NO.1 北海道の山編 《山行詳細データ》と《マイカーアプローチ》 |
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東京周辺、大阪周辺にお住いで300名山を目指す方が多いと思います。
東京からはもとより関西からはなおのこと北海道方面は遠い山です。その北海道には対象の山が26座あります。 一度の渡道で二つあるいは三つという登頂では、年数のかかることはさておいても、普通のサラリーマンには交通費などの出費の方が大変です。できれば夏休みなどの長期休暇を使い、1回の渡道である程度の数を稼ぎたいと思うのは当たり前です。 私は北海道の山を5回に分けて登っております。1回目と2回目は日本百名山だけを登っています。
その内容は以上の通りです。 ● 1回目は「とにかく100名山を完登したい」という一心だけでした。 旧のお盆にかかって飛行機がとれるかどうかわかりません。結局ホテルとセットの高いプランに乗せられ、同行した妻と2人分、旅行代理店に支払った費用だけで約50万円でした。このときは後どのくらい生きられるかわからない、生きた証を残すためにはその程度仕方ないと割り切りました。 斜里岳を手始めに登山を開始。層雲峡の観光ホテルに泊り、翌日リフトを利用して黒岳へ登り、北海岳回りで旭岳登頂までの日程は順調でした。翌日天人峡からトムラウシ山を目指しました。 天人峡からトムラウシ山頂を往復すると17時間ほどのコースタイムです。これを日帰り13時間で歩こうと計画しました。 エリモ岬の海上に台風が接近しています。天人峡ではまだその影響を感じません。朝4時暗いうちにホテルを出て、私としては最高のペースで長い行程に挑んで行きました。 長丁場のため万一明るいうちに下山できなかった場合に備えて、ヒサゴ沼避難小屋に泊まれるようシュラフと簡単な食料も持ちました。 台風とは反対の北側から登っていたので、ほとんど強風らしいものは感じませんでしたが、稜線の化雲岳に近づくとだんだんと風が強くなってきました。しかし何としてもトムラウシの山頂を踏むんだという執念のようなものがあって、引き返そうという意識はまったく起こりませんでした。 雨も降ってきました。 化雲岳までは7時間のコースタイムを3時間45分でした。 天気さえ良ければ化雲岳からトムラウシ往復は5時間のコース。私の足なら3時間あれば十分。もう山頂をきわめたも同然と思ったのです。 道標をしっかりと確認し、化雲岳からトムラウシに向かって歩きだした。 霧ではっきりとはわからないが、だだっ広い稜線がつづいている。遮るものもない稜線は猛烈な風が吹き抜けていた。不気味な音を立てて吹き付ける強風は嵐そのものでした。ヒグマが唸りながら襲ってくるような錯覚に陥いり、これまで感じなかった不安が頭をよぎりました。 風に流されそうな体を立て直し、ヒサゴ沼避難小屋への分岐を横目でやり過ごして、コースがやや下りはじめたあたりで妻の心配する顔が浮かんできました。 岩陰にうずくまってはじめての休憩をとりながら思案。そして無念の思いで退却を決意したのです。避難小屋に泊まっても明日の状況は分からない。天人峡まで下ることにしました。 こんなアクシデントもあって計画のうちトムラウシを残したまま、あと利尻山を登頂して初の北海道遠征を終わった。 ![]() ●残る北海道の百名山は4座、もう一度訪れなくてはならない。しかし50万円の費用は無理である。 そして次に考えたのはマイカーに夜営用具を積んで行くことでした。 北海道は夜営場には不自由しません。旅で一番の負担は宿泊費です。これで費用は半分以下となる計算です。2回目からはこれを実行に移しました。 前回退却を余儀なくされたトムラウシは、次の渡道でトムラウシ温泉から往復しました。このコースなら日帰りで十分です。マイカーだと登山口の選択なども自由ですし、予約したホテルもありませんから日程は自由に変更できます。 こうして2回の渡道で北海道の日本百名山9座を終わることができたのです。 ![]() その後300名山にチャレンジするようになってからも、それまでの経験が役に立って、キャンプ道具を積んでのマイカー渡道によって、安い費用で北海道の山を登ることが出来ました。 本当は北海道の山は好天の中を眺望を楽しみながら歩きたいのですが、なかなか思いどおりにはいきません。危険は避けねばなりませんが、多少の天候条件は克服して登頂する元気さと、連日のハードな登頂に耐える体力もなければなりません。 一つだけ難点は、サラリーマンが夏休みを取れる8月は、フェリーが取り難いということでした。 2回目までは日本百名山で問題ないと思いますので、3回目の渡道分から私の日程、コース、役に立ちそうな情報を簡単にご紹介しておきます。
![]() ヒグマ 余談ですがヒグマの心配はいつも頭から離れませんでした。10名山は入山者も多いのでそれほどでもありませんでしたが、300名山の中にはあまり人と出会わない山もあったりして気を使いましたが、振り返ってみますとニセイカウシュッペ登頂のとき、1日か2日しかたっていないと思われる大きな糞を目にしたことがあるだけです。このときは緊張しましたが、歩いているうちに山頂を踏むことに集中してヒグマのことは忘れていました。つまり仮に望んでもヒグマにはなかなか会えるものではないということでしょう。 エキノコックス もう一つは、キタキツネが媒介するエキノコックスという、死にいたる恐ろしい寄生虫病です。 この知識がまったくなく、沢水でも何でも本土同様に飲んだりしていました。後で知ってからは気をつけるようにしましたが、発病までに数年から10年以上もの潜伏期間があるという話しを聞いて心配になり、目黒区にある「寄生虫館」へ出向き検査について教えてもらしました。 検査は北海道でしかできません。寄生虫病権威の医師を紹介してもらい、採血して北海道へ送り検査の結果、幸にも白でした。 以前は汚染地域は限られていましたが、今では全道が汚染されているということですから気を付けて下さい。生水、野のものを生で食べない、食事の前に手を洗うのが最善の予防です。 |