ベルナイ王は、アワンにとなりの席に座るようすすめ、しばらくして、アワンに尋ねました。 「あなたのお家柄を教えてくれませんか。」 アワンは微笑みながら、 「私はお話するような家柄ではございません。りっぱな王族でもありませんし、たいしたものではありません。」 と謙遜して答えました。 べルナイ王は黙って聞いていましたが、ただ者ではないと、信じていました。きっと彼の家柄は卑しいものではない と思っていたのです。その日一日楽しく過ごしているうちに、日も暮れて暗くなってきました。 アワンはブルナイの王様の前に船に帰る許しを請うために進み出ました。 「我々はそろそろ船に戻ろうと思います。この次は、どうか私の船にもぜひお食事にお越しください。」 と、アワンはうやうやしく言いました。
「招待をお受け下さいますでしょうか?いかがでしょうか?」 ベルナイ王は若者の言葉を聞いて微笑み 「アワンよ。あなたの部屋を宮殿に用意しましたので、今夜はここへ泊まって行きなさい。」 とベルナイ王は勧めました。 しかし、アワンは船に帰ると決めていました。 「それならば、また、明日もぜひ来てください。」とベルナイ王は重ねていいました。
となりの部屋の扉の裏で、アワンが船に帰りたいと言うのを聞いた姫はがっかりしました。 そこで姫は横のドアのところでアワンが出てくるのを待つことにしました。 アワンはデビを見つけて驚き、喜びました。そして、この美しい姫をぜひ妻に欲しいと思いました。 そこでデビを見つめながら、不思議な力を持つ愛のパントンを歌いました。 扉を開けて愛しい人よ 私の目の中に 私の心の中に 入っておいで。
これを聞いた姫はたちまちアワンに恋に落ちてしまいました。
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