関空の女の子を見送った後、「さて、これからは一人で頑張らなきゃ。英語できないけど大丈夫かな?」 と、ほんの少しだけ心細い気もしました。でも何とかなるかっ。
まだ日本の関西空港の中で飛行機は飛び立っていないのに機内は外国なんですよねぇ。英語ばかり聞こえる。 席に座ってひざ掛けみたいなのとクッションみたいな枕みたいなのを眺めていたら、さっきとは違う スチュワーデスさんがやってきて英語で話し掛けました。「私は担当のキャシーです。英語喋れますか?」 おそらくそんなようなことを言ってたんだと思います。「英語喋れません。」と英語で答えると 少し困った感じでした。その人の声は感じがよくて、座ってるあたしの横で同じ高さまでかがんで話し掛けてくれたので分かりやすかったし、優しそうな人でした。 「ああ、しまった。英語できないから違うスチュワーデスさんに担当替わってしまうかなぁー? さっきのキャシーがいいなぁー」とかのん気に思ってたら、次々にスチュワーデスさんがあたしの 横に来て何人かで英語で話し合ってるんです。会話の中に「エマージェンシーPA」という言葉が 何度も出てきてて、あたしをそっちのけで何だか、「ああでもないこうでもない」みたいに話し合ってる。 そして男の人でたどたどしい日本語を話す人も連れてこられるけど拉致がいかないらしい。 もしかして、乗客で日本語できる人を探してる?ってことは、この飛行機には日本語できる人がいないのぉ!? ・・うわぁー、どうしよう・・まあ、何とかなるか。少しだけなら、向こうの言ってることが分かるみたいなんだけど、 最後の方の肝心な部分の意味がわからないし、自分の思ったことを英語で伝えられないのが少しツライ。 ダラスで乗換えがあるんだけど・・・日本語できる人いるかなぁー?日本を飛び立つ前にこんなんで無事に友達の所に辿り着くのでしょうか?
どんどん乗客が乗り込んでくる気配があるのだけど・・ホント音だけ聞くと外国みたい。 何とか離陸までに英語も日本語もできる人が見つかったらしい。どうもお客さんのよう。 「なんかね、さかんにエマージェンシーPAとか言ってるんですよ」「うん、もしかしたら、この席が 非常の場合の時に何かしなきゃいけない場所なのかもしれないね。もしややこしそうなら、空席があるから 違う席にしてもらったら?」やがて、スチュワーデスさんがやってきて説明を始めます。 国内線とかでよくビデオで説明のあるような救命道具の説明でした。椅子の下に浮き輪みたいになるのが あるとか、いざと言う時に上から酸素を吸うのが降りてくるとか・・・。 「あれ、普通の説明だったね。何であんなに大騒ぎしてたのかしら?」と、その女の子は不思議そう。 「お客さんなんですよね?どこらへんの席ですか?」「この後ろの席」「一人?」「うん」 「もし良かったら、あたしの横の席空いてるから、こっちに来ませんか?あたしも一人だから。」
その女の子は熊本の人。ホントは違う日に旅立つつもりが九州からは飛行機がなかったので 関空からのることにしたらしい。結構たびなれてるみたいで、1週間前ぐらいに「旅行へ行こう」と 思い立ち、いつも3日前に航空券を取るらしい。今回はダラス乗換えでコロラドに友達を尋ねて いくらしい。何度か遊びにいってるんだって。その他にもいろんな国・・変わったところではハイチなんて 名前もあったかなぁ? 「あたし盲導犬を連れてアメリカに1年留学している友達に会いに行くの。」「へえー、すごいね」 「何かね、バスでしか移動できない所らしいよ」「えっ、バスに乗るの?怖くない?私でもタクシーとかに するのに友達すごいねぇー」と感心してる女の子。えっ、こんなに旅なれてる女の子でも怖くて 一人ではバスに乗らないらしいのに、あたしの友達は別に何でもないように話してたけどなぁー。 「英語も離せないし、だいぶ見えなくなってきてるから相手のゼスチャーも見えないだろうけど、 こんなんでどうにかなれば、これから見えなくなっても大丈夫かなぁー、って自信が欲しくて思いきって 友達に一人で会いに行くことにしたの」「えっ!?」驚く彼女にあたしは、あれっ、とか思いながら、 ああ、そうかあたし白杖を折りたたんでるから気がつかなかったんだね。あたしの目は完全に失明しても 「見えている人の目」と同じだもんね、そう思い「あたし、一応、目が不自由なんですよぉー」とか 話し出した。
ホントにその女の子に出会えて助かりました。キャシーも結構、気にしてくれるけど、運ばれて きた食事を説明してくれたりテレビの操作とか教えてくれたり・・やっぱ、日本語じゃなきゃ、分からなかったかも。 感謝感謝☆やっぱりナンパしとかなきゃねっ。
