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北アルプス
抜戸岳(2813m)笠ケ岳(2898m)

岐阜県 2005.10.06 単独 マイカー 抜戸岳 三等三角点
笠ケ岳 二等三角点
コース 長野自宅(3.15)=====新穂高温泉(5.30)−−−笠新道入口(6.35)−−−標高1920m(7.50)−−−杓子平(9.25-9.35)−−−抜戸岳(10.55-11.10)−−−分岐(11.20)−−−笠ケ岳山荘(12.10)−−−笠ケ岳(12.25)−−−笠ケ岳山荘(12.30-12.35)−−−分岐(13.25-13.30)−−−杓子平(14.15)−−−標高1920m(15.20)−−−笠新道入口(16.10-16.15)−−−新穂高温泉(17.00)=====帰宅(19.50)
抜戸岳山頂、背後は槍ケ岳
笠ケ岳・・・日本100名山、山岳標高34位
抜戸岳・・・山岳標高59位

16年前、東京から日帰りで笠ケ岳に登ったことがある。そのときは新穂高温泉から登り4時間5分、下り3時間30分で歩いたが、今回は抜戸岳へ寄り道したとはいえ、登り約6時間、下り4時間35分。
前回の夏とちがって今回は秋、笠ケ岳山荘一泊の予定だったため、防寒衣等も含めて前回より荷物はかなり重くなっていたが、それにしても脚力の衰えを実感せざるを得ない。
(1989年7月、52歳のときの記録はこちら)

途中で気が変わって日帰りで下山、自分なりにかなりがんばって歩いたため疲労も強く、最後は足が棒のようだった。


一泊の予定だったからこの山行は最初から楽々気分、新穂高温泉駐車場をのんびりと出発。笠ケ岳山荘に泊り2日目は弓折岳・鏡平経由の下山を考えていた。
笠新道入口から二人組の男性のあとをしばらくついて行く。うっそうとしたブナ、ミズナラの原生林の中、男性のペースに合わせてゆっくりと足を運ぶ。しかしどうしてもペースが遅すぎる。30分ほどついたあと追い越させてもらう。登山道の大半は岩のごろごろした道で歩きにくい。
標高1700メートル表示地点あたりから背後に穂高連峰が樹間にのぞめるようになる。登山口と杓子平の中間、標高1920メートルと表示されたあたりからは樹林帯を抜け出て展望が開けてくる。槍、穂高、焼、乗鞍岳などが、青空を背にして群青色のシルエットで連なっている。ナナカマド、ダケカンバなどの紅葉・黄葉、そして目を惹きつける槍・穂高の姿に目をやりながら高度をかせいで行く。

駐車場から約4時間を要して杓子平に着いた。目の前に笠ケ岳・抜戸岳の秋色に染まった山容が展開する。それにしてもゆっくりした歩きだったがけっこう汗はかいた。
5分の休憩で先を目指す。ここから抜戸岳の稜線まで350メートルの登り、これが標高差以上にきつく感じる。稜線への突き上げは、前回のコースは閉鎖されていて、別の道に付け替えられていた。以前は抜戸岳のかなり南側のコルに突き上げていたものが、今のルートは抜戸岳山頂のすぐ南へ向けて直登する感じで付いていた。

杓子平上部から見た笠ケ岳
急登ではあるが、以前の険しい岩コースより歩きいいように思う。安全を考えてルートの変更をしたのだうろか。
稜線もすぐそこというところで「抜戸岳100メートル」という板切れがある。ここで右手に進む。ハイマツで道がはっきりしないが、稜線沿いに適当に足場を選んで進むと、すぐに抜戸岳山頂だった。野口五郎岳をはじめとする裏銀座の山々、双六、黒部五郎、薬師などの山巓が、赤錆色を配したような乾いた表情で視界に飛び込んできた。そして槍ケ岳や穂高。稜線の先には笠ケ岳。そんな山岳展望を楽しむ間もなく、突如ガスが上がってきて瞬く間に展望を閉ざしてしまった。抜戸岳山頂での展望は5分ももたなかった。

抜戸岳をあとに稜線西側の巻き道に降りて、この巻き道で笠ケ岳へ向かう。すぐに杓子平との稜線分岐となる。槍・穂高方面、裏銀座方面は雲にすっかり閉ざされている。明日もこんな天気だったら展望を楽しみにして泊る値打ちもない。笠ケ岳の山頂を踏んで日帰り下山に決める。
ザックを稜線分岐付近にデポ、カメラだけを提げて笠ケ岳へ向かう。一泊のつもりでのんびりと歩いてきたので、このあとの行程は急ぐ必要がある。日暮れまでに笠新道入口まで降りなくてはならない。
分岐から笠ケ岳寄りに数分下ったコルが以前のルートの分岐で、そこにはコースの閉鎖を告げる看板が出ていた。
抜戸岩を過ぎ、小さなアップダウンを重ねて笠ケ岳への登りとなる。疲労を感じて足の運びはますます重くなっていく。それでも休むことなく山荘のテラスを通りピークへの登りを踏ん張る。階段状の岩の急登はことさらに厳しく感じる。分岐から50分と読んでいたが1時間5分かかってしまった。
疲れを感じていたが、ザックをデポしてきたのでこのまま山荘に泊るわけにはいかない。時間も気になって疲れた足をなだめながら分岐へと戻る。小さなアップダウン、そして分岐までの登りがつらい。

分岐へ戻ったのが1時半近く、道標には新穂高温泉まで4時間となっている。その通りに歩くともう夜の気配漂う時間になってしまう。疲れた足に自信がない。小屋泊まりにすべきだったと反省しながら、昼食に菓子パンを一つ、水で飲みくだすとすぐに下山にかかる。
杓子平からの途中で雷鳥の親子3羽が草をついばんでいた。立ち止まってカメラに収める。白い毛が混じって冬支度が進んでいた。杓子平付近で笠ケ岳へ向かう二組の夫婦らしい4人バーティーに会う。のんびりとした足運びで歩いている。脚力のほどはわからないが、その歩き方だと山荘まで3時間はかかるだろう。もう少し遅れたら暗くなってしまう。大丈夫だろうか、自分のことも忘れて心配になってしまう。
笠ケ岳山頂

杓子平着2時15分。どうやら薄暮近い5時までには笠新道入口の林道まで降りられそうだ。
稜線分岐からは雷鳥の写真を撮ったのと、途中2回水を飲んだだけで、一回も休むことなく下りきった。まだ十分に明るい時刻で、ここで引水を腹いっぱい飲むとようやく少し元気を取り戻した。この疲れは少し脱水気味だったような気がする。

新穂高温泉へ向かう谷間の林道はすでに薄暗く夕暮れを漂わせていた。

新穂高温泉から笠ケ岳山頂までの標高差は1900メートル、それに稜線でのアップダウンも加えれば2000メートルをゆうに超える。楽な登山とは言えない。加えて最初から日帰りの予定だったらそれなりの軽荷と心構え、ペース配分などがあったのに、途中変更という無計画さが災いして、最近にないきつい山歩きになってしまった。
 
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