しばらくしてようやくベルナイ王の家来が再び口を開きました。

「お前達がもし敵意があって来たのなら、我々はただちに攻撃する。

 しかし、友好を求めに来たのなら、その船に乗っていてもよい。」 

そこへアワン・べドが甲板に現れ、ベルナイ王の使者の一行を見ようと首を伸ばし船の上から顔をのぞかせました。

彼はにっこりと微笑むと、パントンを歌いだしました。

          (注:節をつけて歌われるマレーシアの詩のようなもの。  初めの2行は意味があまり無いものが多い)

ベルナイ王は銃を持っている。

今日のところはがまんしよう。

ベルナイ王はもっと賢いだろう。

姫の名前はシティ・デウィ。

 

ベルネイの家来たちはアワン・べドのこの歌を聞いて、怒りのあまり動けなくなりました。

                        (注:王の娘の名前を口に出すことさえ大変失礼なことだったのです。)

ところが、あまりうまくアワンがパントンを歌ったもので彼らは口の中でぶつぶつ文句を言っただけでした。

一方アワンはベルナイの家来たちが怒っても一向に気にせず、はっきりとした声で続けました。

 

ベルナイ王が水浴びていると、カラスが足を踏み入れた。

石をならべて鍋敷きをつくれ。

王は子供をうまくそだてた。

私を婿に取りたてるがいい。

                              

争いをしに来たわけではなさそうだと判断されて、帆船は河口に入るように指示されました。

帆船が曳航されている間、アワンは自分の部屋の中でぐっすり眠り、碇がおろされてアワンの家来が起こしにくると

ようやく起きあがって水浴びをしました。

一方、ひげの家来は応接の間にいるベルナイ王の前に進み出ていました。

そこで王はアワンの歌ったパントンの話を聞き、大変感心しました。アワンは勇気があると思ったのです。             

「アワンをここへつれて来るがよい。」と王は言いました。

べルナイ王はアワンに会ってみたくなりました。家来は再びアワンの元へと急ぎました。

 

 

つづく

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