barcy - ishibashi  Present's

        寄り道エッセイ

大森居酒屋ストリート  第弐六巻


  その76 韓国のドブロクっす!
 

  大森一有名な韓国料理屋に訪れた。
  昔はレンタルビデオ屋だったこの場所が、高級飲食店に様変わりしたので、
  地元人からすると若干イメージが悪い。

  初めて扉をくぐると綺麗なテーブリが並び、奥からいい匂いが立ちこめてくる。
  当然ビデオも見当たらないし、不信感はアッと言う間に何処へ消えてった。

  牡蠣の塩辛はチョイ辛の塩漬けで、日本酒の肴に相応しそうだ。
  しかしワールドクラスの酒飲みはマッコリを選ぶ。

  シブイ料理にまったりと甘いマッコリは実に相性がよく、
  野口五郎と三井ゆりの異次元カップルが、何故かうまくやっている、という様な感じか。
  相性とは実に不可解でむつかしいものだ
 


     その77 余計なトコみちゃったな

      知人から豪勢なきりたんぽ鍋セットを頂戴した。
      たっぷりの比内鶏とセリ、ゴボウ等の野菜、さらには特製比内スープまで付いている。

      この鍋に合わせようと、冷蔵庫から秋田の由利正宗山廃古酒を取り出した。
      実に癖のある偏屈親父の様な酒なのなのだが、同郷の極上鶏を前にすると、
      その頑固味が緩和され、驚くほど優しい味になった。

      最後にきりたんぽを投入し、出汁を含み軟らかくなった所を、ペロリと頂く。
      さすがに比内鶏のスープだと絶賛したが、
      容器裏の内容量を見たら、ポークエキスと明記してあり消沈した。
      知らなければ幸せだった事って、世の中には溢れているものだ。    



 

その78 銘酒深慮あり

 遥か新潟・村上でも飲めなかった〆張鶴の最高峰酒「金」を見付け、恐る恐る注文した。
 ワイングラスに少しだけ注がれた金をじっくりと目で犯し、
 唾液が溜まったところで啜ってみた。

 焼酎を思わせる太く分厚い味なのだが、その癖アッと言う間に消えていった。
 これで1500円か‥。居酒屋で初めて徒然草が頭を過った。

 お調子者の店員が、八海山の高いヤツを勧めてきた。
 何処からどう見ても金持ちに見えぬ私に、高級酒を勧める彼の気が知れないが、
 悪い気はしない。

 翠露に持ち換え口に含むと、
 その強烈な苦みが親父に説教されているみたいで、ひどく落ち込んでしまった。
 


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