| その94 2月のある日 |
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黒龍のきき猪口に入ったチョコを目の当たりにし、 地酒の新しい売り方だと驚愕して、仲良しの酒蔵さんにメールを送った。 彼はこの情報にとても喜んでくれた様子なのだが
翌朝、江戸っ子の粋な気遣いを見せようと菓子屋に走り、内緒でチョコを送り付けた。
数日後、彼の元から感謝のお手紙とお酒が送られてきた。
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| その95 旨くまとまりました。 |
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超満員の店内、カウンターに一つだけ空席があり、肩を狭め、なんとか居場所を確保した。 きき酒セットを注文すると飛露喜の新酒が出てきた。
隣で一人鍋をしているリーマンが、煮えたぎるうどんと不気味に会話をしていて煩いのだが、
季節も終ろう牡蠣の酢醤油漬けに早瀬浦を合わせ、締めに船場汁。
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| その96 静かなる酒 |
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カウンターに座ると、マスターの後ろに巨大な冷蔵庫があるのを確認した。 十四代ら有名なモノから、知らぬ銘柄まで、恐ろしい程のラインナップで、 酒飲みにとっては言わばディズニーランドの様な夢見心地空間だ。 まずはと鍋島の濁りを注文すると、アラ汁と姫皮の鰹和えが御通しで出てきた。
鍋島は猛将で知られる直茂のような味を想像していたが、むしろ僧侶のような静寂感があり、
佐久の花、風の森と自然の恵み的癒し酒を飲み干し、生きる活力を頂戴した。
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