モロンが、はじめてその鶏を抱いた時の感触を思い出しながら鶏の体をていねいに洗っておりますと、

鶏は力強い鳴き声を辺りに響かせました。

モロンが良い鶏を手に入れたらしいといううわさは王様の耳に届き、次の日、

家来がモロンを迎えにやって来ました。

モロンは新しい服に着替えて家来と共に宮殿へ向かいました。

娘のダヤンも一緒でした。闘鶏はダヤンが運びました。

宮殿に着くとモロンはすぐに王様の前に進み出ました。

「我々の望みがかなったのかね」と王様が聞きました。

モロンはかしこまって言いました。

「王様がお望みの鶏を手に入れました。期待以上の鶏です」

モロンの言葉が少しの間とぎれました。人々もみな、しんと静まりました。

「王様、わたしのような盲目の者でも

この鶏の恐ろしいほどの強さが分かります。今度こそ王様がお喜びになる番です」

それを聞いた王様はとても喜びました。

その夜、王様はガルーダ(ヒンズー教でヴィシヌ神が乗るとされる)が飛んできてチュラン王の民を

一人残らず食べてしまうという夢をみました。

目が覚めてからもしばらくの間王様はその夢の事を考えていました。

あの奇妙な夢は一体何を意味するのだろうか。

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