barcy - ishibashi  Present's

        寄り道エッセイ

大森居酒屋ストリート  第六巻



その16 行こか戻ろか
 

 大森から首都圏へ打って出る居酒屋もあるがその逆も多い。
 居酒屋の飽和状態が続くこの町に新たにオープンする意気込みは素晴らしい。

 魚介類10数種と比内鶏を扱う今時の海鮮居酒屋は大混雑。腰を下ろし、おもむろにメニューを開くと、
 まずこの界隈では見掛けない銘酒尾瀬の雪どけがあり驚きだ。
 華やかな雪解け水の香りに包まれ、天豆の房のベットに横たわる様な優雅な時である。

 次に重戦車不老泉山廃がやって来た。
 比内レバー串焼きとも相性がいいが、隣テーブルのキンキの煮付けと合いそうだ。
 注文するか否か、財布と小田原評定するのもよき肴なり。
 


     その17 泣いたー・・・(番外編) 
 

      大井競馬場。地方競馬の中心的存在であり、その規模、集客力は群を抜く。
      6日連続開催の最終日にしか食べられぬ逸品が煮込みだ。

      カップルや家族連れ、若造が集まるエリアを大きく反れ、いわゆるオヤジゾーンの片隅で
      いつも私を待っている。
      1日目では味が含まず、ずっと同じ鍋で煮込まれたモツはたいへん柔らかくジューシー。
      薄っぺらい蒟蒻やぶつ切りの生姜、ザク切りの青葱の上に豪快に七味をぶっかける。
      紙コップのビールが泣ける程美味い。

      しかし幸せは長くは続かない。
      今夜も馬にも騎手にも裏切られ、信じられるのは煮込みとおばちゃんの笑顔だけになってしまった。
 


  その18 夢見心地なんです。
 

  かきあげパスタ。
  一見無謀とも思われるパスタをランチで注文してしまった。

  茹でたて麺の上に玉葱のかき揚げ、和風あんに針海苔がトッピングされている。
  斬新で意外にも美味しく、どこか懐かしさを感じる逸品に感激し、夜営業で酒を飲みたいと心踊らせた。
  夜はこだわり焼酎と創作料理がメインだ。

  ドイツビールで心と喉を潤し、酔鯨でテンションを上げ、いよいよ焼酎の出番だ。
  千年の眠りは香りが高く上品なウイスキー。

  静寂の湖畔で樋口可奈子と口づけ‥スーッと伸びゆく余韻が極上の女優の色気を感じてしまう。
  金の露なる焼酎は甘〜く、癒し系アイドルか。今夜も浮気をしてしまった。
 
 


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