モロンは家来に連れられて王様の前に姿を現し、ひれ伏しました。

「モロンよ」王様は沈んだ声で話し始めました。

「ここへ呼んだのは、チュラン王の鶏と戦う鶏を見つけられる者がおまえの他にはいないからだ。

是非おまえに戻って来てもらいたい」

モロンには王様の顔は見えませんでしたが、王様の悩みを感じとることはできました。そこでモロンは、

こう答えました。

「王様にお仕えするのがいやだというのではありませんが、このありさまでは、もはや鶏の持つ運

を見極めることなどできません。」

王様はうなだれました。悪かったと心から思いました。

「モロンよ、」王様は、モロンを説得しようと思いました。

「わたしには、おまえの他に頼れるものがいない。もし、おまえがわたしを勝たせてくれたならば、

4人の妻を与えようではないか」王様の申し出を聞いて、モロンはこう答えました。

「王様、このように何も見えないわたしに、何人もの妻を与えてどうしようというのですか」

モロンの声は悲しく響きました。宮殿にいた家来たちはこれを聞いて笑いました。

王様はもう何も言うことができませんでした。モロンの辛さがよく分かったのです。


家に帰るとモロンは娘のダヤンを呼んで言いました。

「ダヤンや、王様の命令でチュラン王に勝てる鶏を見つけ出さなければならない」

「でも、どうやって鶏を見分けるの」ダヤンがたずねました。モロンにはダヤンの心配がわかります。

「わたしを田舎へ連れて行っておくれ。そして、ヤシのひもでつながれた鶏を連れている女の人を見か

けたらわたしに教えて欲しい」

二人は、あちこちの村を探しに出かけました。広い通りから狭い小道まで歩き回りましたが、

王様が望むような鶏には出くわしませんでした。二人は疲れてへとへとになり、木陰でしばらく休みました。

疲れが取れると、モロンは、家に帰ろうと言いました。

するとそこへヤシのひもでつながれた闘鶏を連れた女の人が現われました。ダヤンはそれを見てとても喜び、

すぐに父親に話しました。その女の人はモロンのところへやって来て闘鶏を手渡しました。モロンはその鶏を

抱きかかえ、頭から蹴爪にかけて手探りで確かめ、

「これだ、わたしが探していたのは」とつぶやきました。そして、その鶏を買い取り家に連れて帰りました。

 

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