■おかずの基本

まず始めに、おかずの基本である煮る料理と炒める料理に挑戦してみましょう。これらの料理は、鍋やフライパンなどの一般的な調理器具さえあれば簡単な手順でできるのですが、工夫次第で飽きることなく食べられる意外に奥の深い料理です。末永く自炊でまかなおうと考えてる人は、ぜひ極めてみましょう。

■おふくろの味〜煮物

おふくろの味の代名詞といわれる煮物は、調理過程で幾つかのパターンに分かれますが、ひとまず僕がよくつくる材料を水から煮込んでいくものと炒めてから煮込んでいくものを紹介したいと思います。他には材料を揚げてから煮るいわゆる南蛮煮などがありますが、手間を考えると初心者が挑戦するメリットは少ないと思います。そんなわけで、その他のパターンに挑戦したい人は、まずここに挙げた2つのパターンで基本を学んでから挑んでみましょう。

道具:
水から煮る場合も炒めてから煮る場合もだいたい共通で、深めの鍋、おたま、煮物を盛る器です。

1.水から煮る煮物

この煮物の特徴は、まず油を使っていないため味が比較的あっさりしている事です。そのためだしの味を強く出したい煮物(味噌汁やうどんのつゆ、青菜を使った煮びたし等)に向いています。また、同じ材料を使って炒めてから煮る場合よりもカロリーが低い事も特徴です。よってダイエット中の人に向いていると思います。あと他には洗い物が比較的楽である事なんかも挙げられます。ここでは例として、味付けは基本的な醤油味(醤油おたま半分、砂糖ティースプーン1杯分くらい、日本酒適量)で、材料は一般的で安くて手間のかからないものを用いた作り方を示します。

材料:
ジャガイモ一個、にんじん指三本分くらい、薄切り豚肉80gくらい、玉ねぎ半分、昆布3cm四方くらいを用います。
手順:
  1. ジャガイモとにんじんは皮をむいて一口大に切り、昆布はそのままで鍋に入れます。
  2. 鍋にジャガイモとにんじんが隠れるくらい水を入れて、コンロに置き火にかけます。
  3. 鍋に、砂糖をティースプーン1杯分くらい、日本酒適当を入れます。
  4. 玉ねぎを適当な大きさに切り、鍋に入れます。玉ねぎの残りはラップでくるんで冷蔵庫に入れて2、3日以内に使い切った方がいいです。
  5. 鍋が沸騰したら昆布を取り去って、適当に切った薄切り豚肉を入れます。
  6. わいてきたあくをおたまで取って、醤油をお玉に半分くらい入れます。
  7. ジャガイモとにんじんに火が通ったらできあがりです。

コツというほどの事は特にありませんが、味を染みさせた煮物が好きな場合は、イモとにんじんに火が通ったところで1回火を止めて煮汁をさますと味が良く染みます。これは造りだめをした場合なんかに非常に有効です。それと取ってしまった昆布は刻んであえ物に入れたりして有効利用しましょう。もちろんそのまま食べてもOKです。
注意する点としては、厚切りの肉を用いる場合は必ず鍋の中身が沸騰した状態で入れる事です。そうすると味が抜けてパサパサという状態にはなりにくいと思います。それに対してイモなどの火が通りにくい材料は、水から入れるとうまく火がとおり煮崩れもしにくい所もポイントです。

2.炒めてから煮る煮物

最初に油をしいて材料を炒めてから煮ると、水から煮た場合と比べてコクのある煮物になります。よってコッテリした味わいが欲しい時や、味にボリューム感をだしたいときに向いています。実際は濃い味の煮物、中華風にあんを使った煮物(麻婆豆腐や海老チリ等)などは炒めてから煮る場合が多いみたいです。
他にも、大きな肉を煮たい時うまみを中に閉じ込めるためや、煮汁を飛ばしたい時にあらかじめ炒める事が有ります。例としての作り方は、味付けや道具、材料は水から煮た場合とほとんど同様にし、作り方の手順の違いを見てもらおうと思います。

