≪ウイルス進化論について≫
[進化について5-(よい病気③)] '11.10.24
(ウイルス8-9)
[進化について5-(よい病気②)] '11.10.23
(ウイルス8-8)
[進化について5-(よい病気①)] '11.10.16
(ウイルス8-7)
[進化について4-(縄文人)] '11.10.10
(ウイルス8-6)
[進化について3-(脳3)] '11.9.22
(ウイルス8-5)
[進化について3-(脳2)] '11.9.21
(ウイルス8-4)
[進化について3-(脳1)] '11.9.18
(ウイルス8-3)
[進化について2] '11.9.6 (ウイルス8-2)
[進化について1] '11.9.3 (ウイルス8-1)
[DNA] '10.1.29 (ウイルス7-2)
[RNA] '10.1.22 (ウイルス7-1)
[善悪の喫水域] '09.12.31 (ウイルス6-4)
[防医大2] '09.12.28 (ウイルス6-3)
[防医大1] '09.12.25 (ウイルス6-2)
[アンドロメダ] '09.12.3 (ウイルス6-1)
[マスク3] '09.11.19 (ウイルス4-9)
[マスク2] '09.11.17 (ウイルス4-8)
[マスク1] '09.11.13 (ウイルス4-7)
[クイズ] '09.11.11 (ウイルス4-6)
[宇宙パトロール] '09.10.17 (ウイルス5)
[消毒] '09.10.15 (ウイルス4-5)
[血液型] '09.10.13 (ウイルス4-4)
[ノロウイルス] '09.10.11 (ウイルス4-3)
[インフルエンザウイルス2] '09.10.8
(ウイルス4-2)
[インフルエンザウイルス1] '09.10.6
(ウイルス4-1)
[インシュリン2] '09.9.30(ウイルス3-2)
[インシュリン1] '09.9.29(ウイルス3-1)
[ウイルスの定義] '09.9.24 (ウイルス2)
[ウイルスの大きさ] '09.9.20 (ウイルス1)
[進化について5(よい病気③)] '11.10.24--(ウイルス8-9)
生物学的な進化というのだろうか。つまり、通常の進化。自然淘汰や自然選択による進化では、ひとつの種が進化を完了するのに800万年ほど掛かるという。ところが、「逆転写酵素」を使った、RNAによる情報の書き換えによる進化は、非常に早い。通常の進化のスピードを1とすると、100万ないし200万倍の早さだというのである。
800万年の100万倍の早さだと、8年、200万倍では4年。このくらいの速さで、種を進化させてしまうというのだ。(この計算は、経済人類学者?の栗本慎一郎氏が、1988年ごろ「tv2 講義」というテレビの番組で話していたことである。)
『ウイルス進化論』でいえば、サルから人間への進化が、8年とか4年で、もちろん、種全体が変化してしまったことになる。
これだったら、動物でも人間でもよいのだが、ミッシングリンクなどなくてもよい。劇的な変化である。キリンの首にしても、この理論でいけば、あっという間に長くなってしまったことになるのだ。
人類が、サルから人間に進化したことを「よいこと」というのならば、? このケースは、ウイルスに感染したことは、『祝福すべき病気になった』ということが出来る。
[進化について5(よい病気②)] '11.10.23--(ウイルス8-8)
レトロウイルス、つまり、RNAウイルスだが、このウイルスが強力であることは、出来事[進化について4]で書いた。長いあいだ繁栄の続いた縄文時代を、このウイルスが、おそらくは、あっという間に終わらせてしまった。(← 学説を信じるならば)
DNAが二本鎖の遺伝子なのに対して、RNAは一本鎖の遺伝子である。その一本鎖の遺伝子を持つウイルスが、RNAウイルスである。
RNAウイルスは、宿主の細胞に侵入すると逆転写酵素を使って細胞のDNAをウイルスの情報に書き換えてしまう。その後はもちろん、DNAはウイルスをつくる指令を出し続けることになる。
通常は、DNAからRNA方へ情報のコピーが行われる。その逆になるので、RNAウイルスが使う酵素を「逆転写酵素」と呼んでいる。
また、RNAは「不安定な物質」?で出来ているという。それだけに、RNAからDNAに書き換えが行われる際には、エラーが起きやすい。つまり、ウイルスが頻繁に変質してしまうのだ。このウイルスにHIV(エイズ)ウイルスがあるが、このことが、特効薬としてのワクチンが作れない理由である。
ついでなので、具体的なことを書いておくと、人間にはもちろん免疫機能が備わっているが、そのひとつが白血球で、その中にリンパ球がある。「ヘルパーT細胞」「B細胞」などという言葉を聞いたことがあるだろう。リンパ球の名前である。HIV(エイズ)ウイルスはそのT細胞に感染する。つまり、人間から免疫システムの機能を奪ってしまうのだ。
