では どうぞこのままお帰りにならないで、この国を立て直していただけないでしょうか。」

と美しい娘が言いました。


彼女は立派な様子のドリ王から、目を離す事ができませんでした。ドリ王は見つめられて赤くなりました。

「あなたたちはだれですか?」とドリ王が聞くと 娘が答えました。

「私はビンタン・ベラヒ姫といいます。この二人は私のお付きです。私たちだけが助かったのです。」

ドリ王は一瞬体がこわばりました。この姫の名前は、夢のお告げで聞いた名前ではありませんか。

あの夢に出てき老人が言ったのはこのことだったのだ。と、ドリ王は思いました。

  王が自分の名前をお姫さまに告げると、なんと姫も、バワ・アンギン国の王が助けに来てくれるという夢を見た

というではありませんか。

「私もあなたの夢を見たのです。」ドリ王は意気込んで言いました。

二人がそれぞれの夢の話しをしたあと、姫はこの王国を元どおりに立て直してくれるように改めて

ドリ王に頼みました。

そこでドリ王は姫の願いを聞き入れ、宮殿はきれいに修理され、ほこりや汚れがすべて落とされ、

雑草と言う雑草が抜かれました。

      しかし、ビンタン姫の顔は、まだ悲しそうに曇ったままでした。他の二人の顔も同じでした。

「どうして浮かない顔をしているのですか?宮殿は昔のとおりになっていませんか?」とドリ王は尋ねました。

「たとえ国が美しくなったとしてもそこに住む人々がいなかったら、何の意味もありませんわ。王様。」

と姫が答えました。

王様はビンタン姫の言う言葉を聞いて微笑みました。この美しい姫の賢さが好ましく、

この人こそお后になるにふさわしい人だとドリ王は思いました。

 ドリ王は家来に火をおこしフライパンでお米を焼いて持ってくるように言いつけました。  

しばらくすると焼き米が出来上がってきました。この焼き米をひざの上に置き、王様は魔法の言葉をつぶやきました。

(その祈りの言葉は遠くの王様の国に届きました。)

次の日の朝ビンタン姫が王様の所へ走ってきました。

「外にたくさんの人がきていますわ。王様」と姫は言いました。姫はあまりにたくさんの人々を見てとても驚いていました。

「あれは私の国の人達だよ。皆私の結婚式を見ようとやってきたのだ。」

と、王様は言いました。姫は赤くなりました。

 そして数ヶ月後のある日、いよいよ二人の結婚式の日になりました。パサル国中が、とても美しく飾られました。

いろいろな色の房飾りが二つづつ宮殿に下げられ、大勢の人達が町に集まってきました。

太鼓と、トランペットが鳴り響き、国中が陽気な騒がしさであふれていました。

大臣から国民にいたるまで、みんなが壇上の王様とお姫様のお顔を一目見ようと

次から次へとやってきました。二人はとてもお似合いで美しいカップルでした。

まるで、ビンロウジュのナッツのように完璧で、

宝石の指輪のように気高く美しかったのです。

 

つづく                    

 

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