| その109 グラスの摩天楼-1 |
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こんなに豊かな気持ちにさせてもらったのは初めてかも知れない。 居酒屋の帰り道、つくづくそう思った。 梅錦の地ビールから始まり、武蔵臥龍、宝剣、鳥海山、最上川、鷹長‥
ふと、テーブルを見渡すと、使用済みのグラスが沢山並んでいる事に気付いた。
色とりどりの切子がずらりと並ぶと、上空から眺めるマンハッタンの夜景の様で、
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| その110 グラスの摩天楼-2 |
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目の前からマンハッタンが消えると、スマートなワイングラスを差し出された。 高級なリーデル社のグラスは、奥様が一つしか持っていない宝物。 けれど「使ってみて」と笑顔で勧めてくれた。 酸味が素敵な池月が、香りが立ちこめゴージャスな酒に変貌した。
少し歩いた所でお店を振り返ると、遠くから深くお辞儀をしてくれてる奥様が立っていた。
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| その111 こりゃ満点! |
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親方は車で颯爽と現れ、少し遅れて調理場に立つ。 前掛けをギュッと絞め、看板メニューの天麩羅に早速取り掛かった。
挨拶代わりの激ウマ海老天の奇襲にやられ、客なのに親方のしもべ化してしまいそうだ。
新筍、小鮎、フキノトウ‥次々と粋な天麩羅が並び、塩やら天だしやらで食べ比べる。
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