第弐八巻 

  その82 禁断のプレー?

  伝説的に旨い゛砂肝の唐揚げ゛を食べさせてくれる居酒屋がある。

  およそ二年ぶりに訪れ、メニューも見ずに注文すると、かつてとまるで同じ盛り付けでやってきた。
  甘酸っぱいタレにドサリと一味と葱がのる。
  上品さには欠けるが、味覚追求型の肴としたら最高ランクの旨さだ。

  瓶ビールをグラスに半分注ぎ、上から黒を被せ、自分好みのハーフを作り、コリコリと砂肝を喰う。
  淡麗の越の能鷹を飲み、コリコリする。
  虫歯だらけの酒飲みに、この砂肝プレイは拷問なのだが、一度食べたら止められない。

  やっと食べ終わったと思ったら、勢いで注文してたナマコ酢が現れ、
  また1からコリコリする羽目になった。
 


  その83 身の丈(たけ)

 平和島で温泉に浸かり、程よい疲労感を覚えつつ居酒屋に向った。

 すっかり湯冷めしてしまった体を、初孫゛魔斬り゛の熱燗で温め直す。
 無口な田舎の青年の様な初孫が、燗にすると、甘味やら苦みやら、得体の知れない味が暴発してきて、
 泣かせたら喧嘩が強くなる子供のようだ。

 全身が気持ち良く温まった所で、皮ハギ活造りと酒盗がやってきた。
 新鮮な皮ハギにたっぷりの肝を絡ませ口に放り込むと、あまりの贅沢さに王様になった気分になる。

 今夜の豊盃は出来の良い召使いの様だ。
 大衆的なカツオ酒盗で我に返り、このチープな肴が私には合っている、と身の程を知った。
 


 その84 軍配は…

 昨今では、お洒落な空間で地酒を傾ける事ができるようになった。
 雰囲気重視の暗い店内で、丸見えのキッチンだけが、眩しいくらいに照明が当たっている。

 胃腸の弱ってる私は、直ぐには地酒に手を出さず、上善エメラルドなる日本酒カクテルを注文した。
 橙色とブルーの液体がライトで照らされ、男と言えどウットリしてしまう。
 これぞ上善゛夢の如し゛だ。
 歓びの泉、義侠、東一の利き酒セットで飲み比べると、どれも旨く、
 千秋楽で三つ巴決戦になる緊張感が過った。

 全身を磨ぎ澄まし、酒からのメッセージを感じ取ろうとする。
 気が付くと東一が最初に底を突き、僅差の判定勝ちといったところか。
 


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barcy-ishibashi  2003