だからこそ、同類のウイルスが人類に良い方へ作用したならば、と考えると、期待は計り知れないものがあるのだ。
[進化について5(よい病気①)] '11.10.16--(ウイルス8-7)
君は、『よい病気』という概念があるのを知っているだろうか? 病気といえば悪いものに決まっていそうだが、ところが、ウイルスに関しては、少し違ってくる。
動物でも人間でもよいのだが、ウイルスに感染することを「病気」と考えれば、ウイルスに感染して病気になることによって、その「種」の性能が向上することがあるのだ。
そもそも、ウイルスとは何か? 少なくとも生物ではない。1996年に発行された『ウイルス進化論』著者・中原英臣氏、佐川峻氏によれば、細胞の部品ではないかというのである。
細胞部品? では、他の細胞部品に何があるかといえば、ミトコンドリア、リボソーム、葉緑体などがある。細胞の中で働いている器官である。ウイルスがそれらの仲間ではないかというのだ。つまり、ウイルスは細胞の外交担当ということになる。
細胞部品をいい換えれば、細胞内器官、あるいは細胞小器官。
細胞部品であるウイルスは、細胞に入ったり出たりして情報を細胞に伝えたり出したりする。そういう役割をする。
だから、本来、ウイルスは、動物でも人間でもよいのだが、悪い病気を引き起こすことを本意としていない。個体を超えて、それどころか種を超えて、有用な遺伝情報を伝達していくのが本来の役割なのである。
動物や人間を悪い病気にするウイルスは、むしろウイルスの突然変異なのかも知れないのだ。(← 動物や人間を病気にし、ひいては死に至らしめるウイルスには、本当はもっと深い目的と意味があるのだろうが、)
だから、地球上に天文学的な数のウイルスが存在するのに、たとえば、ウイルス病に罹った野菜を人間が食べたとしても何んにも起こらない。つまり、ほとんどのウイルスは無害なかたちで存在している。
[進化について4-(縄文人)] '11.10.10---(ウイルス8-6)
中学生のときだったろうか? 歴史の授業で縄文人のことについて教わったことがある。縄文人のイメージは、原始的な生活をしていた、ということだった。
竪穴式住居というほったて小屋に住み、使用する土器などもひどく粗末なものだった。彼らは野山をかけ回って狩をし、どんぐりの実などを拾っては、渋抜きして食べた。
縄文時代は800年から1万年つづいた。その後、日本列島に弥生人が入ってくると、縄文人は、その侵入者に追われるように偏狭の地へ逃避行してしまった。
上記が、学校で教わったイメージである。土器についてなど、縄文人がつくった土器はヤボッタイものだった。それに比べ、弥生人のつくった土器は、機能性に優れ、表面など滑らかで美しく出来ているというのである。
ところが、ぼくが成人してから縄文人について得た知識は、まったく違うものだった。縄文人は高度な文明を持っていた。高い文化的生活をしていたのである。それに、弥生人によって滅ぼされたのではなく、縄文民族全体で病気に罹ってしまって、それで人口を減らしたのだった。(← ひとつの学説だ。)結果、弥生人に駆逐されたようになってしまった。
たしかに彼らの作った土器はプリミティブなものに思えるが、しかし、火焔土器などをよく見れば、精神的に豊でないとつくれない器なのである。また、縄文時代から、陸稲かも知れないが稲作があったようなのである。
縄文人が罹ってしまった病気が何かというと、ATL = 成人T細胞白血病 である。風土病といっていい。ATLはHTLV-I ウイルスの感染によって発症する。このウイルスを、また、レトロウイルスとも呼ぶ。
レトロウイルスは、簡単にいうとRNAを持つウイルスのことである。もうひとつ、逆転写酵素を持つ。現在もっとも有名なレトロウイルスがHIV、エイズウイルスだ。
[進化について3-(脳3)] '11.9.22---(ウイルス8-5)
人間は、脳の機能を、脳の外へ出すことに心血を注いできたようである。文字をつくったのもそうだし、印刷技術を開発したのもそうである。パソコンもそう。スーパーコンピュータなどは、創造行為以外の脳の働きを全て外に出してしまった感がある。
前回、宴会での伴奏なしの歌を話題にしたが、… 現代人にとって「カラオケ」は、日常必要な娯楽である。そのカラオケでは、モニターに歌詞が出るので、歌うに歌詞を記憶してなくてもよいのである。これも脳の記憶部分を外へ出したものである。車のナビゲーションなども、情報や記憶を脳の外へ出してしまったものだ。
『人間の脳は、発達どころか退化しているのではないか』と、前回書いたが、脳にとっての便利さの追求は、かえって脳の機能を後退させてしまっているのではないか、と思えるのである。