材料:
にんにく1かけ、玉ねぎ半分、挽肉50gぐらい、ジャガイモ1個、にんじん指3本分くらい、しめじ1/3パック、昆布3cm四方くらいを使います。
手順:
  1. 玉ねぎは扇型に切り、にんにくは包丁の背でつぶしておきます。しめじは適当に裂いておき、他の材料は水から煮る場合と同様に一口大に切っておきます。
  2. 鍋をコンロに置いて、火にかけます。適当に温まったらサラダ油をカレースプーン1杯くらい垂らします。
  3. サラダ油が温まったと思ったら、挽肉を入れて木のしゃもじを使ってボロボロになるまで炒めます。
  4. 挽肉の色が茶色に変わったら先ほど切ったにんにく、玉ねぎを入れて炒めます。
  5. 玉ねぎが透き通ってしんなりしてきたら鍋に日本酒お玉に半分くらい入れます。この時ジューという音がして水蒸気がどっと出るので、火傷に注意しましょう。
  6. 入れた日本酒が沸騰してきたら残りの材料である昆布、ジャガイモ、にんじん、しめじを入れ、水を材料が浸かるくらい鍋に入れ、砂糖をティースプーン1杯分くらい入れます。
  7. 続きの作業は水から煮る場合と同じで良いです。

注意する点としては、まず肉はしっかり炒める事です。そうする事で、肉の中のうまみが逃げないしまた香ばしい風味が出て美味しくなります。また、油を使っている場合は比較的あくが多く出るので、あくをしっかり取る事も重要です。味を整えるという理由の他に、あくを取る事で不要な油を減らし、ヘルシーな煮物にできるという事も理由の一つです。

これらの煮物に使える素材を羅列しておきますと、芋類は里芋、サツマイモ、あと芋ではありませんが扱いが同じ(=水から煮る)物としてかぼちゃが有ります。これらの内、特にかぼちゃとサツマイモは甘目の味付けがあってると思います。
その他に鍋の中身が沸騰してから入れた方が良いものとしては、きのこ類(しめじ、椎茸、えのきだけ、ひらたけ、まいたけなど)、ネギ、白菜、豆腐、油揚げ、にんにくの芽、しらたき、こんにゃく、さやいんげん、さやえんどう、ホウレンソウ、三つ葉などが有ります。これらのうち後ろの4つは料理ができる寸前に入れると色が悪くなりません。また、これらとこんにゃくはあくがよく出るので、あらかじめ下茹でしておいた方が良いと思います。
また味付けの面では、醤油や砂糖の種類を変えてみたり、みりんや味噌、酢を使ってみたり、トウバンジャンや梅肉などのアクセントをつけたりしてバリエーションをつける事も可能です。ある意味ここしか工夫することがないともいえるので、味付けは各自でいろいろ試してみて自分の中でお気に入りを見つけてみましょう。

■鉄人の炒め物

炒め物というと、一般的には一人暮らしの男の料理というイメージが強いかもしれません。確かに、材料を切ってフライパンでサッと炒めるだけといく手間のかからなさは、料理が面倒くさい人にとっては魅力的です。しかし、ある程度美味しく作ろうとすると、意外に難しい調理方法でもあります。そういうわけで、ここでは簡単かつ安く、美味しく作る炒め物について考えていきたいと思います。

道具:

