■フライパン焼きのススメ

フライパンで加熱調理する方法として、炒め物のほかにいわゆるソテーという調理法があります。これは要するに油などをひいて大きく切った素材を焼く、いわゆるステーキみたいな調理法方法です。特徴として、見た目の派手さに比べて加熱の手順自体は簡単なので、初心者にもむいていますし、下ごしらえと味付けを変えればいろいろなバリエーションを楽しめるたりします。特に料理をしない人にとってはものすごく難しそうな料理に見える事もあるそうなので、ミーハーな自炊初心者もそうでない人もぜひ挑戦してみましょう。

■素材別攻略

ここでは肉、魚などを素材とした場合の下ごしらえや味付けのコツついて書いていこうと思います。これらの素材は、初心者編で書いた目玉焼きと違って火のとおりも悪く、また臭みがあるのでちょっとした工夫が必要です。あと肉と魚はあらかじめ味付けをした方が美味しい所も注意が必要です。

1.素材の種類について(肉編)

まず肉の種類について考えていこうと思います。メジャーな肉には、鳥、豚、牛とありますが、基本的な違いはこの順に味が濃くなっている(=臭みがある)ということです。したがって、味付けや、臭み対策も異なるわけです。

恐らく最も安い素材なので、使う機会も多い肉だと思います。一口に鳥肉といってもいろいろな部位がありますが、こくを出すならもも肉、コストパフォーマンスを重視するなら胸肉が向いています。また、一般的にいって他の肉よりも味が薄く臭みがないので、濃い味付けが必要です。具体的にはころもを着けたり、ソースを作ったり、チーズを挟んだりすると良いです。臭みははほとんどないので特に臭みに対する対策は必要ないと思いますが、ハーブやスパイス類はとても合うので使ってみましょう。
豚肉はやや臭みがありますが、味的は淡白で基本的には鳥肉と同じ方法で調理して良いと思います。ソテーするのに合う部位は、ちょっと臭みがありますがロース、ヒレなどで、脂身が多いバラはあまり合いません(安いけど)。臭みに対しては、下味をつける時やソースなどに、しょうが、にんにく、マスタードなどを使うと、うまく消すことが出来ます。
先に挙げた3つの肉の中では最も臭みのある肉です。したがってそれに対する対策が必要です。最もポピュラーな方法が胡椒などの香辛料をつけて焼くことです。たいていステーキにする時は牛肉の味そのものを楽しみたいと思っている場合が多いので、胡椒と塩だけをまぶして焼く方法が簡単かつ美味しいと思います。他には大根おろしやにんにくのソースをつけたりします。ちなみにソテーするのにあう部位はロース、ランプ、ヒレなどです。安いからといって間違ってもカレー用の肉などは使わないようにしましょう。基本的に牛肉をソテーする場合はあんまり安い肉を使うと固くて大変な事になるので、ケチらない方が良いです。

2.素材の種類について(魚編)

次は魚です。魚は大まかに白身と赤身、青身の魚があります。

白身の魚
白身の魚といえば、具体的にタラ、カレイ、スズキなどがあります。これらに共通した特徴は身が崩れやすく、味が薄い事です。したがって、フライパンで焼く時はころもをつけて脆さを補強し、しっかり味付けをする事が必要です。洋風に味付けすれば、いわゆるムニエルになります。当然味付け的にはこってり系の味、つまりタルタルソースなどがあうと思います。
赤身の魚
マグロ、カツオ、サケなどの魚が有名です。赤身の魚は味がしっかりしているため、塩を振ってステーキにしただけでも結構美味しいです。臭みはあまりありませんが、気になるようでしたら牛肉ステーキと同じようにブランデーをかけてフランベ(火をつける事)したりしてみるとまったく気にならなくなります。もちろん生姜やにんにくを使うのもOKです。ただ、赤身の魚は高価である事が多く、また刺し身で売っている事が多いので、ソテーのような方法で調理する事は少ないと思います。
青身の魚
アジ、サバなどがあります。とにかく臭みが強いのでその対策として、ころもを着けたり強い香辛料を使ったりします。具体的には、カレー粉を混ぜた衣を付けたり、いったん味噌漬けなどにしたりして焼きます。味付け的にも濃くする事で臭みを隠す事ができます。
ただし鮮度の良いものであれば、塩味のみや梅肉を使ったさっぱり味などでもそれほど臭みを感じず、むしろこくのある味にあうのでいろいろ挑戦してみる価値はあると思います。