フライトは日本時間の午後6時ぐらい。8時ぐらいに食事だったかなぁ?おなかすいたよぉー。 で、隣の席の彼女は日本時間0時ぐらいには寝てしまった。あたしは0時まえぐらいからウトウトしてたけど、 お隣が寝てしまうと時々起きた時が少し退屈。妙に喉が乾きます。そうそう、この旅行の前まで、 あたしの喉の調子は絶好調に悪くて2月の下旬には風邪がこじれて「喉頭炎」を起こして声が全く 出なくなったぐらい。さすがに旅行行く時はマシになってたけど、やっぱり本調子ではなくて、 お医者さんに「飛行機の中は冷えるから上にはおれるものを持っていきなさい」といわれてました。 たぶん、夜中・・に目が覚めて、のどが乾いて・・ポーチをごそごそとのど飴を探してたら、 「W0ULD YOU LIKE SOME DRINK?」とキャシーがあたしの席の横でひざまづている ぐらいの高さで聞いてくれた。「PLEASE」なんで分かったんだろ?とか思いながらお願いした。 また少し寝て、ふと目が覚めたら、何だかメロンの匂いがした気がした。えっ?と見まわすと 「ウジュライク 弁当BOX?」キャシーの声だ。今、弁当とかいったような気がするけど??? お願いすると小さな箱を持ってきてくれた。サンドイッチとフルーツらしい。ぶどうは少し硬かったけどね。 まわりは真っ暗で寝てるのか分からないけど、目が覚めるたびに気づいて声をかけてくれるキャシーの 声が優しくて可愛い感じで大好きだった。あたしには顔が見えないから、降りる時に写真を撮って もらおう。その為にカメラ買ったんだ。出会う人の顔を後で見る為に写真をとっておこう、と。
「飛行機は何もしないのに次から次へと食事があるから、しんどいよ」と行ってたのは電車でであった ハワイ帰りの男の人だったかなぁ?確かに運動もしないのに夜・朝・昼。。。何を食べたかはもう 思い出せないけど。ダラスに着くのは現地時間夕方の6時すぎぐらいだったのに1時間半前になっても 食事が出なかったときには「もう一食ぐらいは食べなきゃ」とか思ってたあたしです。1時間前に やっと出てきた食事をあわてて食べたものです。
ダラス到着が近づいた時、アメリカン航空のクルーの人がやってきて 「君のおかげで彼女(あたしのこと)がとても助かったよ、ありがとう。これは私達クルー全員からの 感謝の気持ちだ」と言うようなことを多分言っていたのだと思います。お隣の席の子はシャンペンを プレゼントされて喜んでいました。「ああ、アメリカだぁー、洒落たことするよね」とあたしは その時に思ったものです。着陸前キャシーは「これからビジネスクラスを手伝いに行ってくるわね。 また戻ってくるから」と言って移動していきました。 着陸少し前にトイレに行きたくなって、トイレに行くと中に人が入ってたので前で待ってると 知らないスチュワーデスさんが来てビジネスクラスのトイレに連れていかれました。 トイレのドアを開けて説明してくれたのはビジネスクラスのパーサーの男の人でした。 フライト前にあたしの席に連れてこられたたどたどしい日本語の男の人って、きっとこの人だ。英語なまりの日本語で(?) 「ココガ便器、ココガ トイレットペーパー・・・」などと触らせてくれて教えてくれます。でも・・ 「ココワ臭イカラ、隣ニシマショウ!」と真面目な声で言われた時は正直言って、可笑しくて可笑しくて・・・。 トイレの中でパイロットのアナウンスを聞きました。そうそう日本語たどたどしいアナウンスも。(飛行機に乗りこんだ時に一番最初に 話し掛けてきたスチュワーデスさんは日本語アナウンスをしてたんですよ。) 「早く席に戻らなきゃ」とあせって出たら添乗員さんがあたしの腕を取り、ビジネスクラスの一番前の席に 座らせた。ああ、背中のクッションが良い。やっぱ、違うんだね。きっと席に戻る時間がないから、 ここで着陸を体験するんだわ、そう思ってたらあたしの荷物まで持ってきて、隣の席においてくれた。 「あれ?」と思いながらも、着陸を迎えました。何だか耳がキーンとして痛くて痛くてしょうがなかったです。
飛行機が着陸したらすぐさま知らないスチュワーデスさんがあたしの腕を取り出口に連れて行って
ドアが開くのを待つのです。「あれ、あたしの荷物は?」必死で片言の英語で聞くとそのスチュワーデスさんが
持っててくれてるらしい。
ちょっと待って!!このままじゃ、キャシーと写真とれないし、お隣の席だった女の子にもはぐれて
しまう。どうしよう?あたしよりもフライトが遅い彼女に乗換えとかを案内してもらう約束をしてるのに。
ドアが開くと迎えの人が待ってて、留学中の友達から噂に聞いてた「車椅子」が用意されてた。
「やばい、このままだと女の子と離れてしまう」そう思いながら、飛行機のクルーに
「I WANT TAKE A PICTURE WITH KATHY」と一生懸命考えた英語で
訴えたら「キャシー イズ パッセンジャー?」「イエス」とか答えたら、クルーの男の人は
探しに行ってくれました。(あとで気づいたけど「パッセンジャー」って乗客のことですよね。あたし
乗務員って単語だと勘違いしてたよ。)
次々にお客さんが出てくるのを飛行機の出口の所で迎えの人と待ってたら、お隣の席だった子と
巡り会えました。「サッちゃん帰ってこないし、荷物も運ばれてしまうから、どうしたかと思ったよ」
「うん、あたしも訳分からずにいたの」などと話してると、キャシーがやってきてくれました。
お隣だった女の子と3人で並んで取ったのがアメリカ旅行の為に買ったカメラ第1枚目でした。
「SHE IS SWEET」とキャシーはあたしのことを言ってました。どういう意味かな?
また会えればいいな、キャシーに。さすがにナンパはできなかったけどね。
あの真夜中みたいな飛行機の中、キャシーの「何かいる?」という可愛い優しい声をあたしはきっと
忘れないでしょう。いつか、また出会えたらいいなぁー☆
( 2001年11月 2日著 )