barcy - ishibashi  Present's

        寄り道エッセイ

大森居酒屋ストリート  第四巻
 


その10 ワールドカップ前夜(番外編)
 

  居酒屋の実力を知る上で共通のメニューを注文する事は重要な作業である。
  あれば必ず頼むつまみ、それはキムチ炒め或いはキムチ炒飯だ。

  若者の町下北沢で至高のキムチャに遭遇した。まるで赤い糸で繋がった二人の様に‥。
  今宵は珍しく一の蔵すず音から黒龍へと下北っぽい継投策。
  鮪竜田揚げや合鴨サラダが素晴らしい脇役を演じている。

  ふと周りを見渡すと、若者たちが何かを貪り喰っている。フフッ・・アレか‥。
  男は黙ってキムチチャーハンだ!
  ホクホクの日本米がオレンジ色のコリアンキムチで化粧をしている。
  猫舌である事も忘れ、ひたすら口に放り込む。

  日韓共催の成功を祈り夜空を仰いだ。
 


     その11 個性と才能と
 

       熱心な居酒屋は地酒の会を開く。
       日本酒の楽しさ、美味しさを広く認識してもらう為だ。
       儲けも出ないのに一生懸命お酒を仕入れ、肴を仕込む店員さんには頭が下がる思いである。

       初めて口にした天狗舞山廃純米大吟醸は
       ホリが深くて美しい、華やかで気高い、まるでベッカムの様だ。
       それに対して早瀬浦山廃は闘将ジダン

       女性にキャーキャー言われている天狗舞に見向きもせず私は早瀬浦をヤる。
       大ぶりの湯引き鱧を頬張り、早瀬浦。
       鮎のフリッターや鱸唐揚げを食べ、透かさず早瀬浦。まさに司令塔だ。

       中田よ、稲本よ。君達はどんな酒なんだい?
       私は菊姫を目指そう。
 


  その12 改めて感じる事。それは・・・
 

  鰻重‥。日本にこれ程贅沢な丼?はない。
  老舗の鰻屋でビールと鰻重。初夏を迎えた大森の最高の贅沢空間である。
  肉厚の鰻に箸を入れるとホロリと身が崩れ落ち、重箱の底まで自然に箸が沈んでいく。
  シャリと鰻が同じ堅さに仕上げられているから口の中で上手く絡み合う。

  ジャックとローズが手を組み合い、クルクル回っているシーンを思い出した。(タイタニックより)

     幸せだ‥。

  鰹のしっかり利いた肝吸も抜かりは無い。
  シコシコの肝を噛み締めながら、コイツを甘辛く山椒煮にして酒のアテにしたいなんて考えてしまう。
  義侠にするか、月の輪にするか。
  日本は平和だなぁ‥。
 
 


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