出来事 [進化について3]は、人間が進化するとしたら、脳をおいて他にはないだろうと考えたわけである。そこで脳を考察してみたのだ。… すると、脳は、進化というより、その反対の退化のイメージになって来てしまったのである。
あるいは、人間の脳は、情報をどんどん外へ出して、外で記録しようとするので、これ以上、脳の容量は必要なくなってきた。つまり、進化というより、退化、退化が言い過ぎならば現状維持でよい、そんな雰囲気になってきたのである。
[DNA] '10.1.29---(ウイルス7-2)
DNAとは、デオキシリボ核酸のことである。4種類の塩基で構成されている。A,T,G,C、アデニン、グアニン、シトシン、チミン。DNAは二重螺旋構造になっていて、そのなかに遺伝情報が書かれている。つまり、DNAは遺伝子である。
デオキシリボ核酸を細胞から取り出してpH(ペーハー)を測ってみると酸性を示す。「核酸」と言われるだけのことはある。上記では塩基で構成されていると書いたが、塩基というのはアルカリ性物質のことだ。矛盾している。
では核酸とは? 塩基と糖、リン酸からなるヌクレオチドがリン酸エステル結合で連なった生体高分子【Wikipedia】である。… さっぱり分からないが、DNAの外側の2本の紐(二重螺旋)の部分が、酸性を示すのだろう。
「デオキシリボ核酸」を英語で書くと、
Deoxyribonucleic acid (ディーオクシィリボ ヌークライス エイスィド)
Deoxyribo = 糖
nucleic = 核
acid = 酸 = (リン酸=P)
nucleic acid = 核酸
つまりデオキシリボ核酸は、糖とリン酸と塩基でつくられている。
外側の紐の部分が糖とリン酸で出来ていて、その間に挟まれているのが塩基である。外側の紐から無数の塩基が出ていて、もう片方の紐からも塩基が出ている。その両方がくっつき合っている。それを俯瞰すると、捻れたリボン様になるのだ。具体的には、AとT、CとGが決まったペアをつくって結合している。
AとT、CとGがくっつき合っているのだが、それらをくっつけているのは水素原子の電荷の力である。水素結合というらしいが、比較的弱いつながりなので、水素結合がはずれるとDNAの二重らせんがほどける。
インターネットでDNAを検索すると、Wikipediaをはじめ、多くのホームページが出て来て、DNAのイメージ図や化学構造式を目にすることができる。それは、見ていてあまりにも精緻すぎるのだ。
地球が誕生したのが46億年前、生命が誕生したのが40億年前~35億年前と言われているが、しかし、DNAのような生命を定義づける生体高分子が、原始のスープのなかで自然に、あるいは偶然に出来るだろうか? 想像するのが困難になる。
ぼくは思ったのだ。それだったら、宇宙が誕生したのが137億年前のビックバーンからだが、もう、その瞬間から、すでに生命を誕生させるアイデアはあったと考える方が自然ではなかろうかと、 あるいは、もっとそれ以前に、
[RNA] '10.1.22---(ウイルス7-1)
昨年からずっとウイルスについて書いているのだが、いまだに関心が薄れない。ウイルスに感染してしまったのかもしれない。
ウイルスを理解しようとすると、どーしてもDNA,RNAの理解が必要になってくる。たとえばHIV(エイズ)ウイルスは、レトロウイルスといってRNAを持っていたりする。… ウイルスの大きさの中に遺伝子が入るのか? と疑問がわいてくるが、ウイルス固有のRNA情報だけなので、入るのかもしれない。
君は、DNAとRNAの違いを知っているだろうか? ぼくは忘れてしまっていた。学校の生物で教わったはずなのだが、… DNAは二重螺旋構造、RNAは一重の螺旋構造、このくらいは知っている。
人間をはじめ多くの生物が細胞核の中にDNAを持っている。調べてみると、どうやら、DNAのいる同じ細胞核の中にRNAも存在していた。
… 知らなかった。てっきり、HIVウイルスのようにRNAを持つ生命形態とDNAを持つ生命形態とが別々にあるのだと思っていたのだ。
細胞が細胞分裂するには、その前に、分裂前の細胞の中で遺伝子が複製されていなければならない。… 同じ2つの遺伝子をつくっておく。… 分裂を始める間際に、2対の遺伝子が中央に集まって整列するのである。それから細胞の真ん中がくびれ始める。細胞の両端から遺伝子を引っ張るような線が現れたりして、遺伝子は離れていく。
細胞分裂前の細胞の中で遺伝子が複製されるとき、当然、コピーのためにDNAの二重螺旋がほどける工程がある。そのほどける現象のことだが、調べてみると、細胞分裂とは別の目的でも、ほどけることがわかった。
以下は細胞分裂のとき以外でのことだ。