1.ガスコンロ
まずとにかく、これが必要です。なるべく火力の強い(3500kcal程度)方が良いのですが、一人暮らしの場合2000〜2500kcal程度の火力しか期待できないので、これはあまり高望みはしない方が良いかも知れません。あくまで出来れば火力の強い方が良いという話です。ちなみに、電気コンロでも何とかならないことはないですが、ある程度美味しく作るにはかなりの工夫が必要です。これに関しては後で述べます。
2.フライパン、中華鍋
それから、炒めるための鍋が必要です。安くて使いやすい物を求めるなら、テフロンのフライパンがお勧めです。そのメリットは日ごろの手入れが簡単という所で、たいていの場合は使い終わった後お湯(もしくは水)でサッと流して布巾で拭くだけで良いです。注意点としては、専用のへらや菜箸を使わなかったり鍋を加熱しすぎたり(例えば強火で炒めたり空焼きしたり)すると、テフロン塗装がはがれるという事です。特に強火で加熱できないという点は、本格的な味を求める場合にかなりの障害になるので、強火で使いたい場合(もしくは家に火力の強いコンロがある場合)はテフロン加工のしてある物はやめた方が良いと思います。
もし本格的な味を求めるのなら、中華鍋や鉄製のフライパンにしましょう。これらの鍋は扱いが大変ですが、その分荒っぽく扱っても自分で何とかなるのが良い所です。つまり強い火力であぶっても、お手入れ次第で元どおりに使えるようになるって事です。
そうすると、その大変な扱いって何だ?という事になるわけですが、慣れてしまえば実はそう大変な事でもないです。具体的には、まず鍋を購入したらしっかり空焼き(鍋に何も入れずに火にあぶる)して、水でサッと流してたわし&洗剤でごしごし洗っちゃいましょう。こうする事で最初に塗ってある防錆剤を取る事が出来ます。その後、ネギの青い所やキャベツの外葉などの要らないくず野菜をたっぷりの油でじっくり炒めます。その時同時にやかんでお湯を沸かしておきます。それである程度(くず野菜が真っ黒にならない程度)炒めたら野菜を捨てて油を簡単に拭いた後に、沸かしたお湯を一気に鍋にかけます。それで、中のお湯を捨てティッシュなどで鍋をじっくり拭きます。こうすると、鍋の表面に油膜が張って炒めてる素材が鍋に引っ付かなくなります。鉄鍋を購入した時は、必ずこの作業を必ずやった方が良いみたいです。
それでいつものお手入れですが、基本的にはテフロン製フライパンと同じく、炒め終わった後素早くお湯で流してティッシュなどで拭きましょう。ただ焦げ付きが酷い場合は、購入した時と同じくたわし&洗剤でしっかり洗って、くず野菜を炒めて油膜を作り直しましょう。そうする事で元どおり使えるようになります。
ちなみに中華鍋と鉄製フライパンの違いですが、中華鍋は底が丸いのでいわゆる焼き物(ソテーとか)が苦手です。その代わり煮物や揚げ物などにも幅広く使えるので、中華や和風料理が好きな人は向いてるかもしれません。これに対してフライパンはソテーなどの焼き物には向いてますが、底が平たいため煮物や揚げ物には向いていません。よって基本的に炒め物とソテーにしか向いてません。自分がどっちを選ぶかは完全に好みになるでしょうが、どっちの料理をより頻繁にやるかで分けるのが一番いい方法だと思います。
3.菜箸(長い箸)、中華おたま
炒める時、素材を混ぜるのに使う物です。普通の箸を使ってもいい事はいいのですが、特に炒め物の場合は油がはねるので、普通の箸だと火傷を負う危険を覚悟しなくてはなりません。また中華鍋の場合は、素材を混ぜるのに柄の長い中華料理用のおたまを使う事が多いです。この道具メリットはよく分かりませんが、おそらく中華風の炒め物はスープなどを一緒に入れる事が多いので、菜箸だけではうまく混ぜる事が出来ないからだと思います。よって普通に炒め物を作るのであれば、菜箸があれば事足りると思います。

材料:

薄切りの豚肉100gくらいをメインとして、具の野菜にはキャベツ(大葉1枚)、椎茸(2個)、にんじん(太い所3cmくらい)、香味野菜はにんにく(1かけ)、生姜(スライス1枚)、玉ねぎ(半分)を使います。
味付けは味噌味にするので、味噌(カレースプーン1杯)、日本酒(カレースプーン1杯)、砂糖(ティースプーン1杯)、鶏がらスープの素(ティースプーン1杯)、トウバンジャン(ティースプーン半分)を用意します。その他に、炒め油としてサラダ油(もしくはごま油)を用意しておきましょう。

手順:

