アワンが船に帰った後も、魔法の言葉を聞いたデビは心が乱れていました。 宮殿の前を人が通るたびに、アワンが来たような気がするのです。デビは侍女たちに通りを見張るように命じました。 姫は夜はアワンのことを考えてよく眠れませんでした。しかし昼間になると姫はお風呂に入り、奇麗に着飾り、 爪も赤く染めました。 きちんとおしゃれをして爪も赤く塗ると、 デビは暗くなるまでいつまでも地面に座ってアワンを待っているのです。 ベルナイ王も姫のようすを家来から聞き、とても心配しました。 このようにして何日も過ぎていき、姫の体は日に日に痩せていきました。 しかし、やがて、姫の行動に異変が起こりました。 シティデビは奇麗に着飾り、お城を抜け出してはアワンベドのところへ通うようになり、 明け方にこっそり帰る日が続きました。 そしてとうとう王様に毎日姫が城を抜け出していると言うことがわかってしまったのです。 王様は激しく怒って、姫を叱りました。 「姫よ、娘がこのようなことをして誰かに見られたらとても恥ずかしいことだぞ。 男の後を追いかけるのはよくない。悪いことが起きるぞ。」 それからは、デビはもう外出することはできなくなりました。 それから7ヶ月の間にデビの具合が悪くなりはじめました。侍女たちは不審に思いながらも、とても心配しました。 とうとう、ある日、デビは助産婦を呼んでくれるように一人の侍女に頼みました。 この侍女は王様に言うしかないと決心して、王の所へ行きました。 「デビはどうしているかね?」と王様が声をかけますと、 若い侍女は答えました。 「お情け深い王様、、黙っていたことをお許しください。お姫様は大変お体の具合がお悪るうございます。」 王様は侍女の言うことを聞いて大変驚きました。 「何かの病気なのかね?」とお尋ねになりました。 「お情け深い王様。お姫様はもうすぐ月が満ちて、お子様が生まれるのでございます。」と侍女は答えました。 王様は真っ青になりました。アワンベドに腹を立てました。姫の具合が思わしくないことにも怒りを感じました。 べルナイ王は7人の助産婦と7人の医者を宮殿に呼ぶように命令しました。彼らはデビのまわりに座りました。 デビが具合が悪くなって3日3晩が経ちました。 そしてとうとう月曜日の晩、シティデビ姫は一人の男の赤ちゃんを産み落としたのです。
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