Kisah Si juara Sabung

闘鶏師 モロンのお話


る日トレンガヌの沖合いに大きな船が姿を現し、銃声が響いてきました。町の人々は恐怖におびえました。

港の役人が調べてみるとその船はセイロン(スリランカ)から来たもので、

チュラン王の船だとわかりました。そして王様が闘鶏を行いたいという意向であることもわか

りました。この知らせはトレンガヌの王様に伝えられました。闘鶏がなにより好きな王様はた

いへん喜び、すぐにチュラン王をお迎えするよう家来に命じました。

王様は闘鶏場の準備をさせ、国中の人々にこのことを知らせるために、鐘を打ち鳴らすよう命じました。

そして、闘鶏の名人であるモロンを宮殿へ呼びました。

「モロン、いよいよ闘鶏の相手が現れた。チュラン王に会って、相手の様子を見てきて欲しい。

そして、わたしの鶏に幸運を授けてもらいたい」王様がおっしゃいました。

そこでモロンは、チュラン王に会うために船へ出向きました。夜には、トレンガヌの王様の鶏

をさすりながらおまじないを唱えるのでした。黒い羽が一段と輝きを放ちます。それを見てモ

ロンは、にやりと笑いました。「モロンの鶏は決して負けない。決して死なない」と繰り返し唱えました。

次の日、闘鶏場には、老人から若者までたくさんの人々が集まりました。太鼓の音が響き渡り、

トレンガヌの王様が、チュラン王を伴って現われました。王様の側には、それぞれ闘鶏の名人が控えています。

いよいよ、闘いの時が来ました。

二羽の鶏が放たれ、つつき合いが始まると、人々は興奮して大声をあげました。

闘いが激しくなればなるほど、人々の歓声も高まります。

ところが、あっという間にチュラン王の鶏がやられてしまいました。

何度闘っても、チュラン王の鶏は負けるばかりでした。

そこで、チュラン王は、自分の鶏を連れ出し、おまじないを唱えました。

モロンは、その様子をじっと見ていました。

休憩の時モロンは、ふと、チュラン王の鶏の方が強運なのではないか、もし、鶏を交換すれば、

自分の王様が勝つのではないかという思いにとらわれました。

モロンは、思ったままをトレンガヌの王様の耳元へささやきました。

王様もモロンの意見に心を動かされました。

そこで、トレンガヌの王様は、チュラン王の所へ行き、友好のため鶏を交換してみませんかと提案しました。

「喜んでお受けしましょう。友好を深めるためにも」とチュラン王は言いました。

しばらくして、二羽の鶏が再び、放たれました。この闘いを見つめていた人々の間から悲鳴があがりました。

何十回もの激しい闘いの末に、トレンガヌの王様の鶏はついに倒れ、死んでしまったのです。

 

 

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