この物語はなかなか奇想天外で、次はどうなるのだろうとわくわくたり驚いたりしながら 楽しく訳す事が出来まし
た。マレーシアは王族が多いので中には没落していき、後ろ盾も身よりも無く貧しく暮らしているサンガル姫の姉妹の
ような王族もいたのですね。日本の昔の貴族の物語にも没落している貴族の話がありました。サンガル姫は没落してい
てもプライドと夢は捨てませんでした。きっと中国の王子様と結婚するのだという強い意志ももっています。
今の時代ではマレーシアと中国は遠い別の国のような気がしていましたが、昔は海洋民族として船で行き来があり、
結婚するくらいの親密な交流もあったのですね。海でつながったいろいろな文明・・マレーシアの民話はそんな広がり
を持っています。運命に翻弄されながらも一人でがんばっていくサンガル姫はただやさしくて美しいだけのお姫様では
ないしっかりものの魅力的な女性です。姫を慕って追いかけてくる芋虫はグロテスクですが、ちょっとユーモラスな感
じもしますね。
ここで登場するジン・パクはいたずらな魔物・妖精というような存在です。マレーシアの民話にはよくこういう悪さ
をする物の怪たちがでてきますが、ジンというのは辞書で引きますとイスラム教に出てくる悪魔のことのようです。
キリスト教や仏教における悪魔が、その前の時代に生きていた信仰の対象、多くは土着の神様などが、悪魔にされてし
まったと聞きましたが、ここに出てくる魔物たちもマレーシア土着の神様だったかもしれません。
(そういえば、昔のテレビ映画に可愛い魔女ジニ−というのがありましたが、あれもこれからヒントを得たのかし
らなど思ったりしました。)ここに出てくるジン・パクも可愛いい魔女のようです。
ところで、憧れの王子に会った後は少しサンガル姫は不運です。ジンにお株を奪われてしまいます。最後は、めでた
しめでたしとなるので、安心ですが、それにしても海にまた流されていくジン・パクにも翻訳者としては情がうつって
しまって 可哀想に思いました。彼女もさびしかったのでしょうね。
miki
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