核の中にRNAがいて、ほどけた、つまり一重螺旋になったDNAの … DNAの紐を梯子(はしご)に例えるならば、縦木の片方が無くなり、足場=段の部分がむき出しになる。… その段は2分の1と短くなっているが( … たぶん)、… その一重螺旋になったDNAにRNAが重なるようにして情報を写し取っていく( … たぶん)。
DNA情報を持ったRNAの紐は、核の外、つまり細胞質へ出ていく。細胞質の中にはミトコンドリアやリボソームがいるのだが、RNAの紐はそのリボソームの中に入っていく。リボソームはタンパク質の製造工場である。リボゾームの中で、RNAにくっついて並んでいる塩基、A,G,C,U(T)の配列にしたがい、アミノ酸を選定し、そしてタンパク質をつくっていくのである。これがRNAのひとつの仕事だった。
RNAにはそのほか、いろいろな機能を持つものが存在する。いま書いたRNAは、mRNA=メッセンジャーRNAという。そのほかに、tRNA=トランスファーRNAとか、rRNA=リボソームRNAとかがいる。
[善悪の喫水域] '09.12.31---(ウイルス6-4)
[ウイルス6-1] では、映画「アンドロメダ」のことを書いたが、その中に出てくる秘密の研究施設は、実は、国家によって細菌兵器を開発するのが目的で建造されたものだった。主人公などの科学者はそれを知らされていなかったのだが、
生物兵器や化学兵器の研究施設が、防医大にもあるだろうと想像してしまったのは、「アンドロメダ」に触発されたからだ。もちろん、日本で生物兵器や化学兵器の研究施設があったとしても、それは防御が目的だろうが、
生物兵器や化学兵器の使用は、現実にあるから恐ろしい。日本では、カルト教団がテロに使ったのが記憶に新しい。海外では、イラクで、サダム・フセインが大統領の座にあったとき、自国のクルドの市民に対して化学兵器を使用したという情報がある。
話は変わるが、ぼくは、二十歳の頃、極貧の生活をしたことがあった。そこで、自分の血を売れないだろうかと、考えたことがあったのだ。つまり売血だ。しかし、調べてみると、すでに売血は1960年代に法的にできなくなり、ぼくが二十歳の頃は、とっくに、市民が善意でおこなう献血に代わっていた。
売血は、やはり、モラルを遠くへ追いやってしまうようである。輸血する人のことなど考えない。それよりも、代価を得るのを優先する。自分の血液がウイルスなどに汚染されていても関係ない。
「黄色い血」などという表現も出てくる。売血する者は、それを頻繁にするので、赤血球が血液中に少なくなってしまって、血液の色が黄色くなってしまうというのである。
献血は赤十字がやっているが、売血に関しては、その昔、血液銀行と称して民間の会社がやっていた。興味を引くのは、血液銀行の設立者に、731部隊にいた人の名前があるということである。売血が中止になった頃、その血液銀行はミドリ十字と社名を変更している。ミドリ十字といえば、血友病患者に対して、ウイルスを不活化しなかった非加熱製剤を使用し、エイズ感染者を生み出してしまった、あの薬害エイズ事件の会社である。
731部隊。日中戦争から太平洋戦争にかけて存在した、旧日本軍の生物・化学兵器の研究部隊とされている。活動していた場所は、満州国のハルピン。捕らえた中国の人たちをマルタと呼称して、人体実験や生体実験をしたと言われている。事実ならおぞましい非倫理的、非人道的な所業である。
ミドリ十字の前身の血液銀行に731部隊に所属していた人がいると書いたが、敗戦と同時に、東京裁判があったわけだ。しかし、731部隊にいた軍人は、裁かれることなく、ミドリ十字をはじめ、東京大学や京都大学の理化学系の教授などになっている。それは、人体実験などの事実がなかった、あるいは、その証拠が揃わなかったからなのか。それとも、戦勝国に戦犯免責を得る代わりに、研究データを渡した、つまり、司法取引をしたからなのか。客観的事実は、我々には、よく判らないところにある。
大学も教授も法には触れていないだろうが、京都大学に、昔、731部隊に所属していた人が教授として召致されたことがあるという。 731部隊は「石井部隊」とも言われているが、石井四郎という軍人は、京都帝国大学医学部を卒業している。… 細菌兵器などのことを考えていたら、つい、731部隊の話にまで行ってしまった。
さて、話を細菌学やウイルス学の最先端研究のことに切り替える。「生命倫理」などという言葉があるが、例えばクローン技術などは、倫理や人道のことを、絶えず意識しなくてはならない領域になるだろう。細菌学やウイルス学もおなじである。現在の大学のキャンパスにも、たまに、善悪の喫水域のようなものが現れて、新進気鋭の教授たちは、ときにそれを怖れ、抗い、また触発されたりしているのかもしれない。
[防医大2] '09.12.28---(ウイルス6-3)
