買わなくて済む訳だ。
その74 はわぁいの味覚-1
オープンしたてのハワイ系創作居酒屋に訪れた。
清潔感のあるおばさんが店頭で迎えてくれ、静かな応対が何とも好印象だ。
琥珀色のハワイ地麦酒tsunamiを飲むと、フルーティな香りと嫌味の無い喉ごしで、
ワイキキのビーチサイドでバカンスしている気分になる。
蟹身とアボガドの磯辺タルタル焼きは、
複雑な味のくせに味覚のバランスが整っている傑作料理である。
奥の松を傾けながら、懸命に料理を解体してみる。
が、どのように調理したのか皆目見当が付かない。
諦めてカリフォルニアのカベルネを飲み込むと、この料理と抜群に合う事を発見し、
それだけで救われた気分になった。たまにはワインも悪くない。
その75 はわぁいの味覚-2
魚料理の次は肉料理がやってくる。ミディアムに焼き上げられた多量のフィレ肉を見て、
ハワイはアメリカなんだと当たり前の事に気付く。
締めで登場したのが名物の創作寿司。
アボガド、鮪、サーモン等がぐるりと逆巻きされたレインボーロールは、想像を絶する美味さで、
逆輸入した日本製品が、進化を遂げて帰ってきたようで、
悔しいやら嬉しいやら、微妙な心境になった。
アロハを着込んだオーナーらしき米人が馴々しく声を掛けてきたので、少し気分が悪くなったが、
安保を結んでいる以上、彼らとは仲良くやらねばなるまい。
小市民ができる外交といったら、これぐらいの事なんだよなぁ〜。