その子はとても可愛らしい赤ん坊でした。 それから一番年老いた侍女を呼んで言いました。 「お父様のところに行って、アワンベドがこの子に会えるようにお許しを貰ってきてください。 私は船の上で結婚式をあげたと伝えて下さい。私は何も悪いことはしていません。」 「すぐに行って、お伝えしてきます。」と侍女は答えました。 しかしシティ・デビの赤ん坊の泣き声は宮殿中に響き渡り、となりの宮殿にも届いてしまいました。するとじきに ベルネイ王がデビの住まいの宮殿の方へとまっすぐに歩いてくるのが見えました。 赤ん坊の声が耳に入ったのでしょう。王は怒りで顔を真っ赤にしながら、デビの宮殿の中に入ってきました。 これを見て、みなは恐れおののきました。 「赤ん坊はどこだ?」と王は声をあらげて叫びました。そして赤ん坊を見ると 「赤ん坊をぼろのマットの上に置け!恥知らずの母の子だ。子供は殺さなければならん。」と怒鳴りました。 みなは王の怒りの前でどうしていいかわからずおろおろしていました。 今にも殺されそうな赤ん坊が不憫でみな泣いていました。べルナイ王は家来から刀を取り上げ、 赤ん坊を殺そうとしてその刀をふりあげたその時、年老いた侍女が急いで走り出て王の手を掴みました。 「どうかおやめください。」と侍女は叫びました。 「赤ん坊が悪い前兆だとは限りません。」 王は手を降ろし、ゆっくりとマットの上に刀をおきました。 「よいだろう。星占いをして、良い兆しなのか悪い兆しなのか見てみよう。」と王は言いました。 それから、7人の星占い師が宮殿に呼ばれ、占い師たちはそれぞれ占いをし、6人の占い師が星占いの結果を 王に告げました。 「慈悲深い王様」と一人が代表として手を合わせて申し上げました。 「この男の子は王国の中に置く事は出来ません。そうすれば国が不幸に見舞われます。 きっと国は荒れ果てるでしょう。」 すると7番目の占い師が手を合わせて言いました。 「お情け深い王様,私の占いでは、この子供は素晴らしい幸運のしるしだと出ております。 もし、王国にとどまるなら幸運をもたらす王となる事でしょう。」 7番目の占い師は少し間を置いてから、続けて言いました。 「もしこの子が、女の子なら、だれもが結婚したいと思うようになるでしょう。 男の子ならだれもが友達になりたいと思うような人間になるでしょう。」 7番目の占い師の予言を聞いた時、6人の占い師達は怒り出しました。 「どちらの意見が多いかわかっているんだろうな。」 これを聞くと、べルナイ王は6人の占い師の占いを信じることにし、ナナの木でいかだを作ることを命じました。 そしてシティ・デビをのいかだに乗せて流し、赤ん坊を森の中に捨てるようにと命令を下したのです。
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