前回書いたように、ぼくも世話になった防医大だが、防医大が存在することによって、所沢市をはじめ、近隣地域の住民は多大な恩恵をこうむっている。
しかし、防医大の本来の使命は何だろうか? それを考えるとき、そのイメージは若干変わってくる。
軍医や従軍看護師を育てる目的があるだろう。しかし、そのほかに、細菌や毒ガスなどの攻撃に対して、国民や自衛隊員を守る、そんな目的もあるのではないだろうか。思うに、生物や化学物質を使った兵器に対して、その防御だとか解毒だとか、あらゆる研究が、密かになされているにちがいないのだ。
生物兵器や化学兵器は、近年、国家間での紛争もだが、テロによる使用が現実味を帯びてきている。
防医大のホームページを閲覧しても、そのようなセクションのことは記述されていない。つまり、一般市民の目からは秘匿されている。それを明らかにしてしまっては大変だ。例えば、生物兵器の研究のことをディスクローズすれば、市民は恐怖におののくに違いない。そして市民は防医大を当該地区から即刻退去することを要求するだろう。
防医大の研究棟には、出来事[ウイルス6-1]--(アンドロメダ) で書いたような、秘密基地的な施設が存在しているかもしれない。
「アンドロメダ」のところで、レベル1からレベル5まである実験室のことを書いたが、現実にも、細菌、ウイルスなどの病原体を取り扱うのに、その実験室に格付けがある。昔は「P」で表現していた。P1、P2、P3、P4と。P4は、最高度安全実験施設のことである。Pは、Protection level(防御レベル)のこと。最近は、バイオセーフティーレベル(Biosafety Level)、略して BSL と呼ばれる格付けが使われている。防医大の研究棟にも秘密施設があって、すべての階層の実験室がつくられていてもおかしくない。
貞子が出てくる「リング」は鈴木光司氏の作品だが、彼のシリーズ的な小説の中に「天然痘」の話が出てくる。天然痘は現在撲滅されたことになっている。しかし、世界で二つの施設に保管されていることが書かれていた。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)とロシア国立ウイルス学・バイオテクノロジー研究センター(VECTOR)である。
生物兵器は、治療法が確立していないものは適さないという法則がある。そういう意味で天然痘ウイルスは生物兵器になりうる。だから、案外、密かに、防医大あたりにも天然痘ウイルスが保存されているかも知れない。ジュネーヴ議定書は尊守するにしてもだ。
(空想をかなり暴走させてしまっている。)
嫌な話ではあるが、国家の危機管理となると、当然、上記のことなどが考えられてしまうのだ。そして、それら生物兵器は環境中に絶対漏れてはいけない。また、その情報も絶対漏れてはいけない。天然痘とまでは言わずとも、防医大にもその種の緊張感を要する隠し事はあるだろう、ということである。
[防医大1] '09.12.25---(ウイルス6-2)
ずいぶん昔のことだが、親知らずが痛くなってしまったことがあった。そこで、行きつけの歯科、以前書いたが、ハミルトン歯科へ行って診察してもらったのである。
すると、「うちでは治療できない」と言われてしまったのだ。炎症を起こしている親知らずは、下顎(したあご)の骨の中に埋もれてしまっていて、下顎の一部を削らなければ抜歯できない、というのである。
そこで、そのような手術ができる病院を紹介してもらうことになった。都内の歯科大学病院でも紹介してもらえるのかと思ったら、なんと、紹介されたのは所沢市にある防衛医科大学校だった。
… ちなみに所沢市の人は、防衛医科大学校を「防大」と呼んでいるようだが、ここではわかりやすいように「防医大」と書くことにする。…
「防医大に歯科などあったっけ?」と最初思ったが、考えてみると、自衛隊員が戦闘をする際に、歯痛をおこしていては、パフォーマンスが少なからず落ちてしまうに違いない。つまり、防医大にも当然のこととして、歯科があるわけである。
手術をするにも、自宅から遠くない大学病院なのでよかったのだが、とにかく、ぼくは、防医大の歯科に紹介状を持っていき、そこの先生と手術の打ち合わせをしたのだった。
手術が終わったら、その日のうちに帰ることができるし、車で来てもよいといわれた。
顎の骨を削ると聞いただけで貧血を起こしそうだが、手術は局部麻酔だけで執り行われた。
におい! 顎の骨を削られるとき、思いっきり嫌な臭いがした。骨の内部の臭いである。 … だから思った。人間の腐乱死体など、どれほど強烈な臭いになってしまうのだろうかと。そんな想像を掻き立てられる、ひどい臭いだったのである。
手術は無事に終わった。
防医大にも薬局はあると思うのだが、ぼくの場合は、化膿止めや痛み止めの薬を、病院の外の薬局でもらいように指示された。そこまで行くのに50mくらいはあっただろうか?
