このうじ虫はただの虫ではないな、と男は思いました。

「あなたはこのうじ虫に好かれているようですね。」と男が言うと

「私はこんなうじ虫大きらい。誰がこんな気味の悪い虫が好きなものですか。」

と姫は答えました。すると、この男の心に、ふとよくない考えが浮かびました。

「このうじ虫をやっつけて、この娘を手に入れるというのも悪くはないぞ、

こんな美人はいままでに見た事がない。」と心の中でつぶやきました。

「さあ、船頭さん、早くあの虫を殺して。」と姫は強い調子で頼みました。

すると「いう通りにしたら、私と結婚してくれるかね。」と男が言いました。

これを聞いた時、姫は一瞬考え込みましたが、とりあえず、うなづいておくことに

しました。なにしろ、まず、うじ虫の方を何とかしたかったからです。

「いいでしょう。」と姫は答えました。船頭は姫の返事を聞くと大喜びで、

すぐさまうじ虫を叩いておとなしくさせ、ボートのなかに放り込みました。

そしてボートをこいで川の真中まで行くと、うじ虫を水の中にとほうり投げました。

すると、うじ虫は、水の上にぷかりと浮かびました。

船頭が虫の頭を水の中に押しこむと、尻尾がぷかっと水の上に出てきました。

尻尾の部分をぎゅっと押しこむと、今度はぴょこりと頭が浮いてきました。

何度も何度もやってみましたが、船頭がいくら頑張ってもうじ虫は沈みません。

とうとう船頭はあきらめて うじ虫をまた岸に運び上げ、そこにほおっておきました。

 そして次の日の朝見ると、うじ虫は大きなすり鉢に変わっていました。

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チェリタラギの部屋

 

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