■実際に作ってみよう

ここでは実際にソテーとはどうやるのかについて、下ごしらえと焼き方の両面から解説していきます。

1.下ごしらえについて

まず、身を切らなければなりません。たいていの肉はソテーするのにちょうどいい大きさで売っているので、あまり切る必要はありませんが、身の厚いもの(特に鳥肉)に対しては格子状の切り込みを入れておく事をおすすめします。こうすることで短時間に下味付けができ、かつ火も通るようになるので非常に経済的です。またアジやサバのような魚の場合、まるごと一匹で売っている事があるので、そのような場合は三枚(二枚)におろす必要があります。
次に下味の付けます。和風味をつけたい時はベースに醤油を用い、それに日本酒、しょうが、にんにく、からし、山椒などの臭み消しを用います。中華風は基本的には和風と一緒なのですが、味付けにナンプラーやオイスターソース、臭み消しに紹興酒や中華風スパイス(八角やシナモンなど)、焼き油に胡麻油を使ったりすると本格的です。洋風は様々なバリエーションがありますが、一般的にマリネが有名です。マリネするには香辛料(ローレル、タイム等)と植物油(オリーブオイル、サラダ油等)、酢(ワインビネガー、バルサミコ酢)もしくはレモン汁、ワインを混ぜてマリネ液をつくります。また、わざわざマリネ液を作るのが面倒な場合は、ワインにつけるだけでも臭みは取れます。
これらの調味料をよく混ぜて、ボールやバット(無い場合は、買ってきた時に入っていたトレー容器)に入れ、そこに肉を入れて最低20分くらいは漬けておきましょう。この間に付け合わせの野菜などの下ごしらえをするのがおすすめです。

2.焼き方について

漬けておいた肉を取り出し、水気(=下味の調味料)を切ります。こうすることでフライパンに入れた時油が飛ぶのを防ぐことが出来ます。次にフライパンをコンロの上において火にかけます。フライパンが温まったところでサラダ油(もしくはバター、ラード、牛脂)を入れて、白い煙が出る寸前まで待ちます。ただし、テフロンのフライパンを使っている場合は、耐熱性がないので白い煙が出るようなことはしてはいけません。
必要なら、この時身にころもをつけます。ころもには、小麦粉、かたくり粉を用い、必要に応じてときたまごやパン粉をつけます。ころもは焼く寸前につけた方が良い(身から汁気が出てきてころもがべちょべちょになると美味しくない)ので、焼く時はころもを入れた容器をフライパンのそばにおいて、ころもをつけながら焼くといいです。
フライパンから白い煙が出そうになったら身を入れて蓋をします。皿にのせる時上になる面を先に焼くと良いです。片面が焼けたら肉を裏返して火を弱め、また蓋をし中まで火が通るのを待ちます。片面が焼けるタイミングですが、手がかりとなるポイント3つあります。基本的にはじゅうじゅうという焼け音と焼く時間です。片面が焼けるにつれて肉汁のもれが少なくなるので、次第に音は小さくなっていきます。具体的にどんな音がした時とはいえませんがヒントにはなると思うので、耳で覚えてみてください。もう一つは透明の蓋を使っていないと駄目ですが、焼いていない方の面の色を見ることです。焼いていない方の面(見える方の面)の色が肌色(ちょっと火が通った色)になればだいたい裏面はいい具合に火が通っているので、参考にしてみてください。

3.具体例

それでは、鮭を一つの例として具体的な作り方を説明します。

道具:
基本的には目玉焼きと同じで、フライパンと蓋、フライ返しです。ころもをつける場合は、ころもの材料を入れる浅い皿やバットなどが必要です。
材料:
鮭の他に、塩、日本酒、サラダ油です。
手順:
  1. 鮭の切り身を、買ってきたパックから出して塩を振ります。(買ってきたパックの中でやると洗い物が一つ減ります)。
  2. しばらく放っておきます(20分くらい)。この間に他の料理を作ってしまうのがよいです。
  3. フライパンをコンロにおいて火をつけ、熱くなったら油をお玉半分くらい入れます。
  4. 鮭の水気を切ってフライパンに入れ、すぐ蓋をします。
  5. しばらくして鮭の上の方の色が変わったら、菜箸やフライ返しで鮭を裏返して日本酒をティースプーン1杯くらい入れて、すぐ蓋をします。この時日本酒が一気に蒸発するので火傷に注意しましょう。蓋をして10秒くらい経ったら、コンロの火を弱火くらいに弱めます。
  6. 中身まで火が通ったら蓋を外し、身が崩れないようにフライ返しを使って鮭を取り出します。
  7. 皿に盛っておしまいです。

これが最も簡単な方法です。実際はこのような簡単な所から始めて、技能が付いてきたらころもなどに挑戦してましょう。