手術は無事に終わってはいなかった!
車は防医大の駐車場に置き、徒歩で薬局へ向かったのだが、その途中で、早くも麻酔が切れて来てしまったのである。
強烈な痛みが襲ってきた。痛みにも重さのようなものがあって、痛みの重さに耐え切れず、立っていられない感じになってきてしまった。生涯でこのときだけである、救急車を呼びたくなったのは。
口の中からは意思に反してピンク色のよだれが垂れてくるし、しかし、がんばって、どーにか薬局へたどり着いたのだった。
有事の際に、負傷した自衛隊員のことを思えば、このくらいのことはと、結局、痛みをこらえて車で自宅まで帰って来てしまった。それから処方された薬を飲んだのである。
防医大のことを書こうと考えたら、上記のようなことを思い出してしまった。本題は次回としよう。
[アンドロメダ] '09.12.3---(ウイルス6-1)
もし、SF映画を撮ろうとするならば、このくらい綿密に調べあげるべきであると思った作品があった。… 観るものをその世界に引きずり込むには、観客の常識を上回り、独創的で、しかもリアリティーのある舞台にしなくてはならないと、
邦題で『アンドロメダ』というのだが、君はその映画を知っているだろうか? ずいぶん前にテレビで放映されたのを視たのだが、いまだに忘れられないのである。 原題は「The Andromeda Strain」。 調べてみると、小説は1969に書かれ、映画化は1971年にされた。ウッドストックや大阪万博の頃である。それをテレビで視られたのだから、放映権などの問題で、5年や10年は経ってからのことだろう。
アメリカのある片田舎に小型の人工衛星が落ちた。同時に村人が全員倒れて死んでしまった。血液は凝固して砂時計の砂のようになってしまった。
政府は極秘裏に医学者や科学者を各地から召集した。原因を調べるためである。
村人が全員死んだと書いたが、生き残った人間が二人いた。アル中みたいな老人と泣き叫んでうるさい赤ん坊である。
いわゆるネタバレになってしまうので、ぼくがこの映画で魅了された部分をほとんど書くことができない。ほんのワンシーンだけを紹介させてもらうことにする。
政府の管理する農業試験場がネバダの砂漠にあった。その中に平屋の事務所があるのだが、それはカムフラージュで、地下には、未知の病原体などを研究する施設がつくられていた。
その研究施設がすごい。岩盤をくりぬいた円筒形の建造物で、中央にエレベーターが配置されている。5階建てになっていて、下へくほど生物学的にクリーンになっている。地下1階部分をレベル1、地下5階部分がレベル5と呼ばれている。
地下5階のその下には、核爆弾の自爆装置が仕掛けられていた。万が一施設が汚染された場合、自爆装置が働くようになっている。起動してしまった自爆装置を解除するには鍵が必要で、その鍵を主人公の科学者が預かることになった。
人工衛星と生き残った二人の人間は、レベル5に移され、科学者によって原因を探るべく分析されることになる。
人間の体を完全には殺菌できないだろうが、科学者たちは、それぞれの階で、徹底的に検疫されてレベル5まで下りることになる。
映画を視た当時、グローブボックスは知っていたが、人間そのものが入ってしまうグローブボックスなど目にしたことはなかった。それに入って患者を診察したりした。
ダイ・ハードやターミネータのストーリー展開は見るものを飽きさせないが、同じような興奮をこの映画でもさせてくれたのだ。
密閉されたガラス張りの隔離室がある。その部屋の中央には、小型の人工衛星が置かれている。その部屋の壁には、複数の実験動物がガラス製のゲージに入って並べられている。サル、モルモット、マウス。
実験動物を選び、ゲージのままテーブルの上に置き、とりあえずふたを開けてみた。動物は死んでしまった。まだ、衛星のカプセルの中に未知の病原菌が生きていることが判った。
再び動物の入った新しいゲージを用意して、今度は死んだ動物のゲージと新しいゲージとをホースで繋いだ。ホースにはフィルターが装着されている。
その作業はすべて、マニュピュレーター(マジックハンド)を使って、外から作業する。
科学者たちの台詞である。
