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物見山(2113m)・鬼怒沼(2020m)・鬼怒沼山(2141m)

栃木県 2006.09.010 単独 マイカー 地図 三平峠南東
    三平峠北東
鬼怒沼山 三等三角点
コース 長野自宅(12.00)---大清水(3.45-4.50)---林道終点広場(5.15)---物見山(7.10-7.20)---鬼怒沼巡視小屋(7.40)---鬼怒沼山(8.00-8.10)---巡視小屋(8.30)---鬼怒沼散策35分---物見山(9.25-.9.30)---休憩(10.10-10.15)---林道終点広場(11.00)---大清水(11.25)
鬼怒沼山山頂、白根山がのそめる 鬼怒沼湿原は草紅葉に変わりはじめていた
12年前の6月中旬、女夫淵から妻と鬼怒沼湿原を訪れた。湿原散策が目的だったが欲が出て、妻を巡視小屋へ残し一人で鬼怒沼山まで足を延ばし、鬼怒沼散策の付け足しのようにして登った。このHPにその記録を載せてあるが、これを目にした方から鬼怒沼山の記述は実際と違うのではないかという指摘を受けた。再確認のために改めて登ってきた。


今回は尾瀬三平峠への登山口『大清水』から登ることにする。
真夜中に自宅を出て大清水着は3時45分、足元が見えるまで車内で待つ。昭和62年版の昭文社『山と高原地図-尾瀬-』によれば鬼怒沼までは難路4時間半の行程、それなりの心構えで出発する。駐車場前の休憩舎の角に「物見山経由鬼怒沼へ6.0キロ、尾瀬沼へ7.5キロ」の道標がある。片品川にかかる橋を渡って薄暗い林道を25分、コンクリートの橋を渡ると林道終点で広場になっている。広場を突っ切ると鬼怒沼への最後の道標がある。この先道標はないものの道は一本道、刈払いも行われたばかりで迷う心配はない。

広場から流れの左岸につけられた林道もどきの広い道を、しばらくたどるとコースは右岸へと移る。水量は少なく飛び石で渡渉。雨の直後だと滑りそうな丸木橋を渡るか水の中へ入ることになりそうだ。
渡渉すると物見山への標高差900メートル、本格的な登りがはじまる。キツツキのドラミングを耳にしながら、ジグザク道を急かず焦らず足を運んで行く。一汗かくと尾根上のコースに変わり、やがて気がつくと稜線の雰囲気になっていた。感じないほどの小さな起伏が何回もあるが、帰りはこれがけっこう足に負担になるかもしれない。

展望のない痩せ尾根で、足場が不安な露岩や、段差の大きいところを繰り返す。岩角や木の根、潅木の幹を利用して体を持ち上げる運動は思いのほか体力を消耗させる。一般のハイキングコースなら安全のために鎖やロープがつけられるようなカ所も多い。ガイド地図に「難路」と表示されているのがうなずける。刈払いはついこの2、3日の間に行われたらしく、刈られた草、小潅木、アスナロの葉っぱなどが生気を残したまま登山道に散らかっていた。難路ではあるが道に張り出す枝や草木の邪魔がないのがありがたい。

やがて胸を突くような険しい急登に変わった。つかまれるものには何にでもつかまって足を持ち上げて行く。ときどき樹の梢越しに尾瀬の燧ケ岳や至仏山が見える。息つく間もなく連続する急登に、額からは汗の滴が止まない。息づかいも荒くなってくるが足を休めることなくこの急登を30分ほどがんばると物見山だった。林道終点から休憩なしで2時間弱、きつい登りだった。急峻な登りとはうらはらに、鈍頂とも言えるピークで、シラビソ樹林に囲まれて展望もゼロ、腰を下ろして10分の休憩をとった。

毘沙門山という別名を持つ物見山をあとにして鬼怒沼山へ向かう。
なだらかな道を高度100メートルほど下げてコルへ。わずかに登りかえすと分岐、右手に鬼怒沼湿原が広がり木道が始まっている。そのまま刈払いの道を直進すれば鬼怒沼山から黒岩山方面へと通じている。
この山行は前回の鬼怒沼山登頂を再確認する目的もあるので、まず湿原の木道へ入り、すぐに左へV字に折り返して鬼怒沼巡視小屋へ行く。このあたりはしっかりと記憶に残っていた。昨夜小屋に泊まったハイカーに挨拶をして小屋裏の登山道を東へ向かう。12年前より道はよくなっている気がする。歩く人が多くなったのだろう。しばらく笹の刈り払い道を進むと、物見山から下ったところの分岐点で鬼怒沼へは入らずに鬼怒沼山方面へ直進してきた道と合流、ここに鬼怒沼山の道標がある。もちろん前回はなかったものだ。
あいにく明確なデータは残っていないが、前回は小屋から鬼怒沼山往復に1時間前後かかったように思われる。道の雰囲気も昔の記憶と同じ、ちがうのはあのときは6月中旬でまだ残雪がけっこうあったことだ。登山道右手側に鬼怒沼山と間違えて登りそうなピークはないか注意しながら進むが、それらしいピークは見えない。
高みを越えてちょっとした下りに入る。これも記憶通り、すぐ先にテープやビニール紐がたくさん残された場所がある。右手の高みに向けて踏跡とテープがつづいいる。このあたりになると記憶が不明確になる。前回は残雪もあってこのありたから強引に薮の薄いところを選んで登ったような気がする。

テープの場所から迷いようのない踏跡をたどると、鬼怒沼山の道標を一つ確認、数分で山頂に到達できた。樹木に囲まれた小さな空間に私製の山名プレートが数個、木の幹などにくくりつけられている。ほとんど展望はなく、わずかに開けた南東方面にに白根山が望めるだけだった。そして三等三角点標石。
前回、果たしてこの山頂に立ったのか、立ったとしても山名プレートの類は皆無、当時三角点への関心も薄くその点の記憶も残っていない。残雪の中、この付近の一画に立ったのは間違いないと思われる、ただそんな確信を得るにとどまった。

山頂をすぐに引き返して鬼怒沼湿原へ。空の藍を吸い込んだ池塘の上には赤トンボが飛び、草紅葉に変わりつつある草原はイワシヨウブの花がそこここに見える。初秋の湿原を足を止めてはのんびりと30分近く散策してから大清水へと下った。

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