Cik Awan Beduh

        ア ワ ン ベ ド 

   

 

 ある日のこと、大きな帆船が一そうべルナイ国の海岸に突然姿をあらわしました。

帆船からは銃声のとどろく音が何度もくりかえし聞こえてきたので、人々はみな不安になり、

この国にとんでもない災難が起きるではないかと怖がって泣きだす者さえいました。

  船が現われたその時、遠く離れた宮殿では、ベルナイ王がくつろいで女官達とおしゃべりをしていました。

銃声は王の耳にも届き不審に思っていると、すぐに立派なひげをはやした家来があわててやってきました。

そして、帆船が一そう入港して碇を下ろしたこと、船からは銃声が轟いている事、それからすでにたくさんの人々が

避難場所を求めて逃げ出し始めていることを報告しました。ベルナイ王は、緊張した家来の顔を見つめながらしばらく

考えていましたが、やがて命令を下しました。

「ボートに乗ってその帆船のところに行ってくれ。誰の船か、どんな意図できたのかを聞いてくるのだ。」

 王の命令を受けたひげの家来はすぐに兵士を数人連れて小さなボートに乗り、帆船が碇を下ろしている場所へと向か

いました。ボ−トが大きな帆船の側に近づいていくと船の上に何人もの船員達が立っているのが見えました。

船員達は船に近づいてくるボートにむかって銃を構えていました。

家来はりっぱなひげをひねりながら、船に向かって大きな声で叫びました。

「おまえの王様は誰だ?」

「アワン・べド様である。」と船員の一人が大きな声で答えを返してきました。

「この国へ何しに来た。よいことか、わるいことか?」と、家来はまたも聞きました。

船上から返事が聞こえました。

「よいことかもしれないし、悪いことかもしれない。」

この答えを聞くと、ひげの大臣はとまどって口をつぐんでしまいました。

 

 

つづく

 

                                        − 1 -