少年は森へ帰ると町での出来事をサルのお母さんに話しました。 「僕、もう一回、町へ行きたい。」と少年は言い、お母さんにご飯を炊いてくれるように頼みました。 今回はお弁当を持っていく事にしたのです。サルのお母さんは止めませんでした。もう一回町へ行けることを少年は とても嬉しく思っていました。次の朝、少年はまた鶏をもってでかけました。 今度は真っ直ぐに町の中へ入っていきました。テンガ王はまた挑戦を受けました。 「今度は宮殿を賭けよう。」と王は言いました。たくさんの人々がこの勝負を見守りました。 ワ−ッという喝采がわきあがり、今度こそは王が勝つようにとみな祈りました。 そして、それぞれの鶏の用意が整い、闘鶏がはじまりました。 しかし結果はまた今度も王の負けでした。 「この宮殿を取りなさい。」と王は言いました。少年はすぐに断りました。 そこで、また、もう一度少年はデビにのところへ連れてこられました。 デビは心の中でこの不思議な少年に2回も逢うのは偶然とは思えないと思いました。 少年はデビとさしむかいに座りました。 「さあぼうや、おまえの話を聞かせておくれ。はじめから話しておくれ。」とシティデビはいいました。 「長い話ですから。」と少年は少し話したくなさそうでした。 「話してちょうだい。私はとても聞きたいの。あなたが最後まで全部話してくれるのをいつもでも待ちますよ。」 とデビは強引にいいました。少年はデビをじっと見詰め、それから、話し始めました。 「実は僕は森に住んでいます。僕は捨てられていたのです。母はバナナの木のいかだで流されたという話です。 それから、、、」 少年の話が終わらぬうちに、デビは少年をしっかりと抱きしめてキスをしました。 「どんなに長い事探したでしょう。あなたは私の息子なのよ。」 とデビは涙を流しながら言いました。宮殿中の人々がみんな驚きました。すぐに家来がアワンベドに知らせに走り アワンは、デビと少年の話を聞くや否や走り出しました。少年のところにかけつくと、自分の息子を力いっぱいに 抱きしめたのでした。 それから、しばらくして、この少年は王子様になり、みんなで、末永く幸せに暮らしたそうです。
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