| その88 神が舞い降りた |
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九州・門司の住宅街に、凄腕の料理人のお店がある。 四年に一度の料理オリンピックの金メダリストで、 和洋中すべてを網羅したキッチンマスターがそこにいた。 カウンターに一人陣取り、緊張感みなぎる調理場のプレッシャーを感じながら料理を待つ。
口に含むと、バターの香りが鼻を抜け、雲の中を散歩している様な幸せな気分になった。
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| その89 いつもの顔が…1 |
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行きつけの安居酒屋の店長が入院した。 無愛想な青白い顔をした従業員が、代わりにホールを切り盛りしている。
あの赤い顔をした店長の時は「これでもか!」ってぐらいに天高い荘厳なサラダが、
また一つ、大森から心のオアシスが消えてしまうのだと、肩を落し家路についた。
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| その90 いつもの顔が…2 |
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赤い顔をした店長がいなくなって、二週間が経った。 彼はいったい何処へ‥なんて考えつつ、最後のチャンスをその居酒屋に与える事にした。 また青白い無愛想男がいたら、或いはチンケなサラダがやってきたら二度と訪れまい。
「いらっしゃ〜い!」 長いカウンターの奥から、病み上がりの店長の元気な掛け声が響き渡った。
酒が良かろうが、つまみが良かろうが、要は人なんだ。
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