「まずは100オングストロームのフィルターからやってみよう」
「およそヴィールスのサイズですね!?」
生きていた。
「ビールスより大きいようだ」
「1ミクロンのフィルターを使おう」
生きていた。
「かなり大きいようですね!ハエタタキでも持ってきましょうか」
「今度は2ミクロンだ」
「ああ。やられた」
「細胞くらいの大きさか!?」
病原体の大きさが判ると、やはり遠隔操作の顕微鏡を使い、人工衛星を直接見て病原菌を探す作業に入った。
[マスク3] '09.11.19---(ウイルス4-9)
インターネットで 「マスク インフルエンザ」 この辺のキーワードで検索してみると、インフルエンザ用マスクの通販のホームページが数多く出てくる。
マスクの通販のホームページに出てくるコメントやイメージ図が面白い。イメージ図には、ウイルスとマスク繊維の空隙などが描かれている。
医療関係者などは、飛沫ウイルスの防御が大事だと言っているのに対して、マスクの通販では、多くのホームページが、イメージ図、コメントともに、ウイルスそのものの侵入を防ぐことが大事だと主張している。
インフルエンザウイルスは 0.1~0.3ミクロンだが、それを(弊社のマスクは)99%捕捉できると、たとえば説明している。
以下、あるホームページに書かれていたものだが、
インフルエンザの予防は、N95 のマスクでないとダメだという。今まで使われてきた不織布マスクのほとんどが効能がないと断言している。長い文で説明していたが、そのなかに「飛沫」というウイルスの生存形態は出てこない。
そのホームページで、新型でなくて、トリインフルエンザのことを説明していたのだが、以下、長い文の一部語句を取り出してみる。
『 人類を滅亡に追いやる危険因子
悲惨な菌
殺人兵器
核戦争 核を超える危険
致死率が70%以上
戦後最大の脅威
人類史上最悪と言える病原体
殺人ウィルス
マスク着用なしでの行動は自殺行為 』
こんな表現を使って、マスクとマスクの備蓄の必要性を訴えていた。
話は変わるが、昨日、深夜にテレビのニュースを見たのだが、短いニュースだったが、
販売されているマスクの中には、ウイルスを防ぐ数値を95%とか99%とか謳っているが、少なからずの製品で、数値が達成されていないものがあると報じていた。
[マスク2] '09.11.17---(ウイルス4-8)
前回 N95 という性能の高いマスクのことを書いたが、いくら飛沫核などの小さい粒子を防ぐからといって、そのマスクをかけただけで、あとは普段の服装で外出したりするのは、かなり格好の悪いことになってしまう。ファッションでいえばトータルコーディネートがされていないのである。
N95 のマスクといえば、ずいぶん前に流行(はや)った SARS (サーズ、重症性呼吸器症候群[新型肺炎])を思い出す。コロナウイルスとか、スーパースプレッダーなどという言葉を加えて思い出すが、そのとき医療関係者がかけていたのが、たしか N95 のマスクである。それにゴーグル(あるいはフェースガード)もしていた。ウイルスが眼球などから体内に進入するのを防ぐためである。衣類などに付着するのも計算に入れなくてはならない。だから使い捨てにしたりする。つまり、トータルで感染予防しなければ、マスクだけかけていても意味がないのである。
N95 のマスクをして外出するのだったら、せめてゴーグルや、身体をすっぽり包める防御服などを着て出かけたい。そうでないと、高性能なマスクはアンバランスだし、格好悪いのである。
米国疾病対策センター(CDC)が、マスクの感染拡大予防の効果について、疑問を投げかけているのは有名な話だが、たしかに上記のことを考えれば、その通りなのである。マスクがよいとなると、一般人は、それだけに頼ってしまいそうである。
マスクの表面を無造作に手で触(さわ)れば、そこに付着しているウイルスを手に移してしまい、その手を舐めるようなことをすれば、マスクをかけた意味はなくなってしまうし、
インフルエンザ対策には、『飛沫ウイルスを防げる』と書いてある市販のマスクをかける程度が、日常では適当なのかもしれない。また、インフルエンザウイルスに感染した疑いのある者が、周囲に飛沫を飛散させない。この辺を目的としてマスクをかけるのがよいのかもしれない。総合すると、そういうことになりそうだ。