  1. 最初に肉に下味をつけます。面倒な時はこの行程を省いてもいいのですが、これをやるとやらないとでは肉の味にかなり差がつきます。そんな訳で、余裕がある時はなるだけやりましょう。
    まず、肉を一口大に切りお茶碗のような底の深い器に入れます。この器に味付け用の調味料の味噌、日本酒、砂糖、トウバンジャンを上に書いた分量だけ入れ、充分かき混ぜてから味が染み込むようによく揉み込みます。それが終わったら、10分以上放っておきます。
  2. 次に残りの材料を切ります。キャベツは芯の部分を切り離し、葉っぱの部分を約3cm平方のざく切りに、芯は適当に切っておきます。椎茸はいしづきの部分を切って、かさを厚さ1cmくらいに切ります。にんじんは、皮をむいて厚さ0.5cmくらいの半月切りにします。香味野菜の方は、玉ねぎを8等分に切り、にんにくと生姜は千切りにします。
    炒め物をする場合の切り方のポイントは、火の通り具合を均一にした方が味にムラが無くなるので各材料の大きさはだいたい同じくらいに切るという事です。また、味を上手く絡ませたい時などは素材を小さ目に切るのがいいです。
  3. それではいよいよ加熱です。まず鍋を火にかけ、あらかじめよく熱しておきます。ただし、テフロン加工のしてある鍋にはこの作業はしてはいけません。
  4. 鍋が熱くなったら、鍋にサラダ油をカレースプーン1杯くらい入れましょう。すると油がさらさらしてちょっと煙が出てくると思います。もし油がドロッとしてたりする場合はまだ鍋が温まっていないので、そのまま火にかけて鍋を熱しつづけましょう。また、煙がどんどん出る場合はいったん火を止めて、少し鍋を冷やしてからもう一度熱しましょう。
  5. 熱さがちょうどいい頃合いになったら、材料を入れていきます。まず玉ねぎを除く香味野菜を、用意した分量の半分くらい入れます。こうしてまず香味野菜の香りを油に移します。そして香味野菜がこげる前に下味付けをした豚肉を水気を切って入れ、よく炒めます。
  6. 肉の赤みが無くなったら、残りの野菜をにんじん、玉ねぎ、椎茸、キャベツの順に入れていきよく炒めます。最後に入れたキャベツの色が透き通ってきたら、残った香味野菜を入れ下味付けに使った調味料の残り(お茶椀に入ってたやつ)を全部鍋に入れます。
  7. 材料が調味料と良く絡まったら、コンロの火を止めて手早く盛り付けます。これで完成。

簡単なポイントだけ書き出すと、

  • あらかじめ鍋をよく熱しておく事(炒めてるときも常に強火を保つ)
  • 素材は、鍋を火にかける前に全部切っておく。
  • 炒める順番は肉→香味野菜→根菜類→きのこ類→葉っぱ物(青菜類)と火が通りにくい物から。
  • 味付け調味料は、あらかじめ混ぜておき一気に加える。

という感じになります。これだけを守っていれば、だいたいどんな炒め物についても美味しく作る事が出来ます。その他のコツについては後述します。

※電気コンロで炒め物を作ろうとする場合

電気コンロしかない家で炒め物を作るのは、一般的に無謀と言われています。その理由は、やはり火力が限定されている事です。そこで、その不足した火力を補うために工夫をしてみましょう。
普通のガスコンロで炒め物を作る場合と同じく、基本はあらかじめ鍋に熱を貯えておく事です。したがってテフロン加工のフライパンのように高熱に弱い鍋は、電気コンロで炒め物を作るのに向いていません。この場合厚手の鉄製のフライパンがベストと言えます。中華鍋でも悪くはないのですが、熱を多く貯えるのに底が丸い中華鍋は効率的とは言えないので、底の平たいフライパンを挙げてみました。ただ電気コンロの宿命として、直接炎が出ない事が挙げられます。炒め物に上達してくると、素材を大きくあおって直接火であぶる事になってくるので、炎が出ないと言う事実は大きなマイナスポイントになります。この事による影響は素人レベルではあまり出ませんが、ある程度上手くなってくると物足りない(味が水っぽくなる)と思うかもせれません。まあそこまで上達すれば、ガスコンロを買って作るのも可能だと思うので現実的には問題はないと思いますがね。
そんな訳で、電気コンロで炒め物を作のをあきらめてた人は、ここに書いてある内容を実行してもらえると嬉しいです。