さて コタベリンギンの中にある小さい村に、父親のファキルと母親の エンボンそして息子のアワンケラビという貧しい一家が住んでいました。 一家の暮らしは朝から晩まで働いていても満足に食べられないくらい とても貧しいものでした。家族を養うお金をもらえるならと父さんのファ キルはどんな仕事でも引き受けて働きました。薪を割ったり、小屋を建て たり、魚を採ったり、田んぼの手伝いをしました。アワンケラビも両親の 手伝いをしてよく働きました。 ファキルは素直で親孝行な息子を持って幸せでした。 ある朝アワンケラビは友だちのカンピから、王様が国中の若者に宮殿の 前に集まるようにという命令を出したという事を知らされました。 ファキルはその命令を知っていたのですが、息子が行ってしまうことを恐 れて黙っていたのですが、その知らせを聞くと、アワンケラビはカンピと 一緒に宮殿に行くことに決めたのでした。 ファキルは愛する息子が生贄に選ばれないようにと神に祈るしかありませ んでした。
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