[マスク1] '09.11.13---(ウイルス4-7)
インフルエンザウイルスの感染を考るとき、その予防にマスクのことが頭に浮かんでくる。
まずは用語の解説からだ。ガーゼマスクに不織布マスク。 ガーゼマスクはわかるが、不織布が何だかわからない人もいるだろう。ぼくは最初、読み方さえわからなかった。「ふしきふ」と読んでしまった。そのままネットで検索したら、漢字も「不敷布」と誤変換してしまって、遠回りの検索をしてしまった。… 不織布は「ふしょくふ」と読む。そして、文字通り、繊維を織(お)らずに絡み合わせたシート状のものをいう。
もう一つ、用語の説明をしてしまう。「N95」と出てくるが、これは、米国労働安全衛生研究所(NIOSH)の規格のひとつだ。ちなみに、N99というのもある。
マスクは、市販されているウイルス用のマスクは、本当にウイルスをカットすることができるのだろうか? 調べたくなってくるのである。
調べてみた。
一般的な不織布マスクの捕捉粒子の大きさは200分の1ミリ(5マイクロメートル=ミクロン)という。そして、インフルエンザウイルスの大きさは、1万分の1ミリである。 … どー考えてもウイルスは、マスク繊維の空隙をスイスイ通過してしまう。
ただし、ウイルスは、単独では存在しない。単独では浮遊もしないようである。感染者から体外へ出たウイルスは、鼻水や唾液に包まれている。いわゆる飛沫の中にいる。飛沫の大きさは200分の1ミリ以上だという。それだったらマスクで防ぐことができる。だからマスクのパッケージには「飛沫ウイルスを防ぐ」と表示してある。
再び、ただし、飛沫にも、ウイルスを包んでいる飛沫が乾いてしまった状態がある。これを飛沫核と呼ぶが、これだと、かなり小さくなってしまう。1万分の3ミリ。一般的なマスクでは防げないし、飛沫核はまだ感染力を保持している場合がある。
飛沫によって感染してしまうのを飛沫感染。飛沫核によって感染してしまうのを飛沫核感染と呼ぶ。飛沫核感染の方は、もう、粒子の大きさからして空気感染といってもいいらしい。
飛沫核を防ぐマスクもある。「N95」と表示されたマスクだ。1万分の3ミリ以上(0.3マイクロメートル)の粒子を捕捉できる。マスクの値段がいくらするかわからないが、… また、それを装着すると、息苦しいかもしれない。
[クイズ] '09.11.11---(ウイルス4-6)
さて、君に問題を出します。
マスクには、ガーゼマスクと不織布マスクがありますが、「不織布」と書いて、なんと読むでしょうか? また、どーいう物ですか?
[宇宙パトロール] '09.10.17---(ウイルス5)
戦艦エンタープライズは、単独で宇宙パトロールの任に就いていた。そして、未知の惑星の周回軌道に乗ろうとしていた。
エンタープライズの艦橋では、ジェームズ・カーク艦長が、傍らにいる副長のスポックに指示を出した。
「ミスター・スポック。この惑星に生命反応があるかどうか走査してくれ」
「了解しました。艦長」
間もなくして、スポックがカークに報告した。
「生命反応はありません。艦長」
「大気組成は地球とほぼ同じです」
「よしわかった、ミスター・スポック。上陸班を急いで編成してくれ。わたしも行く」
ぼくの好きな 宇宙パトロール(スター・トレック) では、上記のような感じでストーリーがよく始まる。しかし、ウイルスのことがだんだん解ってくると、生命反応が無いからといって、未知の惑星に安易に降り立つのは、ひどく危険に思えてくるのである。
生命反応を走査したエンタープライズの計器は、おそらく、生物の出す熱や生物の代謝から発生するガス等を捉えるものだろう。
もしかすると、この未知の惑星にはかつて生物が繁栄していて、その生物に寄生してウイルスもいて、現在、生物から飛び出して、何万年ものあいだ岩などにくっついてじっとしているかも知れないのだ。
だから、今のぼくとしては、せめてカーク艦長には、有機体、とりわけ微小有機体の走査もスポックに命令して欲しかったのだ。